Web東奥・社説20030204
  
2003年2月4日(火) 東奥日報 社説



■ 人命最優先の宇宙開発を

 宇宙飛行士七人を乗せた米スペースシャトル「コロンビア」が着陸直前にテキサス州上空で空中分解し、七人全員が死亡した事故の本格的な原因究明が始まった。

 この事故の影響で、日本人宇宙飛行士の野口聡一さんが三月に搭乗する予定のアトランティス打ち上げは無期延期となった。建設中の国際宇宙ステーション計画も停滞は必至である。

 宇宙開発は現在輸送手段の多くをシャトルに頼っている。今回の事故は、宇宙往還機が常に危険と隣り合わせであることをあらためて世界中の人々に印象付けた。

 だが、安全第一を軽く見ていなかったか疑念が残る。宇宙開発を急ぐあまり、乗組員の安全を最優先する基本中の基本に対するチェックが甘かったのではないか。そんな危ぐを抱く。

 事故原因の解明には長期間かかるようだが、何年かかろうと徹底した調査、分析を進めてほしい。宇宙への挑戦は人類の夢だ。だが何より人命がすべてに優先する。安全に宇宙を往復できるシャトルが完成するまで、宇宙開発を全面凍結するよう求めたい。

 米航空宇宙局(NASA)によると、シャトルは事故直前、機体左側の温度が五分間に右側の四倍の速さで上昇し、その後機体が左にずれる動きを示し、温度センサーの機能が突然停止したという。

 断熱タイルに損傷があった可能性が指摘されている左翼が大気圏再突入時の高熱に耐えきれず炎上し、空中分解したのか。この左翼についてのデータ分析が、今後の原因解明の焦点になるようだ。

 今後、破片や機体の構造などの分析には長期間かかる見通しだが徹底した調査、分析を求めたい。

 使い捨てのロケットより繰り返し利用できるシャトル計画の一号機として登場したのがコロンビアである。だが、初飛行から二十二年にもなり老朽化による危険性の指摘も多かった。現に多くのトラブルが発生し、打ち上げが何度も延期されたこともあった。

 断熱タイルなどの弱点も以前から示されていたにもかかわらず、そのまま使われてきたのも事実である。次期シャトル構想はあったが、予算や人員の大幅削減のあおりで実現が遠のき、シャトルの世代交代が遅れたための事故という面は否定できない。

 今回の事故で、米国や日本、欧州各国、ロシアなど十六カ国が参加して建設中の国際宇宙ステーション計画の停滞は必至である。

 世界の宇宙開発が、シャトルの輸送力に大きく依存しているからだ。野口さんが三月に搭乗する予定だったアトランティスの打ち上げも無期延期となる見込みだ。

 この宇宙ステーション計画では日本が実験棟「きぼう」を受け持つことになっているが、これもかなり先のことになるだろう。

 確かに、宇宙開発には大きなリスクがつきものだ。これらの計画の遅れを懸念する声も出ている。だが、こんな危険極まりないシャトルに搭乗させられる乗組員はたまったものではない。

 こんな欠陥機では、まさに命懸けだ。しかも、死亡事故は今回だけではない。一九八六年一月に「チャレンジャー」が打ち上げられその直後に大爆発し、このときも七人全員が亡くなっている。

 なぜこんな悲劇が繰り返されるのか。関係者は事故原因の究明とともに、巨大技術の盲点とされる組織や人間、技術のかかわり方が円滑に機能していたのかなど総合的に点検する必要がある。

 確かに、人類の夢実現を託された宇宙開発の必要性は認める。だが安全が危ぶまれ命を懸けてまで続けることだろうか。

 完全無欠なシステムを備えた宇宙往還機が完成するまで計画は凍結すべきだ。七人の犠牲者はそのことを訴えているのではないか。


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