Web東奥・社説20021202
  
2002年12月2日(月) 東奥日報 社説



■ 利用し育てたい青い森鉄道

 東北新幹線八戸駅が開業した。首都圏や東北の主な都市と本県を直接結び、人・もの・情報を運ぶ大動脈が始動した。経済発展、文化交流拡大など、開業に伴うプラス効果を最大限に引き出したい。

 開業の陰には、首都圏に客が吸われるストロー効果などのデメリットもあるが、マイナスの影響は最小限に食い止めたい。八戸駅開業と同時に営業を始めた三セクの「青い森鉄道」(八戸市)も、そうした取り組みが求められる。

 JRから分離された本県側の並行在来線の経営を引き継いだ青い森鉄道は、八戸−目時間二五・九キロを走る。現状では、営業距離が短いため利用客が限られ、運賃はJR時代に比べて平均一・四九倍に上がった。経営赤字は必至だ。

 だが、県民の多額の税金が投入された「県民のための鉄道」であり、地域住民の足である。

 今回は暫定開業だ。新幹線が新青森駅まで延びる十年後は、青森までの沿線住民にとって貴重な交通手段になる。苦境をしのぎ、マイレールとして守り育てていくため、知恵を絞りたい。

 線路は、県がJRから取得して保守管理を行い、県や沿線市町村が出資した三セクが旅客輸送を担当する、という上下分離方式で運行される。

 三セクは、JR時代は一日二十七本だった列車を四十本に増発した。沿線の無人駅三カ所には自動券売機の利用案内をする駅サポーターを配置するなど、サービス向上に努めている。

 県は、三セクが払わなければならない年間二億円の線路使用料を減免して経営負担を軽くする、といったてこ入れをしている。

 ただ、開業区間は、一日一キロ当たりの平均輸送人員を示す輸送密度が約千七百人。JR東北線の中では最も少ない。沿線は過疎化が進み、新幹線利用客を招き入れるような観光資源も乏しい。

 JRからの分離で特急が止まらなくなり、運賃値上げで負担も増えた。二重の不便を強いられ、沿線住民の鉄道離れが進む可能性が高い。課題は山ほどある。

 長野新幹線開業と同時に一九九七年に発足した並行在来線の「しなの鉄道」は、輸送密度が青い森鉄道の四倍以上の八千人を超えているが、二〇〇一年度は累積赤字約二十五億円。債務超過になった。

 こうした先行事例や現状の厳しさを直視する必要がある。その上で急ぎたいのは、利用客減に歯止めをかける対策を練ることだ。

 岩手県側の並行在来線を運行している「IGRいわて銀河鉄道」沿線の一戸町は、三セクを利用するお年寄りが乗車券を買うと、地元の商店街で使える百円券を発行する制度を設けた。

 しなの鉄道は、一万円程度の年会費でサポーターを募り、枕木に氏名を張る鉄道トラスト運動を展開、経営改善に役立てている。

 残念ながら、肝心の地元は腰が重い。青い森鉄道の沿線五市町村は利用促進協議会を組織したが、発足が十一月八日と出遅れた。利用促進策を打ち出せないでいる。

 新幹線八戸以北建設には、利子を除いて千五百億円という巨額の地元負担が必要という。県は財政難。公的支援の拡大は望み薄だ。だが、無策のままなら、経営悪化−運賃値上げ−利用者離れ加速−という悪循環に陥ってしまう。

 例えば、沿線の首長や議員、役場職員が出張の際に青い森鉄道を使うなど、マイレール意識を浸透させるお手本を示してはどうか。新幹線新青森開業時までに収支均衡という経営目標に向かって、あらゆる手だてを講じるべきだ。

 青い森鉄道は、車の運転ができなくなったお年寄りや通学生には不可欠だ。エネルギー効率が車より高く、環境にあまり負荷を与えない鉄道を見直す動きが出ていることも銘記しておきたい。


HOME