| 2002年5月31日(金) |
情報公開法は、行政機関が持っている情報の開示請求を国民だれもができるようにすることで、行政の秘密主義的体質を変え、透明度を高めるのが趣旨。ところが、防衛庁は、情報開示を求めた人の身元や思想・信条・病歴まで追加調査し、リストを作っていた。 行政機関による個人情報の目的外利用を原則禁止している「行政機関個人情報保護法」に違反している疑いが濃い。国民に奉仕すべき国家公務員が、情報公開制度を乱用して国民のプライバシーを侵害した。請求者を監視・敵視しているかのようだ。 追加調査は、情報公開担当の三等海佐が上司の指示で行い、海上自衛隊中央調査隊にも依頼した、と海佐自身が証言している。事実なら、個人の独断と強調してきた防衛庁の当初の説明とは違い、組織的行為だ。防衛庁に徹底調査、全容解明、厳重処分を求める。 行政による個人情報流用の懸念が現実化した。他の省庁でも似たようなことが行われているのではないか、との不安がある。県内の自治体も、自己点検してほしい。 膨大な個人情報を持ち、管理している行政、公務員は、リスト問題を自分の問題として受け止め、反面教師にすべきだ。国民に開かれた、風通しのいい行政を目指す情報公開制度の趣旨を再確認してもらいたい。 情報公開法に基づく開示請求の場合、申請書類に書く必要事項は個人か法人かの名前と住所、開示を求める文書名だけだ。だが、リストには、生年月日や職業だけでなく、市民グループ、マスコミなどと分類した上、反戦自衛官、市民オンブズマンなどと書かれ、病歴まで記入された請求者もいた。 身元、思想に関する情報は、一部を三等海佐が追加調査し、大部分は海自中央調査隊などが収集していた。リストは、開示請求した百四十一人全員分が作られ、幹部に回覧されたほか、別の幹部にメールで転送されていたことが新たに分かった。。これが個人的行為だろうか。重大な問題だ。 第一に、情報公開法の精神を踏みにじる背信的行為である、と言わざるを得ない。開示請求すれば知らない間に思想調査される、と請求をためらわせる圧力になりうる。情報開示の可否を身元、思想で判断しているのではないか、との疑念も生まれている。国民の知る権利を制限する危険がある。 第二は、個人情報を大量に保管している行政、公務員への不信感増大につながることだ。情報公開法は、薬害エイズ事件など、中央官庁の情報隠ぺいが続出したことも受けて制定された。行政の事実隠し、今回のような個人情報の目的外利用が続くなら、ほかにも不祥事が後を絶たない「官」への信頼は一層低下するだろう。 第三に指摘したいのは、「行政機関個人情報保護法」の欠陥が明白になったことだ。同法および国会で審議中の同法改正案には、公務員が個人情報を流用した際の罰則がない。リスト作りは、同法違反でも罰せられないのだ。ところが、これも審議中の民間を対象にした「個人情報保護法案」には罰則を設けている。 行政は違法行為をしないから罰則不要、とは政府の主張だが、今回の事態で主張の根拠は崩れた。行政にこそ罰則規定を設け、個人情報をより慎重に、かつ厳密に扱うよう求める方向で、一連の個人情報保護法制を練り直すべきだ。 国民全員に番号をつけ、コンピューターで個人情報を一元管理する住民基本台帳ネットワークシステムが、今年八月スタートする。プライバシー侵害の恐れがある、との批判を呼んだこのシステムが稼働すれば、個人情報がますます行政に集約される。リスト問題を、防衛庁のみの不祥事として片づけることはできない。 |