| 2002年3月16日(土) |
六ケ所村の核燃料サイクル施設の事業認可をめぐる初の司法判断となった青森地裁の判決は、原告の訴えを立ち退け、ウラン濃縮工場の許可は適法と認めた。原発と異なる同施設についても国の安全審査の在り方について一応のお墨付きを与えた形だ。住民側の全面敗訴といっていい。 判決は原告の適格について、六ケ所村と横浜町に住む十四人については「事故が発生した場合に直接的かつ重大な被害を受ける周辺住民」として訴えの資格を認めたが、残る百五十七人については資格がないとした。その上で、国に事業許可の無効確認と取り消しを求めた原告の請求を棄却した。 判決で焦点となった同工場の事業許可申請に対する国の安全審査について、規制対象を基本設計に限られると判断。安全性については「国の許可処分は関係法規に基づいて適性に行われ、現在の科学水準に照らしても不合理な点はない」と法律論による国の主張を全面的に認めている。 原告が主張した立地条件などによるウラン濃縮施設の耐震性については「工場の耐震設計は十分」と指摘。三沢基地の存在に伴う航空機墜落事故の可能性についても「墜落の可能性は百万分の一」とした国の判断に過誤はないとした。人為ミスなどにより臨界事故が起こり得る、とした点についても「作業者のずさんな管理に起因する事故は、現行制度では安全審査の過誤とは評価できない」として原告側のすべての主張を退けた。 核燃料サイクル施設をめぐる行政訴訟は、次々に立地が進む中、立地条件や施設自体の安全性などを中心に争われてきたが、この十三年の間に原子力行政を取り巻く環境も変化、今回の判決では死者二人を出した茨城県東海村のJCOウラン加工工場の臨界事故をどうとらえるかも注目された。しかし、今回の判決は国の安全審査の中身についての判断には踏み込まず、法理論で国の安全審査を追認する形となった。 司法は既に伊方原発訴訟の最高裁判決や、もんじゅ訴訟の福井地裁判決で、原子炉設置許可処分の安全審査を適法と認めており、今回の判決もこの流れに沿ったものといえる。 原告側はウラン濃縮工場の安全審査が原子炉を持つ原発に比べ、耐震基準が低いことへの疑問を示すなど、不当性を訴えたが「原発と同等の高度な耐震設計は必要ない」と退けられた。住民敗訴が続く各地の原発訴訟と同様、今回の核燃料サイクル施設でも国の主張が全面的に受け入れられた。 提訴から十三年にわたり、核燃料施設の危険性を訴えてきた住民らにとって、判決は厳しいものとなったが、これまでの活動が、企業秘密や国の情報制限のもとに守られてきた情報非公開の体質に穴を開け、情報の公開や事業の一方的な進め方に対し歯止めがかかるなど、一定の成果を挙げたことは認めていい。 今後も、継続している低レベル放射性廃棄物埋設処理施設、高レベル放射性廃棄物貯蔵管理施設、使用済み核燃料再処理工場の三施設についての行政訴訟の審理が続くが、今回の判決が今後の判断に大きな影響を与えることは確実だろう。原告側は控訴する方針を明らかにしている。 今回の判決で、国の安全審査の妥当性が司法の法理論によって一定の評価を与えられたが、住民の不安に対しての確かな答えが出されたわけではない。先の東海村臨界事故で明らかになったように、原子力事故は重大な被害をもたらす恐れもある。事業運営に当たり国や事業者には、周辺住民はもちろん県民への説明責任の履行と、万全の上に万全な安全対策が求められる。今回の判決はその第一歩であることを肝に銘じるべきだ。 |