| 2002年3月13日(水) |
県は二〇〇三年の冬季アジア大会の寄付金として、電気事業連合会(電事連)、東京電力、東北電力、日本原燃から合わせて五億五千万円を受けるという。 日本原燃はいま電力業界の支援を受け、六ケ所村で再処理工場を建設中だ。その中の使用済み核燃料貯蔵プールは既に操業を開始しているが、漏水が続き、まだ原因がはっきりしていない。 だが、「安全性に問題はない」として、日本原燃は計画通り使用済み核燃料を搬入し続けている。二〇〇二年度も予定通り四百トンの使用済み核燃料を搬入する方針を固めたという。 県はプールを視察するなどした後で当面は「計画通りの搬入に問題はない」と、日本原燃の搬入継続方針を容認した。 確かに、安全性に問題はないのかもしれないが、そのことを県民に納得してもらおうという事業者の姿勢がいまひとつ見えない。 問題が発生したら、原因の究明を最優先するのが事業者の取るべき道であろう。その上で改善策を示し、県民の納得を得るべきだ。 そうした誠実な姿勢があれば、県民も県や国や事業者の安全性についての判断を信じる気になるのである。 実際、チェルノブイリ原発事故で反原子力運動が高まった当時、事業者は試行錯誤を重ねながらも、地道に地元民の理解を得る努力をしていたのである。 あの謙虚な姿勢はどこに行ったのか。漏水の原因解明より使用済み核燃料の搬入を優先する神経はどこから来るのか。漏水する区画は隔離してあるから問題ない、という性質のものではないはずだ。 事業者の言い分をうのみにするかのように、使用済み核燃料搬入を容認する県の姿勢にも納得できない。こんな甘い態度では、今後も県民の立場に立って県民の不安を代弁できるかどうか疑問だ。 まして、そこに多額の寄付金のやりとりがあるとなれば、疑問を通り越して、何か不透明感さえ漂ってくるのである。 県はMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料加工工場の立地協力の打診も受けている。多額の寄付が立地協力に関する政策判断に影響しないのかどうか。 日本原燃の佐々木正社長は「(県から寄付金の)要望はなかった。本県企業としてアジア大会に協力すべきだと考えた」と述べ、木村知事も「寄付と、原子力行政に関する私の判断とは、いささかのかかわりもない」と話している。 しかし、額面通りに受け取る人は少ないだろう。日本列島は不況のどん底にあり、企業倒産が相次いでいる。こうした中、単なる善意で億単位の寄付をする企業がいるとは考えにくい。 むつ市で使用済み核燃料の中間貯蔵施設の立地可能性調査を進めている東京電力が、同市の関根浜漁港でノリの養殖事業を計画しており、漁業振興に寄与するだけでなく、取水ポンプを借用する見返りに年間五百万円を関根浜漁協に支払うという。 ここでも東京電力は「中間貯蔵施設問題とは直接、関係はない」と説明している。だが、関根浜漁協は立地可能性調査への協力を拒否しているだけに、懐柔策と受け止める向きもある。 原子力施設の立地問題は、最終的に県民や市民が選択することになる。それだけに、自治体はより客観的な判断材料を提供し続ける努力をしなければならない。 「李下(りか)に冠を正さず」「瓜田(かでん)に履(くつ)を納(い)れず」という故事成句がある。紛らわしい行いは誤解を受けるので慎まなければいけないという戒めである。 県は既に「冠を正し、履を納れた」格好だ。今後の行動で疑いを晴らさなければならない。 |