| 2001年12月22日(土) |
国民医療の再生を担うべき、二〇〇二年度からの医療制度改革の大筋が固まった。小泉首相は患者、保険者、医療機関の三者が公平に痛みを分担する「三方一両損が実現した」と自賛したが、根本部分はまたも先送りである。論議の中で“聖域”とされてきた診療報酬本体の引き下げが打ち出されたことは評価できるが、柱となるのは国民負担のアップだ。破たんの危機にある医療保険財政の財源処理に追われ、抜本的改革−という大命題には踏み込めぬまま、結局は予算編成に合わせた財政面の帳じり合わせに終わりそうだ。 今回の改革論議がいつもと違ったのは、首相の積極的な関与があったことである。改革大綱にサラリーマンの三割負担を盛り込み、診療報酬体制本体が初のマイナス改定になるのも、背景に首相サイドの強い指示があった。官邸の指導力は評価されていい。 とはいっても、改革の手法は旧態依然そのものである。保険財政の再建を理由に、患者負担を引き上げ、保険料上げなど「国民負担を増やし、給付を引き下げる」いつもの手法。痛みに見合う医療の将来像が一向に見えてこない。 サラリーマンら被用者保険の加入者本人の自己負担を現行の二割から三割に引き上げる(時期は未定)方針を決定。二〇〇二年四月からはボーナスを含めた年収で保険料を算定する「総報酬制」も導入する。負担は増える一方だ。 高齢者も一割負担ですむ老人保険制度の適用開始年齢を段階的に引き上げ、窓口負担の定率制の徹底と支払い上限額の徹底など「応分の負担」が求められる。患者の痛みが和らぐことはない。 一方、医療を提供する側の医療機関や調剤薬局の痛みはどうか。日本医師会などの激しい反対で難航した診療報酬は全体で2.7%引き下げられる。その内訳は薬価や医療材料など医薬品の引き下げ分が1.4%、医師の技術料である診療報酬本体の引き下げ分が1.3%だ。 診療報酬本体のマイナス改定は初めてのことだ。デフレの状況を考えると当然のことだろう。長引く不況の中、薬価引き下げで生じた薬価差額を「潜在的な医療技術料」の名目で、診療報酬の引き上げの財源に回してきた厚生労働省の姿勢も問われるべきだ。日本医師会も「出来高払い」など国民に理解を得られないようなルールは廃し、診療報酬の個別交渉の中で、技術力に見合う技術料を要求するのが筋だろう。 国は二〇〇二年度予算案編成で医療費の国庫負担を二千八百億円圧縮する方針で臨んだ。老人医療費の制度改革などで一千億円、残りの一千八百億円を診療報酬引き下げで削減する案を打ち出した。それが診療報酬2.7%下げの根拠、帳じり合わせの数字である。 しかし、今回の改革方針で最も問題なのは、前回の二〇〇〇年度改革で積み残された最重要課題の新しい高齢者医療制度創設がまた先送りされたことだ。 現在の老人保健制度は、本人の一割負担を除いた約九割の保険給付は健保組合や、国民健康保険などからの拠出金や公的負担金で賄われている。保険財政は火の車で現役世代が高齢者世代を支える仕組みはもはやパンク寸前だ。 高齢者医療に対する抜本的な制度見直しは急務である。それだけに日本医師会や健康保険組合連合会などが独自の高齢者制度創設案を出しているが、厚生労働省は対案すら示さず、政府・与党の論議も現行制度の手直しに終始した。 今回の対応はいわば小手先だけの対症的な応急処置にしかすぎない。医療制度に本格的なメスを入れ、根本から治す抜本的改革がぜひ必要だ。そのための論議がまたも先延ばしになったのはむなしい限りである。 |