Web東奥・社説20011027
  
2001年10月27日(土) 東奥日報 社説



■ 県費負担に納得いく説明を

 県が誘致を働き掛けているITER(国際熱核融合実験炉)の候補地は、茨城県那珂町が小差で六ケ所村をリードしているが、政府はこの中から十一月以降に最終決定する方針である。

 県は、経団連の支援を受けるなど万難を排して六ケ所村への誘致を実現させたい構えだ。

 「ITER建設に伴う経済効果は大きく、本県の活性化に必要不可欠のプロジェクト」というのが県のスタンスである。誘致運動に躍起となるのも無理はない。

 しかし、それはあくまでも県民が納得できる誘致でなければならない。そのためには、県民に情報を開示することが前提となる。

 ITERの誘致で百数十億円に上る高圧送電線の建設費を負担する用意があることを国に伝えていた問題は、県民への説明責任を欠いた行為と言えよう。

 冬季アジア大会をめぐる大混乱を想起させる。またも県行政の密室性が問われる事態と言わざるを得ない。

 事業のメリットだけを一方的に強調してはいないか。誘致に伴う県費負担がどの程度なのか、といったデメリットを含めた情報公開が欠かせない。最終決定まで残された時間は少ないようだ。だが拙速であってはならない。送電線のほかにも大きな県費負担はないのか、もっと詳細な説明が必要だ。

 県民が納得できる十分な説明はむろんのこと、県議会などでの徹底した論議を望みたい。とりわけ百数十億円にも上る負担問題について、県議会は「説明がなかった」「負担額については聞いていない」としており、なぜ具体的に説明しなかったのか理解に苦しむ。

 県議会は「寝耳に水」のようだが、県民にとっても奇妙なことと指摘せざるを得ない。

 そういえば、県がITERの誘致に伴い、低レベル放射性廃棄物の県内処分の受け入れ方針を公式に表明したのも唐突だった。

 国への誘致提案書の提出期限が一週間後に差し迫った七月中旬のことである。これではじっくり議論すべき安全性問題に時間をかけられるはずもない。

 しかし、今回の送電線建設費用の負担問題は県議会も賢人会議も「具体的に説明はなかった」としている。とすれば、やはり見切り発車のそしりは免れないだろう。

 こんな重要な問題をなぜ説明しなかったのか。とりわけ、県民の代表である県議会への事前説明はきちんと行うべきだった。県は財政負担の総額について、まとまり次第県議会などに説明し県民の理解を得たいとしている。

 しかし、送電線のほかにも研究者の居住環境の整備といった負担もある。建設用地も県が財政的支援を行う方針で、全体ではかなりの負担額に膨らみそうである。

 県議会への説明では、送電線のみでなく、トータルの負担がどうなるのか詳しいデータを提出するよう求めたい。

 それでもなお、ITERを誘致する方が本県のためになるというのなら、その根拠を明示してもらいたい。必要なのは徹底した情報開示と透明性の確保である。

 巨額な県費負担が県の財政運営をますますピンチに陥れることが心配だ。東北新幹線の地元負担など過大な負担も控えている。県民の暮らし向上に欠かせない福祉や教育、社会資本整備などにブレーキをかけてはならない。

 他候補地との競争に勝ち残ろうと急ぐあまり、県費負担や安全性をめぐる論議に手抜きがなかったかいま一度点検してもらいたい。

 核融合発電は、実用化が早くて今世紀後半とみられ、財政難の中、膨大な国家予算が必要なこのプロジェクトに自民党内からも慎重論が出ている。性急な結論を出すよりも、原点に立ち戻った論議を尽くすよう望みたい。


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