Web東奥・社説20011004
  
2001年10月4日(木) 東奥日報 社説



■ 憲法解釈変えずにテロ法を

 自衛隊が米中枢同時テロに対する米軍の軍事行動を支援することができるようにするための新「テロ対策特別措置法案」(仮称)が、五日にも国会に提出される。

 このテロ新法については、政府が一日、与党三党にその大綱案を示して大筋で了承されている。その目的は、今回のテロ事件を国際社会の平和と安全に対する脅威である、とした九月十一日の国連決議を踏まえて、日本もテロの脅威を取り除くために諸外国の活動に協力していく、というものだ。

 こうした前提のうえで、自衛隊の支援活動として米軍に対する物資の輸送・補給、医療活動や難民への支援のほか、米軍などの関係者の捜索、救助活動などをも盛っている。これら支援を行う地域としては、戦闘が行われないだろうと思われるパキスタン国内での活動を想定し、他国の領域も含む、としている。

 また、治安状態が悪い地域での活動をも考えて、自衛隊員自身を守るためという従来の基準に加えて、難民や民間ボランティアを守る場合などにも武器が使用できるよう条件を緩和している。それに法案は、今回のテロ事件の脅威を取り除く目的を達成するということで、二年間の時限立法にすることにしている。

 この内容をみると、政府与党は憲法の枠内で自衛隊を最大限活用しようと腐心していることがうかがえる。百三十億ドルという多額のカネを出したにもかかわらず、米国などから「日本は汗を流していない」と手厳しく批判されたのは十年前の湾岸戦争の時だった。それ以来、政府は自衛隊の活動範囲を広げるための取り組みを進めてきた。

 一九九二(平成四)年、PKO協力法を成立させて、自衛隊の海外派遣に道を開いた。ただ、これは紛争が終わった後の停戦監視や難民支援といった活動のための派遣。武力行使とは初めから切り離した活動である。

 九九(平成十一)年には、周辺事態法を成立させた。自衛隊が米軍の活動を支援できるようにした法律だ。これも制限が付いている。あくまでも日本の安全が直接脅かされるような場合であって、活動の範囲も日本周辺の公海とその上空に限定されている。

 これに対してテロ新法は、日本の周辺から離れた他国の領域にまで自衛隊が行き、戦闘中の米軍の活動を後方支援できるようにしようとしている。内容的にも地理的にも、これまでの活動範囲を大きく超えるものだ。

 問題は、ここまで活動範囲を広げることが憲法とのかかわりでどうなのか、ということだろう。自衛隊の行動は、集団的自衛権の行使と受け取れなくもない。しかし、憲法では集団的自衛権の行使を許していない、というのがこれまでの解釈だ。政府は、今回は目的をテロ撲滅に限定した特別立法であって、憲法解釈を変える必要はない、としている。そして、パキスタンなどへの自衛隊派遣のよりどころを国連決議に求めている。

 私たちとしては、日本も今回のテロ犠牲者の一人である以上、テロ撲滅への国際的な動きに協力する必要があると思う。軍事報復は避け、テロリストを国際法廷で裁くべきだとする声があるが、それが可能なら苦労はしない。米国が軍事行動を取った場合、自衛隊が後方支援するのはやむを得ない。 自由党は、米軍の武力行使と一体化しないような後方支援はあり得ないとし、自衛隊を派遣するなら正面から憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を認めるべきだ、と主張している。ある意味では正論だろう。しかし、そうなれば「平和憲法」が次第に崩れていく。憲法の今の解釈の枠内で今回は最大限の責任を果たすべきだ。国会での十分な議論を望みたい。


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