Web東奥・社説20010727
  
2001年7月27日(金) 東奥日報 社説



■ 「核のごみ」処理に募る不安

 「国際熱核融合実験炉」(ITER)の誘致運動が正念場だ。

 県は小川原地域への誘致を目指し八月末の候補地絞り込みに向け建設予定地の無償提供とITERから出される高ベータ・ガンマ廃棄物を含む低レベル放射性廃棄物の地元処分方針を打ち出した。

 とりわけ新たな「核のごみ」の受け入れが波紋と不安を広げている。低レベル放射性廃棄物のなかでも比較的、放射能の高い高ベータ・ガンマ廃棄物の処分をどうするか、は賛否の大きく分かれる問題だ。県民の理解と合意が十分深まっているようには思えない。

 廃棄物処理の安全性について県の情報開示も必ずしも十分とは言い難い。埋設期間が数百年の長期にわたる「負の遺産」となるだけに多くの県民が納得できるよう、もっと分かりやすく説明する責任がある。安全性論議をなおざりにしたまま、なし崩し的に誘致を進めることがあってはならない。

 誘致の成否を握る条件は「地元の理解と同意」だ。ITERの中身と位置づけ、安全性に県民の理解と納得がどこまで深まるか、が前提である。いくら活性化につながるといっても事業メリットだけを一方的に強調する姿勢では本当の理解と協力は得られない。住民が納得し合意できるようデメリットを含めた情報を積極開示し理解の向上に尽くすよう望みたい。

 ITER誘致に名乗りをあげているのは六ケ所村、北海道苫小牧市、茨城県那珂町。誘致競争の切り札に県が打ち出した方針がITERから出る放射性廃棄物の県内処分。だが今回の方針は「寝耳に水」の印象がぬぐいきれない。

 説明手順にも性急さが目立つ。県が低レベル放射性廃棄物の県内処分受け入れ方針を公式に伝えたのは十九日の原子力政策賢人会議と県議会二大会派の議員総会が初めて。国への誘致提案書の提出期限が一週間後に差し迫るなかでの意見聴取である。これではじっくり議論すべき安全性問題に十分時間をかけられるはずもない。県民合意の体裁を取り繕おうとするための事後承諾的セレモニーと批判されても仕方ない。見切り発車のそしりはやはり免れなかろう。

 県民の最も大きな懸念は「核のごみ」が六ケ所村へますますたまり続けるのではないか、という点だ。夢のクリーンエネルギーとされるITERも核のごみ一極集中へ抱く不安の例外ではない。

 核融合反応自体からは高レベル放射性廃棄物が出ない。だが強力な中性子によって放射化された炉壁などが放射性廃棄物となる。核融合炉の運転・廃止で発生する低レベル放射性廃棄物は原発の数倍に上る。高ベータ・ガンマ廃棄物も比較的多い−との問題点が専門家の間からも指摘されていた。

 ITER実験炉の場合、運転開始から約二十年で廃炉となる。運転中で年間約四千トン、廃炉時で約三万九千トンの低レベル廃棄物が発生する。うち四分の一が高ベータ・ガンマ廃棄物だ。放射能レベルが「比較的」濃い高ベータ・ガンマ廃棄物は数百年にわたり五十−百メートルの地下に埋設、管理しなければならない。保管・処分をどうするか、が問題だ。ITER廃棄物処分について国は明確な指針をまだ定めていない。この段階で県の地元処分の方針はいかにも唐突である。拙速の印象が免れない。

 誘致合戦は大詰めだ。だが他候補地との競争に勝ち残ろうと急ぐあまり安全性論議や県民への説明責任をないがしろにしたまま突っ走るのは得策とは言えない。

 ITERは国際的プロジェクトだ。いったん決まれば後戻りは困難なだけに地元の理解と協力が大前提だ。必要なのは徹底した情報開示と説明である。高ベータ・ガンマ廃棄物についてきちんとした説明がなければ不安は募るばかりである。論議を尽くすべきだ。


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