| 2001年5月4日(金) |
小児救急医療に対するニーズが高まっている。夜間や休日、わが子が急に熱を出したり、異物をのみ込んだりしたとき一番安心なのは専門の小児科医が待機する救急病院に運ぶことだ。だが、少子化の影響で頼みの綱の小児科医が確保できず、小児救急医療体制の整備は全国的に立ち遅れている。 国の支援を受け各自治体では小児救急医療の「当直医輪番制」整備を急いでいる。しかし目標の二割程度しか実現していない。多くの子供たちが小児科医のいない救急病院で大人の患者にまじって治療を受けているのが実態だ。 容体が急変しやすい子供の治療には専門的な知識と経験が欠かせない。二十一世紀を担う健やかな子供育成のため熱意あふれる小児科医の養成とともに小児救急医療ネットの充実強化を急ぎたい。 厚生労働省は新しい少子化対策実施計画「新エンゼルプラン」の一環として、一九九九年度から三年計画で小児救急医療支援事業を進めている。全国を三百六十の二次医療圏に分け、医療圏ごとに当直ができる小児科医のいる病院を最低一カ所確保。すべての医療圏で夜間や休日の当直を輪番で受け持つ体制実現を目指す計画だ。 だが体制が整ったのは十八都道府県の五十一地域だけだ。 本県でも当直医輪番制はほとんど手つかずだ。都市部の大病院では休日、夜間でも常勤医師が待機し二十四時間体制が取れてはいるものの地域によって小児救急医療への対応はさまざま。県は小児救急医療の充実をめざし本年度から各圏域ごとに対策協議会を設置して新たな体制づくりへ向け検討を進めようとしている段階だ。 当直医輪番制が進まない背景には小児科医不足がある。全国の小児科医は約一万四千人。ここ数年横ばい傾向だ。それなのに小児科医はなぜ足りないのか。 少子化など将来不安のため小児科医を希望する医学生があまり増えていないためだ。どこの医学部でも小児科医を希望する医学生の数はピーク時の六−七割に落ち込んでいる。その結果、小児科医の高齢化が進み救急医療現場で働ける医師不足を招いている。 小児科医不足に伴い総合病院の案内板から小児科の文字が消され小児科医院が閉鎖されるなど地域医療に大きな影を落とし始めている。次代を担う若い小児科医の養成は待ったなしの課題だ。 担い手不足のもう一つの原因は小児科医の仕事が多忙で責任が重い割に診療報酬が低いためだ。 急患がほとんどで小児科医の診療は苦労が多い。泣き叫んだり、むずかったりする子供から自覚症状を聞き出すだけでも大仕事だ。診療には大人の患者の何倍もの時間とエネルギーがいる。その上、抵抗力や免疫力の弱い子供への手術や投薬は特に慎重を要する。 診療が難しく手間と時間のかかる割には小児科医の診療報酬は決して高いとは言えない。小児外来の報酬は内科外科の八割程度しかないという調査結果もある。 厚生労働省は昨年度の診療報酬改定で小児入院医療管理基本料を新設した。また他の報酬に加算措置を取ったりするなど小児科を優遇した。だが他の診療科との格差は完全に解消されてはいない。 小児救急医療支援事業をみても国のバックアップは十分とはいえない。四月から小児科医一人当たりの補助額を約六千三百円加算し約二万七千円に引き上げた。努力は認めるが、救急現場での労力と見合う金額には至っていない。 少子化対策は高齢化対策と表裏一体だ。年金一つとっても子供たちが保険料を払わなければ今の大人への年金支給はあり得ない。将来を担う大切な子供の健康と命を守ることは子育て支援と老後対策につながる。小児救急医療体制づくりへ一層の支援を求めたい。 |