| 2000年3月1日(水) |
日本中央競馬会(JRA)の場外馬券売り場(ウインズ)を八戸市の工場街の一角に誘致する計画が進んでいる。誘致に名乗りを上げた人たちが中心になり推進母体の会社が設立され、二月早々に八戸市長と市議会に協力を要請した。二〇〇二(平成十四)年春の実現を目指すという。 誘致が実現すれば、JRAから市や地域への助成が見込めるほか、馬券販売、警備、清掃、交通整理などの雇用を生む。さらにウインズの集客力は新たな商業・レジャー施設の誘因となり、地域活性化に大きく貢献するというわけだ。 開設はJRAの申請に基づいて国が許可することになるが、地元の同意が不可欠の条件になる。中里信男市長は四月にも「地元」としての姿勢を打ち出す方針という。このため地元町内会のほか、八戸商工会議所などに意見具申を要請している。もちろん、開会中の定例市議会での論議が動向を左右することになる。 これまでのところ、共産党などが市に誘致反対を求めたほかは、賛成を含め表立った動きがみられない。それにしても広範な市民の声が聞こえてこないのはどうしたことだろうか。このまま計画が進んでよいのだろうか。 県内では中央、地方競馬の違いはあるが一九九八年に田舎館村に馬券場が開設され、十和田市でも誘致計画がある。八戸の近郊では岩手県種市町に馬券場があり、この二月、競輪だが六戸町内に車券売り場設置が許可されている。 競馬はダービー、天皇賞などクラシックレースともなれば、馬券を買わない人からも注目を集めるように人気がある。テレビゲーム機やパソコンなどによる馬券の購入(JRA・PAT方式)も可能である。 大衆化し、娯楽の一つとして浸透してきた公営ギャンブル。目くじらを立てるのはどうか、という考えもあろう。地域振興の好機として誘致に懸命な地域の動きも理解できる。ウインズ誘致を進めている人たちも「八戸の経済状況が悪化しており、雇用拡大を図るため誘致に至った」と主張する。 しかし、八戸は工業都市への脱皮を果たした県内では例のない地域である。六四(昭和三十九)年、新産業都市に指定されたことを弾みとし、港湾、工業用地、産業道路など、新産業都市としてのインフラ整備が行われてきた。 この間の公共投資は、国土庁の積算によれば一兆七千八百億円にも上る。産業都市整備のために、これほど多額の投資が集中的に展開された地域は、県内では八戸をおいてほかにない。 新産業都市八戸はいま、産業構造変革の荒波にもまれている。八戸の代表的企業、工場でのリストラも相次いだ。雇用環境は停滞したままだ。 だが、公共投資額を見る通り、この荒波に真っ向からぶつかるだけの力を十分に蓄えているはずだ。こういう時期だからこそ、八戸の人々の知恵と力が試されているのではないか。 苦境打開の切り札に馬券場を掲げるとは、いささか安直ではないのか。まして、開設予定地は都市計画法に基づく工業専用地域の中にある。 八戸市では八八(昭和六十三)年にも競艇の舟券売り場開設が持ち上がった。住民運動で三万人を超す反対署名が集まり、市議会も反対し、とん挫している。九三(平成五)年にも馬券場誘致の動きが起きたが、そのまま立ち消えとなっている。 舟券場問題のとき、当時の八戸市長は「八戸は産業都市であり、ギャンブルではなく、産業の振興を基本にして活性化を考えていくのが本筋だ」と、反対の理由を明言している。この言葉の意味をいま一度かみしめる必要がある。 |