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  • 2017年7月15日(土)

テロの拡散を防ぎたい/イスラム国拠点奪還

 過激派組織「イスラム国」(IS)の重要拠点だったイラク北部モスルを、イラク軍が約3年ぶりに奪還した。シリア、イラクで支配地域を広げてきたISには大打撃となった。

 ただ、世界からIS支配地域に集まっていた戦闘員が出身国に帰り、テロを起こす脅威はむしろ強まる。国際社会は結束してテロの拡散を防がなければならない。

 イラクのアバディ首相は「ISによるテロは失敗に終わり、虚構の国は崩壊した」と成果を強調した。だが、IS掃討作戦で有志連合を率いる米軍のタウンゼンド中将は「まだ厳しい戦いが先にある」と慎重だ。次の焦点はISが「首都」と称するシリアのラッカ奪還だが、実現は見通せない。

 イラク軍は昨年10月、モスル奪還作戦を開始した。ISは市民を「人間の盾」として抗戦し、攻略に時間がかかった。今後も市民の犠牲をいかに防ぐかが課題となる。

 IS台頭の温床となったのは、米国主導のイラク戦争とその後の混迷、深刻な人道危機に国際社会が対応できなかったシリア内戦だ。国際社会は力を合わせ、モスルの復興と治安回復、避難民の帰還を支援すべきだ。過激派の力をそぐには生活基盤の再建が欠かせず、国連は緊急案件だけで10億ドル(約1140億円)以上必要としている。

 イラクではマリキ前政権のシーア派優遇策にスンニ派が反発し、スンニ派の過激派であるISの伸長を容易にした面がある。イラク政府は、宗派対立の克服に力を注いでほしい。

 ISは数々の残忍な行為で世界に衝撃を与えてきた。2015年1月には、シリアに渡航した湯川遥菜さんとジャーナリスト後藤健二さんの殺害を公表した。

 15年11月のパリ同時テロ、日本人7人も犠牲になった16年7月のバングラデシュ飲食店襲撃テロ、今年5月に英マンチェスターのコンサート会場で起きたテロなどIS絡みの事件が多発した。フィリピン南部ミンダナオ島ではIS系過激派と政府軍の戦闘が続いている。

 国際社会がテロ対策に取り組む上で、移民やイスラム教徒の排斥を主張する政治勢力が欧米で伸びていることはマイナスだ。トランプ米大統領が打ち出したイスラム圏からの入国規制もテロ対策には逆効果という指摘もある。

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