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  • 2017年5月13日(土)

一般人も無縁ではない/「共謀罪」と監視

 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案を巡り、今国会中の成立を目指す与党と廃案を訴える野党の攻防がヤマ場を迎えている。与党は来週にも採決に持ち込み衆院を通過させる構えだ。

 報道各社の世論調査では、法案への賛否は拮抗(きっこう)している。多くの人がテロ対策は不要とは思わないだろう。また自分はテロ等準備罪の適用対象とされる暴力団や薬物密売組織などの「組織的犯罪集団」とは無縁だ、関係がないと考えるかもしれない。

 しかし、そうとは言い切れないところに準備罪の怖さがある。2001年の米中枢同時テロを機に米国でテロの封じ込めを目的とする電話やメールの傍受を認めるなど捜査権限を強化する愛国者法が成立した。ところが後になって、インターネットの検索履歴も含め一般市民の生活の隅々にまで監視が及んでいたことが米中央情報局(CIA)元職員により暴露された。

 犯罪を計画段階で取り締まるため、捜査機関は団体や個人の動きを常時監視する。対象は米国のように際限なく広がり、反原発や反基地といった市民運動にも及ぶ恐れが指摘されている。

 一般人はテロ等準備罪の捜査対象になるか。国会論戦で大きな焦点となり、政府は「対象になることはあり得ない」と答弁した。一方で、正当な活動をしている団体でも目的が一変して犯罪集団とみなされた場合にはメンバーはもはや一般人ではないとも説明。線引きが分かりにくい。

 この点に野党がこだわるのは、現に市民運動が警察の監視対象となった実例があるからだ。岐阜県大垣市で、風力発電施設の建設計画に反対する住民の個人情報を地元警察が収集して事業者の中部電力子会社に提供していたことが分かり、住民側は昨年12月、プライバシー侵害で精神的苦痛を受けたとして県に損害賠償を求め、提訴した。

 大分県別府市で昨年6月、参院選公示の直前に警察が野党の支援団体が入る建物の敷地に隠しカメラを設置していたことも明らかになった。

 今回の法案が成立すれば、こうした監視が「捜査のため」という理屈で押し通されることにもなりかねず、警察などがより積極的に監視活動を展開するのを懸念する声は絶えない。「監視社会」を受け入れることができるのか、よく考えてみたい。

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