• トップ
  • >
  • バックナンバー
  • 2017年5月5日(金)

開かれた場で議論すべき/首相の改憲発言

 安倍晋三首相が憲法記念日に、改憲派の集会に寄せたビデオメッセージで、2020年に改正した憲法の施行を目指す考えを表明した。具体的な改憲項目として戦争放棄を定めた9条の改正と高等教育の無償化を挙げた。

 「自民党総裁」と断った上での発言だが、憲法を尊重し擁護する義務が定められた首相が年限を区切って改憲を明言するのは極めて異例である。これまで積み重ねられてきた議論を軽視した発言であり、唐突感が否めない。

 首相は改憲に強い意欲を示しながら、国会答弁では「国会の憲法審査会で議論してほしい」と論戦を避けてきた。9条改正や教育無償化は衆参両院の憲法審査会でも議題として真正面から取り上げられておらず、今回の表明手法は国会軽視と言わざるを得ない。

 9条改正に関して首相が提起した内容は従来の自民党案と異なり、整合性も問われる。国民に開かれた国会でのきちんとした議論が必要だ。

 国会の憲法審査会では、与野党の幅広い合意を目指すことを基本に、自民党も協調路線をとってきた。このため審議には時間がかかり、改憲項目を絞り込む段階には至っていない。首相が年限を区切る発言に踏み込んだのは、進まない国会論議へのいらだちがあるためでないか。

 確かに9条改正は首相がかねて主張してきた改憲の「本丸」であり、国民の理解の得られやすそうな項目を探す「お試し改憲案」よりも真正面から取り上げるべきものだ。

 だが首相の提案には疑問点が多い。自衛隊に関し「『違憲かもしれない』などの議論が生まれる余地をなくすべきだ」と指摘。その上で「戦争放棄」を定めた9条1項と「陸海空軍その他の戦力」の不保持を定めた2項は維持し、自衛隊の存在を明記する文言を加える案を示した。しかし自衛隊を違憲とする見解の多くは2項の規定に基づいている。

 首相の発言には、現憲法は修正せず必要な条項を加える「加憲」を主張する公明党への配慮があるとみられる。教育の無償化も、独自の改憲案に無償化を掲げる日本維新の会の協力を得る狙いだろう。

 20年の施行を目指すならば、国民投票の前か投票に合わせて衆参の選挙が行われるだろう。首相はこれまでの国政選挙では改憲の争点化を避けて、選挙戦で言及を抑えてきた。今後の選挙では改憲の是非が最重要の争点となる。

モバイルサイトのご案内

広告掲載のご案内