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  • 2017年3月22日(水)

基本的人権との摩擦生む/「共謀罪」法案

 政府は共謀罪を取り入れた組織犯罪処罰法改正案を閣議決定した。今国会での成立を目指す。改正案は2人以上で重大な犯罪を計画すれば、実行しなくても処罰の対象となる。犯罪の実行で結果が発生して初めて罰するという刑事法の原則を大きく変える。捜査機関は計画段階の犯罪をあぶり出すため社会に監視の網を広げようとするだろう。

 通信傍受で電話やメールの内容に目を光らせたり、隠し撮りしたり。屋内に送信機を仕掛け日常会話を拾う会話傍受など新たな捜査手法の導入も警察内で検討課題になっている。プライバシーの領域に立ち入ることなしに「内心」を探ることはできず、憲法が保障する基本的人権との摩擦を生むのは避けられない。

 政府は2020年の東京五輪・パラリンピックに向けテロ対策を強化するのに不可欠とする。過去に批判を浴び、法案が3度廃案になったときの共謀罪と違い、構成要件が厳格で一般の人が対象になることはあり得ないとも言う。

 適用対象は「組織的犯罪集団」だが、普通の団体なども目的が一変した場合には対象になると政府は答弁している。対象犯罪も当初の半分以下に減らしたとはいえ300近くに及ぶ。拡大解釈や過剰な取り締まりによって、国への批判を萎縮させる恐れが指摘されている。

 政府は閣議決定した法案から「共謀」の2文字を完全に消した。「内心の自由」を侵すと批判を招き、日の目を見なかった過去の共謀罪法案と異なることを強調するためだ。共謀罪ではなく「テロ等準備罪」という罪名を持ち出し、テロ対策を前面に掲げた。

 しかし、いくら字面をいじっても共謀を罰するという本質は変わらない。組織的犯罪集団は「重大な犯罪を実行するために結合する団体」と定義されるが、常習性や反復継続性などの要件はなく、市民団体や会社も対象になるとの懸念は根強い。

 そもそもなぜ、この法案が必要なのか。政府は航空機乗っ取りなどの事例をいくつか挙げ「現行法では的確に対処できない」とする。野党が有力な学説を引き「ハイジャック防止法の予備罪を適用できる」と指摘しても「予備罪に当たらないこともある」と繰り返し、具体的に現行法のどこに不備があるのかは判然としない。政府は今後の審議で、こうした疑念や不安の数々にこたえていく必要がある。

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