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  • 2017年3月19日(日)

文民統制立て直しが急務/PKO日報隠し

 特別防衛監察は本来、不祥事解明を担う。防衛相がその実施を命じなければ文書管理の真相を把握できないなら、それ自体がシビリアンコントロール(文民統制)の機能不全を物語る。稲田朋美防衛相の管理能力が問われるのは無論だが、文民統制の根本的な立て直しこそが急務だ。

 南スーダン国連平和維持活動(PKO)派遣部隊の日報を、陸上自衛隊が「廃棄済み」としながら実は保管していた。「日報」には昨年7月に起きた南スーダン政府軍と反政府勢力との大規模紛争が「戦闘」と記載されていた。

 「日報」の情報公開請求があった昨年10月は、次の派遣部隊に「駆け付け警護」など新任務を付与することの是非が論議されていた。「戦闘」という語を多用した「日報」が表に出て、自衛隊の海外派遣拡大にブレーキが掛かるのを危惧したのか。だとすれば、防衛現場の重大な越権行為であり、国民への背信だ。

 防衛庁が省へ昇格した2007年前後、制服組(武官)の表だった発言が急激に増えだした。田母神俊雄航空幕僚長が政府見解に反する論文を公表したのが08年。そのころ、定員10人全員が背広組(文官)で構成される参事官を通さないと制服組は防衛庁長官を補佐できなかったのが、制服組幹部が公然と参事官の廃止を要求し始め、09年に望み通り廃止された。

 さらに、防衛相の指示などは必ず背広組の官房長や局長を通す「文官統制」も15年に全廃され、制服組は背広組と対等になった。文民統制確保の仕組みを政府自らが弱体化させてきたことは明らかだ。

 「日報」は、稲田防衛相が調査を指示し統合幕僚監部内で発見されながら、稲田氏への報告は約1カ月も後の1月27日だった。陸自は公表も検討したが、統幕の背広組幹部が非公表を指示した疑いも判明した。文民たる大臣を支えるべき文官まで防衛相を蚊帳の外に置いていたなら「文民統制」など有名無実だ。

 防衛現場の発言力向上は、防衛システムの高度・複雑化によって制服組の専門能力に頼る度合いが高まったことに伴うとされる。だからといって文民統制が緩んではならない。防衛当事者の政策介入を許せば、戦前の軍部暴走の悪夢が再び現実味を帯びる。防衛力強化、自衛隊の任務拡大に突き進む安倍政権に、その視点の欠落はないか。今回の問題の核心はそこにある。

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