新郷村
  • 新郷村の乳製品

  •  新郷村と東奥日報社は4日、地域の食材にスポットを当てるイベント「食の味力発見in新郷村」を同村の間木ノ平グリーンパークで開いた。テーマは「新郷村の乳製品」。午前11時から同村ふるさと活性化公社が開発した新商品「新郷黒飴(あめ)アイス」を、手作りの南部煎餅(せんべい)でサンドし、先着150人に振る舞った。
酪農発祥の地 情熱結実
  • 写真高品質で、安全安心を目指す新郷村ふるさと活性化公社の乳製品は、地元酪農家の朝搾りたて生乳を原料に作られている
  • これが味力

    新商品「新郷黒飴アイス」

    写真 アイデア商品を次々と生み出す新郷村ふるさと活性化公社で、またまた新商品が誕生した。地元特産の新郷黒飴(あめ)と、搾りたて牛乳で作られたアイスのコラボ商品。黒砂糖の独特な香りとコクのある濃厚な味わいが楽しめる一品に仕上がっている。

 それは、山ごもりのような生活で試行錯誤を繰り返す2人の男に神様がプレゼントした奇跡だったのかもしれない。1995年秋、新郷村ふるさと活性化公社の角岸秀伸・現事務局長と田沢匡輝・現観光管理部長は、人里離れた高原の小さな加工施設で必死にヨーグルト作りに取り組んでいた。

 当時、村が力を入れていたのはアイスクリームで、ヨーグルトは空いた時間に片手間でやっている程度。アイスクリームはいろいろな素材を組み合わせるアイデアが形になって出来上がるため、成功しても失敗しても分かりやすい。ところが、ヨーグルトは菌の発酵をコントロールするのが非常に難しい。

 2人は工場に泊まり込み、どうすれば味を安定させることができるのか毎日試験を繰り返した。菌の培養時間をいろいろ変えて試すが、終わるのが夜中になることも多いため、泊まり込むしかなかった。うっかり機械を止めるのを忘れ、設定した培養時間より長くなってしまったのに良いものができたり、培養器でおいしくできても、いざプラントで大量に作ってみると駄目だったり。そんな生活が約半年続いた。「青森県酪農発祥の地にふさわしいヨーグルトを作りたい」。情熱だけが2人を支えていた。

 ようやくイメージ通りの味を安定して作れるようになったのは翌96年3月ごろ。濃厚だが酸味で切れがある、しかも圧倒的においしいヨーグルトだ。試験的に販売すると、あっという間に売り切れた。まだラベルもなく、ワープロで原材料だけを打ち込んだシールを貼って出荷した。村内外、首都圏などから「次の出荷はいつ?」と問い合わせが相次いだ。2人の労苦が報われた瞬間だった。

 公社の快進撃は続く。「薫りたつ牛乳」「バジル入りアイス」「ドラキュラアイス」「生キャラ煎餅(せんべい)」「飲むヨーグルト ザ・プレミアム」など商品は次々ヒットし、アジア最大級の食の展示会で多くの商品が金賞以上という勲章も得た。「新郷村の乳製品」はいまや海外へも広まり、酪農発祥の地の村名は不動のものとなった。

 新郷村は失敗を恐れずトライすることが許される環境と、村民こぞってアイデアマンという“風土”があるという。実際「ドラキュラアイス」は児童たちの発想、「生キャラ煎餅」は角岸事務局長と村民との会話が基になって生まれた。「とにかくやってみなさい」が口癖の須藤良美村長自らアイデアを出すこともしばしば。「村長室のドアは年中開けっ放し。職員はもちろん村民の方も自由に出入りできる。ここは秘密を語る場所ではなく、村の将来を語る場所」と胸を張る。

 角岸事務局長は「『ザ・プレミアム』が完成品とは考えていない。生乳と乳酸菌だけでできた究極のヨーグルトを目指す」と前を見据える。

来場者の声
  1. 写真

    新郷の良さ ギュッと

    村ふるさと活性化公社職員
    長根 晴香さん(27)

     公社に勤めて8年目。これまで「生キャラ煎餅(せんべい)」などの開発に携わりました。新郷村は一体感があり、やりがいのある仕事だと思います。今度の黒飴アイスは材料がすべて地元産。煎餅も公社で作ったもので、新郷の良さがぎっしり詰まっています。
  2. 写真

    甘さが煎餅にマッチ

    八戸市根城4丁目
    村越 敏志さん(34)一家

     隣の五戸町出身。会場の間木ノ平グリーンパークには昔からよく遊びに来ていました。きょうは一男四女の子どもたちを連れて家族7人で来ました。黒飴アイスの甘さと、煎餅の軽い塩味がマッチしておいしい。パリッとした食感がもなかのようです(敏志さん)。
  3. 写真

    黒飴の味 たっぷり

    岩手県盛岡市
    藤原 諒祐君(13)

     家族と一緒に盛岡市から遊びに来ました。会場内にあるキャンプ場に泊まっています。岩手にも有名な小岩井農場がありますが、こちらのアイスも負けていないですね。濃厚なアイスの中に黒飴の味がたっぷり溶け込んでいて、とてもおいしいです。
新郷村の乳製品について聞きました
  • 三瀧伸孝さん(新郷村ふるさと活性化公社製造開発部長兼工場長)

    <みたき・のぶたか 1982年、新郷村生まれ。十和田工業高校卒業。新郷村ふるさと活性化公社が管理運営するキャンプ場(間木ノ平グリーンパーク)でのアルバイトがきっかけで高校卒業後、同公社に入社。商品開発に携わり、数々のヒット商品を生み出している。14年9月から現職>

  1. フクロウくん

    ●商品の特徴や魅力は?

    有識者

     ― 「薫りたつ牛乳」「飲むヨーグルト」「バジル入りアイス」など新郷村ふるさと活性化公社が製造販売する乳製品は、県内だけでなく国内外で高い評価を得ている。

     「数々の商品を開発する中で最もこだわってきたのは、地元食材の活用です。乳製品作りに欠かせない生乳は、牧草を育てる土作りからこだわった一軒の酪農家のものだけを使用しています。品質の安定化につながり、混じり気のない生乳は深いコクと濃厚な味わいを生み出してくれます」  「新郷は、村民同士がとても仲が良く、まるで家族のよう。村長とも忌憚(きたん)なく話せる風土が根付いています。地元の人たちがいろいろなアイデアを出してくれるので、村民すべてが開発者みたいなもの。商品がヒットすると自分のことのように喜びますし、村全体で物作りしている感覚です。商品には村民の愛情と情熱がたくさん詰まっています」

  2. フクロウくん

    ●新商品はどうやって?

    識者

     ― 新郷村には、失敗を恐れずにチャレンジすることを良しとする風土があり、村長自らが「何でも作ってみれば」という言葉で公社職員の背中を押している。これまで公社が開発した乳製品は約30種類に上る。

     「常に新しいものを作ろうと計画的に考えているわけではなく、偶然の産物であるケースもあります。新商品『新郷黒飴アイス』は、公社製の生キャラメルに使用している黒飴とアイスを組み合わせたらどうかという軽い発想からできたものです。試食してみたらとてもおいしくて。まずは、イベントで提供し、お客さんに味わってもらいたいと思います」

  3. フクロウくん

    ●今後の展望は?

    識者

     ― 三瀧さんは、公社に勤める傍ら、地域の宝を発掘・発信する村おこし団体「新郷村埋蔵金伝説☆発掘探検隊」に所属。新郷の魅力を村外に発信する活動にも取り組んでいる。

     「新郷村には良いものがたくさんありますが、残念ながら知名度は十分とは言えません。多くの人に、公社の乳製品を味わってもらい、おいしさを感じてもらうことで、新郷村を知るきっかけになればうれしいです。これからは、現在ある商品の安定生産を目指し、さらに販路拡大にも力を入れていきたいと思います」