大間町
  • 大間牛

  •  大間町と東奥日報社は28日、地域の食材にスポットを当てるイベント「食の味力発見in大間町」を、町総合開発センターで開いた。テーマは「大間牛」。町内で飼育された黒毛和種の大間牛を素焼きにして先着約100人に振る舞った。
「陸マグロ」ブランドに
  • 写真大間牛のすき焼き。大間マグロの食べ比べも楽しめる。従業員とともにセンターを切り盛りする正根夫妻
  • これが味力

    海辺近くでスクスク

    写真 町営牧場は津軽海峡に近く、牧草が潮風を浴びて、牛に必要なミネラル分を豊富に含んでいる。町内には海と牛肉にちなんだ逸話も。幕末、大間の村人が、遭難したイギリス商船の乗組員を救助し、乗組員の求めに応じて農耕用の牛を食べさせたという。そのため本県で初めて牛肉を食べたのは、大間の村人とされる。

 大間のマグロ、佐井のウニ、風間浦のアンコウ。下北の北通り3町村には“ぜいたく食材”がほかにもある。黒毛和牛「陸(おか)マグロ」だ。最高等級のA5評価を受けたこともある。  「マグロ一筋」を掲げる本州最北端の大間町は、大間牛を「陸マグロ」と名付け、ブランド化を目指している。

 「マグロ一筋」を掲げる本州最北端の大間町は、大間牛を「陸マグロ」と名付け、ブランド化を目指している。

 これまで大間牛は地元で年2回、春の桜まつりと秋の町産業祭で販売されていただけ。ほとんど「県産黒毛和牛」として流通していた。

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 そこで「地元の人や観光客に、もっと大間牛を知ってほしい」と、町の施設「おおま温泉海峡保養センター」が今年から通年で、陸マグロの料理を提供している。指定管理者の支配人正根聡さん(40)が町と連携し、大間牛の一頭丸ごと買い付けを決断した。佐井村出身の正根さんは、青森市内の高校を卒業後、10年ほど、関西地方のフレンチや創作料理店などで料理人の経験を積んできた。大間牛について「肉質は年々向上しており、甘みがある」と太鼓判を押す。

 大間まぐろの刺し身と、大間牛の食べ比べ定食が好評。大間牛はすき焼きか陶板焼きを選べ、料金4千円(税別)から。解凍など準備があるため、正根さんは予約を勧める。すき焼き定食は1300円(同)。町民の利用もあることから、手ごろな料金を心がけている。

 ハンバーグやカレーなども期間限定で調理してきた。「大間牛は桜まつりで当たり前のように食べていた。食べるのが町民だけではもったいない」と副支配人で妻の千草さん(34)。「いろいろな料理を提供したい」と話す。

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 町内では、安い輸入肉に押されるように肥育農家が次々と姿を消した。現在、肥育を手がけるのは、マグロに続く特産品を目指す町だけ。子牛の繁殖農家も高齢化が進んだ。

 ただ、近年は新たな担い手が次々と誕生。“脱サラ”した佐々木陽治郎さん(33)もその一人で、国の就農給付金を受けながら、町奥戸地区ゆかりの米国原産ジャガイモ「オコッペいもっこ(三円いも)」を作付ける一方、今年5月まで2年間、町繁殖育成センターで牛の飼育も学んだ。「畜産で生計を立てられるようにしたい」と佐々木さん。前を見据え、張り切っている。

来場者の声
  1. 写真

    「三円いも」もどうぞ

    大間町奥戸漁協女性部長
    新井田 若子さん(62)

     町産業祭の会場でオコッペいもっこのコロッケを販売しています。ほくほく、クリーミーでおいしいですよ。オコッペいもっこは大手スーパーの東北エリアにも流通しており、通称は「三円いも」。マグロ、大間牛に続く町の名物に-と頑張っています。
  2. 写真

    大間牛また食べたい

    大間小4年
    駒井 右京君

     肉はやっぱり牛肉が一番好き。大間牛は、きょうの産業祭のようなイベントの会場で販売していると、母が必ず購入して家族みんなで食べています。ふだん、あまり食べる機会がないので、おいしい大間牛を町内でもっと味わえるようになればうれしいです。
  3. 写真

    陸マグロの味も絶品

    今別町宮本
    小鹿 輝恵さん(42)

     大間の親戚の家に泊まりがけで来たついでに産業祭に寄りました。マグロや海産物、ヒバ加工品など、大間と今別は共通点があって似ています。(振る舞いの)大間牛は柔らかくて、とてもおいしい。大間はマグロはもちろんいいけど、「陸マグロ」も絶品ですね。
大間牛について聞きました
  • 南隼人さん

    <みなみ・はやと 1983年、大間町生まれ。2005年から町繁殖育成センターで牛の飼育を学び、3年後に自前でも子牛を繁殖。今年2月、父とともに、マグロと畜産を扱う株式会社を設立>

  1. フクロウくん

    牛の生産体制は?

    有識者

     --本マグロの一本釣りで有名な本州最北端の大間町。町は黒毛和牛を「陸マグロ」と呼び、新たな特産品に育てようとしている。

     「現在、町内で肉用牛の肥育を手がけている畜産農家はおらず、町が取り組んでいるだけ。町の繁殖育成センターでは、約30頭を肥育しており、年間12、13頭を出荷しています」

     「枝肉はA4評価がほとんどで、1キロ当たり2200円ほどで落札されています。過去には最高等級のA5に評価される肉もありました。センターでは肥育牛だけでなく、種牛2頭や繁殖用の雌牛も約40頭飼育しています」

  2. フクロウくん

    飼育方法は?

    識者

     --大間町の牧畜の歴史は古い。町史によると、馬産地で有名な南部藩の藩営牧場9つのうち町内には「大間野」「奥戸野」の2つが置かれ、牛馬の飼育が盛んだった。

     「大間牛は、町営牧場の広い草地を歩き、丈夫な体をつくっています。エサは牧草のほか、トウモロコシを原料とした濃厚飼料や稲わらなどで、牛の状態に合わせて、エサを与えています。牛舎内に敷くおがくずは、地元の製材所から調達。牛に食べさせる稲わらも県産で、近年は五所川原産です」

     「牛肉の質は、牛の血統に左右されます。町のセンターでは徐々に血統のよい牛に切り替えています。大間牛のブランドを本格的に確立するには、血統を改善しつつ、他の産地と差別化を図るため、牛のエサに大間まぐろの骨や血合い、皮などを混ぜることなどを考えるのもいいでしょう」

  3. フクロウくん

    今後の課題は?

    識者

     --ブランド牛は全国各地に誕生している。一方、畜産業界には、TPP(環太平洋連携協定)に対する懸念も出ている。

     「海外の富裕層に和牛が浸透しています。海外の市場を開拓することで、和牛の畜産農家は生き残ることができると思います」

     「父はマグロ漁師。わたしは船酔いしやすいため、畜産の道を選びました。町のセンターだけでなく、自前でも子牛を繁殖しています。初めて子牛を出荷したときは別れがつらく涙が出ました。この仕事は頑張った分だけ結果が出ます。就農2年目で1頭100万円の値を付けたこともありました。今では飼育規模が町内有数です。将来的には肥育も手がけたいです」