西目屋村
  • 白神そば

  •  西目屋村と東奥日報社は3日、地域の食材にスポットを当てるイベント「食の味力発見in西目屋村」を同村のアクアグリーンビレッジANMONで開いた。テーマは「白神そば」。温かい白神そばを午前10時、午後1時半から各回250人、合計500人に振る舞った。
地元で愛される味に
  • 写真石臼で丁寧にひいたそば粉を使い、湿度なども加味してそばを打つ平田さん=西目屋村・食品加工センター「味な工房」
  • これが味力

    多彩なメニュー

    写真 くせのないさらりとした味は温・冷どちらでも合い、ビーチにしめやでは山菜やマイタケ入りも人気。「甘さを味わうなら、ざるそばを」と同施設のレストランのシェフ成田悠也さんは話す。季節や祭りに合わせた限定の「乳穂ケ滝そば」などのユニークな商品も。冬期限定の手打ちそばは炊き込みご飯付き。

 「味よし、色よし、香りよしのそば」と西目屋村のブナの里白神公社の角田克彦支配人は胸を張る。

 西目屋村では、先祖が山あいの傾斜地を切り開き、苦労しながら稲作に取り組んできた。「できることなら米作りをしたいが、減反政策が進んでしまった」とソバ生産者の熊谷貞徳さん(57)。1990年代後半から転作作物のソバ栽培に活路を見いだし、10年以上。手探りで生産のノウハウを積み重ね、津軽地域有数のソバ産地に成長した。

 白神そばは、アクアグリーンビレッジANMONやグリーンパーク森のいずみなど白神公社が運営する村内の施設すべてで味わえる。村中心部の物産センター「Beech(ビーチ)にしめや」のレストラン森のドアでは、期間限定で手打ちそばも提供。隣接する食品加工センター「味な工房」ではレストランと手分けして、そばを打っている。

 脱穀から製粉、手打ちまで、白神公社で働く平田俊也さん(30)が担当。製粉作業は機械化されてはいるものの、昔ながらの石臼ひきの作業で時間がかかる。そばを打つ作業も「水分の調整が肝心。湿度に合わせ、そば粉と相談の作業」と細心の注意を払う。

 課題は収量の安定化。2012年産は10トンと過去最高の収量を誇ったが、昨年は天候不順やサルの食害でわずか1トンにまで落ち込んだ。「完全無農薬で味の評価も高いが、収量が安定しないと他地域への出荷は難しい」と生産者の桂田正春さん(68)。三上留理子さん(55)は「山菜やキノコと組み合わせた定食など、西目屋の山の恵みを活用してはどうか」と地元での消費増へアイデアを練る。

 白神そばの販促に奔走する角田さんは、各地の物産展に参加した経験から「ホームの西目屋で食べる良さ」を感じている。白神山地の豊かな水、緑濃い森など、そばをはぐくんだ環境・雰囲気も加わり、味が深まる。東京など「アウェー」では出せない味だ。栽培から、そばとして提供するまでほとんどを村内で行う、文字通り地産地消のブランドとして一層の消費拡大を狙う。

 生産量の増減にも対処できるよう、加工品開発にも力を入れ、そば焼酎「暗門」は3年目の仕込みを迎えた。昨年は、村で売り出し中の山菜ミズと組み合わせたそばを販売、好評を得た。「近年復活させた『目屋豆腐』にも使われている西目屋村産の大豆と絡めて、メニューやアイデアを考えていきたい」。地元に愛されるそばを目指して工夫が続く。

来場者の声
  1. 写真

    ソバの品質年々向上

    ブナの里白神公社管理部長
    松橋 孝臣さん(43)

     村で生産されたソバは、品質が年々向上。振る舞いのそばは公社が準備しましたが、そばの味を堪能できるよう、あっさり味のつゆで仕上げました。白神山地は緑の季節を迎えます。ビーチにしめやでは白神そばを販売しているので、立ち寄ったらぜひ味わってみて。
  2. 写真

    つるつるの食感いい

    五所川原市若葉
    北澤 鏡子さん(64)

     つるつるとした食感で、今まで味わったことのないおそば。若い人や小さな子供でも食べやすいのでは。ほかの品種のそばとは風味が違いますね。トッピングもいろいろあって楽しめます。大自然と新緑を背に食べるのは、本当においしいですね。
  3. 写真

    青空の下 味わい格別

    青森市勝田2丁目
    鎌田 広さん(66)

     「食の味力発見」に興味があり、できるだけ足を運んでいます。きょうは青森市から2時間かけて夫婦で訪れました。天気が良く、青空の下で食べる「白神そば」は特別おいしく感じます。登山が好きで白神山地によく来ています。6月下旬には高倉森に登りたいですね。
白神そばについて聞きました
  • 佐藤徳美さん(白神そば生産組合長)

    <さとう・とくみ 1945年西目屋村生まれ。西目屋中卒業後、農業に従事し、2010年から現職。大秋地区公民館長なども務める>

  1. フクロウくん

    ●生産のきっかけは?

    有識者

     ― もともとソバは一部で自家用に種を採るために栽培する程度だった。

     「県南地域とは異なり、自宅でそばを打つことはほとんどない地域でしたが、1996年ごろ、一度自分たちで作ったソバを食べてみようと手打ちそば講座を開き、作ってみたらおいしかった。それなら転作作物として本格的に取り組んでみようと始まりました。2004年にはそば組合が発足。以来、加入農家も増え、現在は52戸、約38ヘクタールで生産しています」

  2. フクロウくん

    ●ソバの特徴は?

    識者

     ― 青森県の奨励品種階上早生をあえて使っていない。

     「複数の品種を作付けし最適として選んだのが、北海道で開発された『キタワセソバ』。食味が良く寒冷地でも育てやすい特徴があります。ソバは稲作に不向きな土地の作物のイメージがあり、放っても育つと思われがちですが、それだけでは生産量が少ない。収量を確保するには施肥が必要です。土壌改良用のバーク堆肥を入れ、ソバ栽培に合った土づくりを心掛けています。そのかいあって、以前、そば粉を東京の有名そば店に出荷し、大変においしいと高評価を得たこともありました」

  3. フクロウくん

    ●今後の課題は?

    識者

     ― 収穫したソバは白神公社が全量買い取り、村ぐるみで白神そばを売り出している。

     「ソバは湿潤に大変弱い。もともと水田だったため、雨が続くとあっという間にしおれてしまいます。山間部のためサルの食害も。サルが畑に入るだけで倒伏し、収穫になりません。年によって耕作地の場所が変わるので、電気柵を設置するまでに至りません。5月の田植え後に植える夏ソバ、7月下旬からの秋ソバと、栽培時期をずらしていますが、天気や食害など、農家の努力だけでは防げない障壁に頭が痛いところです」

     「約50軒ある大秋地区で小さな子供がいるのはわずか4軒。少子高齢化が進んでいます。農家も高齢化。畑に堀を巡らせるなど水はけ対策をしたくても、重労働が必要な作業は難しい面もあります。現在、ソバは単に作付けするだけでは残念ながら赤字の状態。転作奨励金などがあって農家の収入になります。できるなら、ソバの収入で『独り立ち』するのが目標。組合員が協力しあって取り組んでいきたいと思います」