むつ市
  • アピオス

  •  むつ市と東奥日報社は19日、地域の食材にスポットを当てるイベント「食の味力発見inむつ市」を同市の北の防人大湊安渡館で開いた。テーマは「アピオス」。冷涼な下北の気候が育んだアピオスを素揚げし、午前10時から先着100人に振る舞った。
知名度高め一大産地へ
  • 写真安渡館フェスタの会場でアピオスを素揚げする河野さん
  • これが味力

    しもきた
    ★はぴはぴアピオス

    写真 栄養価が高いアピオス。エネルギー、タンパク質、食物繊維、カルシウム、鉄分などの含有量はイモ類で一番多く、アレルギー体質、便秘の解消、血圧上昇の抑制などに効果があるとされている。袋から出してそのままでも素揚げにしてもおいしく味わえる。下北管内の道の駅や直売所、観光施設などで販売されている。

 世界の三大健康野菜と称される「ヤーコン」「キクイモ」「アピオス(アメリカホドイモ)」。その中の一つアピオスは、本県が日本一の生産量を誇る。「あまり知られてないでしょ。まずは地元の人に知ってもらわないとね」と苦笑いするのは、アピオスの生産、販路開拓に取り組む下北アピオス振興会会長の河野紹視(つぐみ)さん(58)。

 アピオスは北米原産のマメ科の野菜で栄養価が高いのが特徴。ジャガイモと比べて、鉄分が4倍、繊維が5倍、タンパク質が3倍、カルシウムが30倍、老化防止に効果があるとされるビタミンEなど、豊富な成分が含まれ健康食品として期待されている。

--◆◆◆--◆◆◆--

 下北産アピオスの特徴はなんといっても甘さだ。下北の冷涼な気候と寒暖差が、糖度30度以上という絶妙な甘さを生み出している。また、アピオスは食害や病害虫の被害が少ないのが強みで、農薬を一切使用しない栽培方法で作られている。

 下北地域で本格的な栽培が始まったのは2012年度から。県下北地域県民局の「まさかりアピオス産地づくり事業」により生産農家への積極的な栽培指導が行われたことで、同年度の作付面積は約80アール、14年度は約260アールと一気に拡大、生産者も増加した。15年度はさらに面積を380アールに広げ、出荷量4~5トン、16年度はその倍の10トンを見込んでいる。

--◆◆◆--◆◆◆--

 河野さんは、52歳で脱サラ、青森市から生まれ故郷のむつ市に戻り、農業家へと転身した。「下北産アピオスを一大ブランドにしたい」-熱い情熱が今の河野さんの原動力だ。販路開拓を1人でこなす河野さんを脇で支えるのが、アピオス生産農家で下北アピオス振興会副会長の濱田久美子さん(58)。「私たち生産者にとって河野さんは救世主。アピオスの一大産地を目指して一緒に頑張っていきたい」と意欲を見せる。

 アピオスの収穫期は秋。収穫後は寒風にさらしながら約1カ月屋外に置く「寒ざらし」やつる切り、蒸して冷凍加工など時間と手間がかかる作業が待っている。農家の後継者不足や高齢化で人手不足が喫緊の課題となっており、昨年から繁忙期の農家を福祉施設が手伝う「農福連携」にも乗り出した。生産者が報われる価格で取引されるためには生産量の確保と販路拡大は欠かせない。河野さんが果たすべき役割は大きい。

 「まずはアピオスの魅力を多くの人に知ってもらうことから。先は長いですが、楽しみながらやっていきたい」と持ち前の明るさを見せる河野さん。情熱が実を結ぶ日まで、河野さんの挑戦は続く。

食の味力発見 in むつ市の会場から
  1. 写真

    食べやすく手軽さも

    下北アピオス振興会事務局
    須藤 美幸さん(41)

     下北の風土に育まれたアピオスは、年々おいしくなっていると思います。甘さや栄養価が高いのはもちろん、生活習慣病予防の効果も期待されています。収穫後、寒ざらししてから、蒸したものを冷凍パックしており、手軽で食べやすいという良さもあります。
  2. 写真

    栽培挑戦 収穫楽しみ

    むつ市田名部女館
    丸山 光男さん(64)

     今年1月、むつ市で開かれた食のイベントで初めてアピオスを食べました。糖度30度以上と聞いて信じられませんでしたが、すごく甘い。クリやサツマイモを食べているよう。興味が湧き、今年5月に植えました。ようやく芽が出てきたところ。収穫が楽しみです。
  3. 写真

    甘さと塩加減 程よく

    むつ市田名部中1年
    阿部 雄翔君(13)

     アピオスは初めて食べたけど、揚げたてなのでほくほくしていてとてもおいしい。アピオス自体の甘さと(まぶした)塩の加減がちょうど良くミックスされている感じです。これならいくらでも食べられそう。家でも食べたいし、学校給食とかでも出してほしいな。
アピオスの農作業を請け負う 坂部啓二さんに聞きました
  • 坂部啓二さん(むつ市・就労継続支援B型事業所サポートセンターひろば管理者)

    <さかべ・けいじ 1950年大畑町生まれ。大湊高校を卒業後、むつ市役所に就職。定年を迎え、障害者の自立を支援したいと、2011年8月「サポートセンターひろば」に再就職。2015年5月から現職>

  1. フクロウくん

    ●農福連携の魅力は?

    有識者

     --県事業として始まった繁忙期の農家を福祉施設が手伝う仕組みの「農福連携」。障害者の就労を支援する「サポートセンターひろば」では今冬からアピオスのつるを切り離す作業を請け負っている。

     「農業者側と福祉施設側には県から作業委託料が支払われるため、双方にメリットがあります。これまで障害のある人たちの就職先は限定的でしたが、農福連携のおかげで、社会との接点が生まれ、一般就労につながる訓練の場としてとても役立っています。能力があれば工賃アップも見込めるため、彼らの励みや自信にもつながります。やってみないと彼らがどこまでできるか分からないところもあり、農福連携は新しい発見の連続。いろいろな可能性を感じます」

  2. フクロウくん

    ●課題は?

    識者

     --障害者の雇用の受け皿となる農業者がいる一方で、関心はあっても知識やノウハウがないために不安を抱く農業者も多い。双方が安心して働くための環境整備が目下の課題だ。

     「まだまだ始まったばかりの事業。農業には季節ごとにさまざまな作業があり、農業者側と福祉施設側が一緒になって就労に適した作業を探り合っている段階です。要望通りに遂行できるかどうか。今年1年は齟齬(そご)のない形でお互いの信頼関係を構築していく時期だと思っています。どこまで彼らが関わっていけるのかを見極めていく大事な年になります」

  3. フクロウくん

    ●今後の展望は?

    識者

     --ひろばでは、アピオスのほかにも夏秋イチゴの出荷箱の組み立てやジャム加工用のヘタ取り作業なども請け負っており、事業者からの受注が増えている。

     「ありがたいですね。これから需要はどんどん増えてくると思います。県の委託でアピオスの掘り起こし作業からスタートしましたが、仕事が認められて、新たにアピオスのつる切り作業の契約をいただきました。むつ市の一大ブランドになろうとしているアピオスの栽培に携われることはとてもうれしいですし、誇りに思います」

     「これから雇用の場の拡充を視野にどこまでタイアップできるか探っていくとともに、農福連携で農業者と福祉施設との契約や障害者の正規雇用につながっていくことを期待しています」