風間浦村
  • 風間浦鮟鱇

  •  風間浦村と東奥日報社は8日、地域の食材にスポットを当てるイベント「食の味力発見in風間浦村」を同村の下風呂漁港特設会場で開いた。テーマは「風間浦鮟鱇(あんこう)」。身や皮、肝をみそであえた「ともあえ」を、来場者の中から抽選で100人に振る舞った。
新鮮 生きたまま水揚げ
  • 写真大きく口を開けて新鮮さをアピール。活締め処理を経て「風間浦鮟鱇」として水産加工会社から出荷される=風間浦村蛇浦
  • これが味力

    フルコース料理

    写真 下風呂温泉郷の8旅館と食堂はアンコウの旬に合わせ、3月末までフルコースを提供している。刺し身、鍋、あん肝、ともあえ、煮こごり、焼き物または空揚げに、旬の数品が付いて税別7千円。宿泊だと1泊朝食料金などが加わる。2~5日前に要予約。昼食コースは税別3500円から。村内では、さらに手ごろな料金で鍋定食なども楽しめる。

 大きな口。つぶらな瞳。ヌルヌル頭。流線型で黒光りした隣町の「大間まぐろ」に比べて“ハンサム”とは、ちょっと言いづらい。が、今では東京都内の老舗料理店も太鼓判を押す高級食材に成長した。

 青森市から車で3時間余。津軽海峡に面した下北半島の風間浦村が、官民挙げて地元産アンコウのブランド化に取り組み、6度目の冬を迎えた。全国的に珍しく生きたまま水揚げされ、高い鮮度が特長。白身は刺し身で食べることができ、フグにたとえる人もいる。

 漁協関係者によると、ブランド化に取り組む前は1キロ当たり1500円ほどだったが、昨年は3700円の値を付けた。

 長年、冷凍技術や流通経路が確立されず商品価値が低かった。「昭和50年代には1キロ数十円と、二束三文で買いたたかれたこともあった」と振り返るのは村内3漁協の一つ、蛇浦漁協組合長の中塚義光さん(67)。ウニやメバル、サクラマスなどとともに稼ぎ頭の大物アンコウを、刺し網で狙っている。

 「風間浦鮟鱇」が、県内6件目となる地域団体商標に登録され最初の漁期に入ったが、これまでの水揚げは今ひとつ。地元では昨年2月の低水温の影響-との見方が広がる。一方、寒流系のコンブが好調となった。蛇浦漁協ではコンブを餌とするウニの水揚げが、最盛期の夏を過ぎて冬にも行われ、アンコウの不振を補った。

 そんな今冬も、同村の下風呂温泉郷はアンコウ料理で湯治客らをもてなしている。身は熱が入るとホクホク。皮はプルプル。肝はねっとり濃厚だ。

 「東北や関東でも知名度を上げたい」。下風呂温泉旅館組合長の扇谷靖さん(58)は、1990年にUターンして、祖父の代から続く旅館を守っている。

 技術者だった扇谷さんは首都圏で道路建設に携わり、都市の風景が変わっていくのを見てきただけに「風間浦の自然の景色は変わりません。いい湯と新鮮な食材で疲れた人を癒やせたら」と話す。8日、下風呂漁港で開かれた「風間浦鮟鱇まつり特別イベント」の会場では、観賞用の水槽で泳ぐアンコウが注目を集めた。アンコウが大きく口を開けたユーモアたっぷりの姿も、癒やしの一こまとなっている。

来場者の声
  1. 写真

    ふんわり感 香り大好き

    青森市富田
    能渡 満里子さん(61)

     風間浦村易国間生まれで前日、実家に泊まってからまつりに来ました。アンコウは小さい頃から大好きで唐揚げなどよく食べていました。振る舞いのともあえもとてもおいしいです。皮もいいけど、肝のかんだ後のふんわり感、独特の香りがとても良いですね。
  2. 写真

    「大間まぐろ」のように

    大間町大間大間平
    船水 徹さん(28)

     普段、地元の大間町でもアンコウをともあえで食べています。振る舞われたともあえはアンコウの肝の割合が多いせいか、おいしく感じますね。風間浦村は大間町の隣村。「風間浦鮟鱇」も「大間まぐろ」と同じように、全国的に有名なブランドになってほしいですね。
  3. 写真

    正月に欠かせない食材

    風間浦村食生活改善推進員会長
    原子 恒子さん(68)

     漁協女性部と一緒に、アンコウ鍋をつくりました。ともあえはイカの飯ずしとともに正月に欠かせない料理です。今ではアンコウは高くて買えないですが、漁師からお裾分けでもらっています。ハマの元気は村の元気。アンコウなど海産物で村が活気づいてほしいですね。
風間浦鮟鱇について聞きました
  • 駒嶺剛一さん(ゆかい村鮟鱇ブランド化戦略会議会長)

    <こまみね・ごういち 1949年、風間浦村生まれ。水産加工会社駒嶺商店を経営。村商工会長も務める。県商工会連合会長なども歴任>

  1. フクロウくん

    ●風間浦産の特長は?

    有識者

     ― 風間浦鮟鱇の漁場は、港から2キロ程度と比較的近く、刺し網や、はえ縄漁の一種『空縄釣り』という伝統の漁法で生きたまま水揚げされるのが特長となっている。

     「アンコウ類は世界的に見ても底引き網による漁獲で、品質が劣化した状態で水揚げされることが多いです。一方、風間浦鮟鱇は生きたまま水揚げされるため、水槽で育てて出荷時期を調整できる畜養や『活締め』といった高い鮮度を保つ処理で、首都圏や関西圏などに販売することができます」

     「こうした風間浦鮟鱇の優位性が消費者や流通業者に理解されるようになり、風間浦産アンコウの平均単価は以前に比べ倍増しました。地元の下風呂温泉郷でも、フルコース料理を求め、冬季観光客の増加にもつながりました」

  2. フクロウくん

    ●ブランド化の経緯は?

    識者

     ― 2005年、アンコウの刺し網漁業の操業区域が拡大。主力品種キアンコウの生態解明に向け、県むつ水産事務所を中心とした放流調査を契機にブランド化が始まった。村のアンコウ水揚げは底引き網主体の八戸市に続き県内2位。

     「09年、放流調査の結果報告で研究者から『生きたままの水揚げは珍しい』という声が出たのでブランド化に着手しました。村内3漁協を軸に資源管理協議会が発足し、2キロ未満のアンコウは水揚げせず再放流することを決めました。また、漁協や県、村、研究機関、観光、流通、商工会、女性団体などで構成する『鮟鱇ブランド化戦略会議』が発足。鮟鱇まつり開催のほか、都内の老舗アンコウ料理店や全国の高級百貨店などへの流通を実現させ、高い評価を得ました。14年には地域団体商標として『風間浦鮟鱇』が登録されました」

  3. フクロウくん

    ●今後の課題は?

    識者

     ― 村の基幹産業となっている水産業の発展には、他の産地との差別化が不可欠になっている。

     「水産業の発展には、まず漁業や流通・加工業、観光業、行政など、地域の全員が主役となる枠組みを作ることが大切です。また研究機関などと連携してキアンコウの生態を解明し、資源管理を強化することも重要。さらに若い後継者を育成し、北海道新幹線開業や東京五輪なども視野に、世界一の高品質をアピールすることも課題です。地域団体商標の登録は、ゴールでなく始まりです」