階上町
  • いちご煮

  •  階上町と東奥日報社は25日、地域の食材にスポットを当てるイベント「食の味力発見in階上町」を同町小舟渡海岸で開いた。テーマは「いちご煮」。ウニとアワビが一緒になった県南地方の郷土料理いちご煮の試食を100人に振る舞った。
味に感動 祭りへ発展
  • 写真乳白色のスープにウニとアワビが入ったいちご煮を手にする平戸さん。朝もやのようなうしお汁に、野イチゴのようなウニとアワビが入っている
  • これが味力

    “元祖”いちご煮

    写真 県南地方を代表する郷土料理「いちご煮」。はしかみいちご煮祭りでは、800円のいちご煮とは別に、プレミアムバージョンの「元祖いちご煮」も販売されている。2日間で50食限定。2500円。うたい文句は「箸が立つほど具だくさん」で、白いうしお汁が見えないほど。本当に箸が立つのか一部ネットで話題に。

 「普段?食べないね。ぜいたくだから」。岩手との県境に近い階上町小舟渡(こみなと)地区の漁港。ウニとアワビの入った郷土料理「いちご煮」について、夫と漁具の手入れをしていた70代女性が気さくに話した。「東京の孫がお盆に遊びに来るときに食べているよ」。孫との再会が楽しみで、準備にも力が入るという。

 県内で最も早く日が昇る階上町。小舟渡地区ではウニの旬に合わせ、東日本大震災の年を除く毎年7月下旬に「はしかみいちご煮祭り」が開かれている。

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 「いちご煮は、お盆の8月14日の朝、赤飯などと仏壇に供えた後、集まった親戚で食べるんです」と語ったのは、同地区で老舗の水産商店を守る杉本智子さん。杉本さん方のいちご煮は具だくさん。生ウニが苦手な夫ですら「いちご煮はうまい。うちのはスープが見えないほど」と太鼓判を押す。店を通じ、八戸市生まれの芥川賞作家三浦哲郎も階上町のウニを愛したという。

 町のホームページによると、町内でいちご煮を味わえるのは5店舗。小舟渡漁港近くで民宿のほか、夏場に食堂も切り盛りする平戸翠さんは食材の値が張るため、仕入れには気を使うという。「高くて気軽に食べられないからこそ、きちんとした材料でおいしいものを出したい」。生ウニを使ったいちご煮のウニは、口の中でふわっと広がる食感が特長だ。

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 はしかみいちご煮祭りは2日間で、約4万人が来場する町最大のイベント。1986年に祭りを発案したのは当時、31歳の町職員だった。階上岳の登山口近くで育ち、いちご煮は名前すら知らなかったという。役場入りして初めて口にしたときの感激が忘れられず、後に祭りを計画。予算や関係団体の協力を想定以上に順調に得て、祭りを成功させた。

 その職員とは現在、副町長の沼沢範雄さん。「磯の香り、ウニの甘さ、アワビの歯応え、シソの風味…。町にこんなすごい料理があるとは」と感動を振り返る沼沢さん。来年30回目の節目を迎える祭りについて「住民や漁業者ら多くの人の支えで続いている。人口が減る中でも規模を見直しつつ、地域を活性化するおもてなしのイベントにしたい」と話している。

食の味力発見 in 階上町の会場から
  1. 写真

    豊かな自然 見に来て

    階上町役場職員
    磯谷 唯さん(26)

     振る舞いのいちご煮作りに参加しました。ウニとアワビ、シソ入りでとてもおいしくできたと思います。階上町は自然が豊かで、海も里も山も見どころがいっぱいです。食べ物もおいしいものがたくさんありますよ。いちご煮祭り以外でもぜひ遊びに来てください。
  2. 写真

    さっぱりした汁 魅力

    青森市八重田
    福村 昭美さん(64)

     いちご煮は缶詰のものは何度か食べたことがあるけど、本場で一度食べたいと思い、妻と2人でやって来ました。好きなウニに加え、アワビがとても軟らかく、ちょっと驚きました。もちろん、おいしい味です。汁もさっぱりしていて、良かったですね。
  3. 写真

    新鮮 とてもおいしい

    八戸市白銀町
    高橋清志さん(80)(左)
    ナツさん(70)

     夫婦一緒に、5年ぶりにいちご煮祭りに来ました。いちご煮は小さいころから食べていますが、きょうの一杯も磯の香りがあり、ウニ、アワビが新鮮でとてもおいしいです。郷土の料理が全国に広がり、みなさんに食べてもらえるようになればうれしいです。
いちご煮について聞きました
  • 荒谷 恵子さん(階上漁業協同組合女性部長)

    <あらや・けいこ 1948年、岩手県洋野町生まれ。2005年から現職。町内の各女性団体で構成している「臥牛の郷 生活研究連絡協議会」の会長も務めている>

  1. フクロウくん

    ●いちご煮の作り方は?

    有識者

     --いちご煮は漁師が冷えた体を温めながら、たき火で作ったのが始まりとも伝えられている。作り方はいたってシンプルだが、ウニやアワビの身が固くなってしまわないよう煮すぎないのがコツ。

     「いちご煮を作るにはまず、うしお汁を準備します。酒で味を調え、かつお節でダシをとることもあります。そのうしお汁に、新鮮なウニや薄く切ったアワビをそれぞれ金ザルごと鍋に入れて熱を通します。そしてウニやアワビを調理用バットに移して粗熱を除いた後、器に盛りつけ残ったうしお汁を注ぎシソをのせて完成。手際よく調理するのに、慣れるまで時間がかかるかもしれませんね」

     「いちご煮は日常的に口にする料理ではありませんが、昔から食べられています。今もお盆や正月、冠婚葬祭には欠かせません。仕出し料理にもほとんど、いちご煮が付いてきます。生ウニだと、ダシがよくとれ、口の中に磯の香りが広がります。ウニにはアワビのだしがよく合います」

  2. フクロウくん

    ●ハマの特長は?

    識者

     --階上漁協女性部は20年間、いちご煮祭りで、いちご煮の調理を担当。現在は、祭り会場で海藻の加工品などを販売している。

     「階上町沿岸はワカメやコンブなど海藻類が豊富。階上町でウニがよく採れるのは、ウニのエサとなる海藻に恵まれているから。ちなみに同じ階上町沿岸でも、フノリの形が違います。荒谷地区のフノリには枝分かれがありますが、小舟渡地区や大蛇地区は“一本フノリ”。値段や味は一緒ですが、見ただけですぐ分かります。アカバギンナンソウ(アカハタ)を蒸して酢味噌などで食べる『アカハタモチ』もおいしいですよ」

  3. フクロウくん

    ●今後の課題は?

    識者

     --いちご煮の食材となるアワビやウニ。貴重な海産物のため、漁協の各部会による稚貝の放流など資源管理が課題となっている。

     「東日本大震災以降、水揚げは震災前に戻りつつありますが、ハマに活気がない気がします。ただ、ハマの活気は町の活気。階上町は三陸復興国立公園に指定されました。美しい海岸線などの自然や、魚介やソバ、オカヒジキなど山海の幸もたくさんあります。漁師の放流したウニやアワビが密漁されないか監視が課題ですが、ぜひ多くの人に訪れてほしいですね」