五戸町
  • 馬肉

  •  五戸町と東奥日報社は5日、地域の食材にスポットを当てるイベント「食の味力発見in五戸町」を同町商工会駐車場で開いた。テーマは「馬肉」。馬肉や野菜などをみそ仕立てで煮込んだ「桜鍋」を先着200人に振る舞った。
滋養の食文化 後世に
  • 写真「たくさんの人に自慢の馬肉を味わってほしい」と話す千代子さん=尾形精肉店
  • これが味力

    桜鍋

    写真 馬肉料理の代表格と言えば「桜鍋」。南部地方の郷土料理で、季節を問わず一番の人気メニューだ。県の「食の文化伝承店」に認定されている尾形の桜鍋は、馬肉、長ネギ、キャベツ、豆腐などを地元産の大豆を使った自家製のみそで煮込み、創業当時の味をそのまま受け継ぐ。インターネット販売も行っている。

 坂のまち、サッカーのまち、桜肉(馬肉)のまち-“3S”の町として知られる五戸。その中の一つ、「馬肉」は町イチ押しの特産品だ。別名「桜肉」とも呼ばれ、諸説あるが、「桜が咲く季節に一番おいしく味わえる」「馬肉の赤身が桜の色を連想させる」などの説に由来している。

 五戸は、南部藩が軍馬育成のために設置した九つの戸の一つとも言われている。この地区にはかつて、数多くの牧場が点在し、人よりも馬の数が上回っていた時代もあったという。また、五戸の“戸”は牧場を表し、一戸から九戸の地名は、馬牧経営に関係するという説も。人と馬との結び付きが強い地域であることがうかがえる。

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 馬肉は、栄養価が高く、藩政時代前から滋養の食材として庶民に愛されてきた。町では家庭で馬肉を食べるのが一般的でなじみの深い食材となっている。

 町内には3軒の馬肉専門店があり、食通をうならせている。「クセがなくておいしい」「脂身が少なくて食べやすい」「また食べたくなる味」-馬肉を食した客はそう絶賛して帰って行くという。

 人気のメニューは、馬肉と野菜を自家製のみそで煮込んだ「桜鍋」と「馬刺し」。三浦正名五戸町長は「全国にも馬肉の特産地はあるが、食べた人は一様に『五戸の馬肉はおいしい』と言ってくれる。特に桜鍋は絶品で、いろんな部位の馬刺しが味わえるのは産地ならでは」と話し、「これからも馬肉を一つの柱にして町をPRしていきたい」と意欲を見せる。5日は町で初めてとなる「全国馬肉サミット」が開催され、馬肉になじみがある地域の関係者が集って、馬肉の食文化に理解を深めた。

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 馬肉専門店の一つ、同町に本店を構える「尾形精肉店」は1947年の創業。開店と同時に町内外から常連客らがひっきりなしにやって来る人気の老舗だ。同店3代目の尾形恵司郎さん(55)は「馬肉を食べたお客さんが喜んでくれるのが一番。おいしく食べてもらえるように頑張らなきゃって力が入るね」と笑顔を見せる。

 肉質の良さに加え、馬肉料理の品数の多さが同店の売りだ。店を切り盛りするのは尾形さんの妻で女将の千代子さん(54)。店を訪れる客は年配者の割合が多く、若年層の馬肉食離れが気に掛かるという。「若い世代にも、もっと馬肉を食べてほしいですね。専門店として、馬肉の食文化をこれからもしっかりと守り続けていきたいです」と力を込める。

来場者の声
  1. 写真

    五戸が誇る郷土料理

    東京都葛飾区
    村上 麻美さん(27)

     五戸町は私の地元。五戸が大好きで、まつりのたびに帰省しています。馬肉は学校の給食にも出ていたほど、町民に浸透している食材です。桜鍋は自慢の郷土料理の一つで、ご飯が進む一品。馬肉になじみのない地方の人にも、ぜひ一度味わってほしいですね。
  2. 写真

    具材とみそ味マッチ

    八戸市白銀町
    日向 豪史さん(48)

     開催中の五戸まつりを見に来て「食」イベントに立ち寄りました。八戸市を含むこの地方では「馬肉と言えば五戸」というのが常識です。振る舞いとはいえ量がたっぷり。もちろん、とてもおいしい。みそ味が馬肉や野菜など具材ととてもマッチしています。
  3. 写真

    わが家の桜鍋も評判

    五戸町下タノ沢頭
    三浦 和夫さん(76)

     馬肉は、親せきや息子の家に遊びに行ったとき、よく一緒に煮て食べます。今回振る舞われた桜鍋と同じく、わが家の味付けもみそ仕立てで評判がいい。昔は馬肉を農家のまかないとして、田んぼでも煮て食べました。残った煮汁にせんべいを入れてもうまかったなあ。
馬肉について聞きました
  • 鳥谷部恵里子さん(五戸町企画振興課地域おこし協力隊)

    <とりやべ・えりこ 1987年、五戸町生まれ。山形県の東北芸術工科大学を卒業後、同県で木版画家や消しゴムはんこ作家として活動。生まれ育った地元に貢献したいとの思いから、2015年4月、五戸町地域おこし協力隊員に就任>

  1. フクロウくん

    町と馬との関わりは?

    有識者

     --馬と共に歩んできた五戸町の歴史は古い。町の至る所に馬をまつった神社や馬霊碑などが点在し、人と馬との結びつきの深さを感じさせる。

     「五戸町は藩政時代から良馬の産地として発展してきました。奥州街道の宿場町だった五戸町は交通の要衝として栄え、博労(馬の仲買人)が数多く集まる場所でした。今も町には宿場町としての面影が残っています」

     「昔の人々にとって馬は兵力や移動手段、農耕馬として生活に欠かせないものでした。また、当時の人々は、同じ屋根の下に馬と暮らし、家族の一員として馬を丁重に扱っていたと言います。馬に感謝する精神は今でもしっかりと町民に受け継がれています」

  2. フクロウくん

    馬肉の特徴、魅力とは?

    識者

     --栄養価が高い馬肉は、昔から滋養の食材として親しまれてきた。

     「クセがなく食べやすさが特徴の馬肉は、高タンパク質で低カロリー、低脂肪、低コレステロール、食べても太りにくいことからヘルシーな肉として人気があります。さらに、鉄分やグリコーゲンが豊富に含まれているので、肝臓や貧血に良いとされ、健康食品としても注目されています」

     「町内には、尾形、ささ木、たかはしの3軒の馬肉専門店があり、各店それぞれに秘伝の味があります。人気の馬刺しは、クセがなくとろける食感がたまりません。何度食べてもまた食べたくなるのが馬肉の魅力です」

  3. フクロウくん

    これからの課題は?

    識者

     --地域おこし協力隊として、町の魅力を町内外に発信している鳥谷部さん。馬肉を食す文化になじみのない地域の人や若者は馬肉を忌避する傾向が強いという。

     「馬肉は五戸の家庭料理として普通に食卓に上がる食材です。それを町外の人に紹介すると『馬を食べるの?』と驚かれることがあります。馬との関わりが薄れていく現代において、馬と歩んできた歴史や文化を後世に語り継いでいかなければいけないと強く感じます」 「地元とはいえ、知らないことばかり。日々勉強です。馬肉になじみのない地方の人にもぜひ味わってほしいです。食べてみれば、おいしさが分かるはず。若い人たちにも馬肉を食べてもらって五戸の魅力を感じてほしいです」