鯵ケ沢町
  • ハタハタ

  •  鯵ケ沢町と東奥日報社は5日、地域の食材にスポットを当てるイベント「食の味力発見in鯵ケ沢町」を「海の駅わんど」で開いた。テーマは「ハタハタ」。捕れたての新鮮なハタハタをしょうゆ仕立てで煮込んだ「ハタハタ鍋」を先着100人に振る舞った。
愛され続ける郷土食材
  • 写真いよいよ本格化した本県西海岸の冬の風物詩ハタハタ漁。豊漁への期待を込め浜が活気づく=11月29日深夜、鯵ケ沢町の鯵ケ沢漁港
  • これが味力

    ハタハタ鍋

    写真 町を代表する郷土料理で、旬を迎えると地元ではどの家庭でも食される定番料理。ハタハタのほかにネギや豆腐などを入れて煮込む。味付けは、しょうゆが主流だが、みそで煮込む家庭も。ハタハタを丸ごと入れるのでうま味成分がたっぷり。一番おいしく味わえるこの時季にぜひ食べてほしい一品。

 「ハタハタは地元のソウルフード。これを食べないと冬を越せない」-そう話すのは、鯵ケ沢町で捕れた魚を扱う海産物問屋「滝和商店」社長の滝渕英一さん。地元では子どもの頃から冬によく食べているという。「地元の人はみんなハタハタが大好き。嫌いな人はいないんだ」と教えてくれた。それほどまでに地元から愛されているハタハタ。冬の訪れを告げる魚として知られ、11月下旬~12月に産卵のため大群で浅海にやってくる。県内一の漁獲量を誇る鯵ケ沢町は、旬を迎えると一気に活気付き、ハタハタの臨時販売所が町中心部の街道沿いに軒を連ねる。町内外からハタハタを求める買い物客らが押し寄せ渋滞ができるほどだという。

 漁業の町として発展してきた同町だが、漁獲量は減少傾向で、資源量不足が危惧されている。そのため現在、ハタハタが産卵するための藻場づくりや、海岸に打ち上げられた卵を蓄養して海に帰す取り組みなど、育てる漁業にも力を入れている。資源保護の取り組みが功を奏し、近年は豊漁が続いている。

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 ハタハタは時価で変動があるため、「大衆魚」にも「高級魚」にもなる。同町農林水産課の長内吉昭さんは「ハタハタが捕れず、高くて買えない年もあった」と過去の不漁期を振り返る。一方で、魚価低迷などによる漁業就業者の減少も喫緊の課題となっている。長内さんは「ハタハタが安定して高値で取引されるように保存が利く加工分野にも目を向け、鯵ケ沢ブランドの一つとして他県にも広められるよう創意工夫を凝らしたい」と意欲を見せる。

 副業で飲食店「地魚屋たきわ」を営む滝渕さんは「地元だからこそ捕れたてのハタハタが食べられる。とにかく鮮度がいい。旬のときに地元で食べるのが一番」と誇らしげだ。

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 ハタハタは、鉄分や生活習慣病の予防・改善に役立つとされる不飽和脂肪酸EPAとDHAを豊富に含み、煮付け、鍋、田楽、一夜干しの塩焼きなど多彩な食べ方が楽しめる。

 漁港が目の前という恵まれた場所に店を構える「割烹 水天閣」は、地魚を使った豊富なメニューが売りの人気店。店主の中村正さんは「鯵ケ沢産のハタハタは身が締まり味が濃いのが特徴。くせがないのでいくらでも食べられます」とおいしさに太鼓判。「おすすめの食べ方は握りずし。鮮魚をおろして酢で締めるとびっくりするくらいおいしくて病みつきになりますよ。旬の時季は県内のスーパーにも流通するのでぜひ、鯵ケ沢産のハタハタを食べてみて」とPRする。

来場者の声
  1. 写真

    「鯵ケ沢の味」PRを

    鯵ケ沢町赤石水産漁協女性部副部長
    太田 ツル子さん

     振る舞いイベントでハタハタ鍋作りを担当。今季の魚体はまずまず、味は例年以上です。ハタハタは鍋以外に田楽、塩焼き、飯ずしなどいろいろな食べ方があって、どれも絶品。昔から親しまれてきたハタハタを「鯵ケ沢の味」として売り込んで行きたいですね。
  2. 写真

    漁師の味 食べやすい

    五所川原市広田
    工藤 潤也さん、母・昭子さん

     新聞でイベントを知り会場に来ました。鯵ケ沢はイカや魚介類、野菜、スイカ、メロンなどおいしいものがたくさんあり、よく買いに来ます。(振る舞いの)ハタハタ鍋は、漁師の味でとてもおいしい。ハタハタが新鮮で、身があっさりとしていて食べやすいです。
  3. 写真

    初体験の鍋おいしい

    札幌市清田区
    三盃 あや子さん

     藤崎町常盤の実家に帰省したついでに、鯵ケ沢まで足を延ばしました。ハタハタは好きでよく食べますが鍋は初めて。普段は、しょうゆを混ぜたみそに一晩漬け込み、みそを落としてから焼いて食べます。振る舞いの鍋はハタハタの卵も入っていておいしいですね。
ハタハタについて聞きました
  • 吉田勝則さん(鯵ケ沢漁業協同組合総務課長)

     <よしだ・かつのり 1959年、鯵ケ沢町生まれ。漁師である父の影響を受け自らも漁業に携わる仕事がしたいと、鯵ケ沢高校卒業後の1977年4月、鯵ケ沢漁業協同組合に就職。2012年から現職>

  1. フクロウくん

    どんな魚ですか?

    有識者

    --産卵のために11月下旬~12月頃、浅海に大群でやってくるハタハタ。水深200~400メートルの砂泥底に生息する深海魚で、この季節日本海側では雷が鳴ることが多いことから別名「カミナリ魚」とも呼ばれている。

     「冬を象徴する魚です。全長20センチ前後の比較的小ぶりな魚で、ウロコがないため調理も手間いらず。小骨も少ないのでとても食べやすい魚です。淡泊でクセがないハタハタは、塩焼きや田楽、鍋、飯ずし、唐揚げなど、何でもおいしく味わえます。粘り気と濃厚なうま味がたまらないハタハタの卵も人気です。旬の時季は、“刺し身”がおすすめ。新鮮なものが手に入る地元ならではの食べ方で、今だけ味わえるぜいたくな逸品です」

  2. フクロウくん

    最近の漁の状況は?

    識者

    --本県日本海沿岸のハタハタ漁の昨冬の水揚げ量は、約727トンと2年連続で豊漁となった。そのうち鯵ケ沢町の漁獲量は482トンで県全体の約66%を占めている。

     「近年の水揚げは好調です。しかし、乱獲などの影響で1970年代後半頃から、20年以上不漁が続いていました。禁漁期間の設定や藻場づくりなど、積極的な資源保護の取り組みによって、徐々に回復の兆しを見せています。現在は浜に打ち上げられたブリコ(ハタハタの卵)や15センチ未満のハタハタの採捕が禁止されており、ハタハタを根絶させないための取り組みが続いています」

  3. フクロウくん

    今後の課題は?

    識者

    --減少しつつある日本海北部系群のハタハタ資源量に加え、漁業者の経営安定も喫緊の課題となっている。

     「豊漁はとてもうれしいことですが、漁獲量が多くても価格は低く、『燃油高』や『魚価低迷』で漁業経営は厳しい状況が続いています。漁師の苦労が報われる価格で取引されるように何か付加価値を付けて価格を上げる工夫をしていかなければ、漁師の数は今後どんどん減ってしまいます。加えて、漁獲量の安定確保に向けた資源保持や育成を進める取り組みは今後も強化していかなければなりません」

     「旬の時季は漁港が騒がしくなり町が一番活気にあふれるとき。脂が乗って今が一番おいしい鯵ケ沢のハタハタをぜひ、多くの人に味わってもらいたいですね」