2012年2月29日(水) 東奥日報  

田邊優貴子の南極だより Part2

■ 最高の昼食/壮大な自然に囲まれて

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湖と氷床をのぞみながら昼食をとる筆者
 
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いつもの昼食
 
 野外に滞在し始めてからはや1カ月。日々、さまざまな湖の調査に駆け回っている。晴れた日、調査の合間に美しい湖と、向こう側にそびえ立つ真っ白な大陸氷床をながめながらとる昼食は最高です。昼食はだいたい、パンやクッキー、カロリーメイトの類い、温かい紅茶とねぶたラベルの美味しいりんごジュース…というメニュー。

 荒々しい赤茶けた大地に、神秘的な水色の湖、晴れ上がった眩(まぶ)しい青空と白い氷床のコントラスト。聞こえるのは水がわずかに流れる心地よい音と、時折遠くのほうで崩れる氷河の音。

 この果てしない空間の広がりと恐ろしいほどの無音の世界は、いくら写真や映像に撮っても、どんな言葉を使っても表現しきれない、伝えられません。そしてそれが悔しくもあり、しかしその半面、他の何にも置換することのできないものに出会えたこと、その瞬間に自分が立っていることが本当に嬉(うれ)しくて、叫びだしたいような衝動に駆られるのです。

 1月21日の夜、ついに太陽が沈みました。これでもう、白夜は終わり。

 南極の日没は日本で目にするのとは全く違う光景です。日本で夕暮れを見ていると、まさに落日といった様子で、太陽は地平線や水平線にストンと落ちるように早く沈んでいきますが、南極では大陸氷床の向こうへ、ゆっくりとゆっくりと転がるように消えていくのです。いつまでたってもなかなか沈んでくれません。

 あんなにも一日中、太陽が空を回り続けていたのに、地平線に隠れ、消えてしまうと、なんとも寂しい気分になります。しかし、それと同時に、活発だった心が少し落ち着きを取り戻し始めたような気持ちにもなります。

 南極に、もうすぐ暗い夜がやって来ます。

(2012年1月28日、 スカルブスネスにて)




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