2000年7月14日(金) 東奥日報 連載




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  −検証・むつ小川原−


第5部・“脱”誘致型開発 

■ 岩手県 − IT化へ通信網構築(2000.7.14)

写真  光ファイバー専用回線で岩手県内の行政機関、病院、大学など三十カ所をつなぎ高度情報通信網を構築する「いわて情報ハイウェイ」事業が今秋始まる。総延長約七百キロは国内でも最大規模だ。

 「モノやヒトを運ぶ道路や鉄道はある程度、形が出来上がったが、今一番めまぐるしく変化しているのは情報の流れだ。情報をいかに早くキャッチし、いかに的確に発信するかが地域間競争を制する。県費の持ち出しが多少増えても基盤整備に早く着手した方がいいと判断した」

総延長は約700キロ

 増田寛也岩手県知事(48)は情報ハイウェイの狙いをこう語る。県勢発展のキーワードに「情報」を掲げる増田知事の、ハコモノ行政とは一線を画した目玉事業だ。光ファイバーは、現在の電話回線に使われている銅線に比べて大量の情報を送ることができる。総延長は東北縦貫自動車道の東京−青森間(六百九十八キロ)と同規模。災害事故で通信回線が切断されても、う回路が確保できるよう「8」の字型に張り巡らせる。

 情報ハイウェイは緊急性・公共性の高い医療・防災・教育から役立てていく。岩手山噴火に備えて災害現場の映像配信、学校と総合教育センターとを接続することによる学校交流ネット、遠隔医療を想定している。県庁と各地方振興局(出先機関)を結んだテレビ会議や市町村との行政情報の共有化も行う。今秋から県庁を軸に接続・運用を始め、来年度から本格運用に入る。

 とりわけ、医療水準向上への期待は大きい。県の面積が四国に匹敵する岩手県内にある県立病院の数は二十七と全国一だが、専門医不足という悩みがある。

 「岩手医科大学や県立中央病院とその他の県立病院をつなぎ、エックス線画像やCT画像などを伝送して専門医と現場の医師が相談し合える環境を整えたい」(岩手県情報科学課)

 情報ハイウェイの予算は平成十一年度からの二カ年で総額十八億円。光ファイバーの敷設はNTTの事業だが、音声や動画、高精細画像などの双方向通信を可能にするATM(非同期転送モード)交換装置、テレビ会議システム、各種情報端末を設置する。

 首都圏を中心に整備を進めているNTTの事業計画の進ちょくを待っていたのでは地方は後回しになり、中央と地方の情報格差はますます広がりかねない。岩手県は郵政省やNTTに情報ハイウェイ計画を提示し、岩手県内の光ファイバーの敷設を優先的に進めるように働き掛けた。

 本県と同様、岩手県も建設業従業者が全産業に占める比率が一二%台で、全国平均の九・二%を大きく上回っている。岩手県が情報ハイウェイの構築を急ぐのは、IT(情報技術)化が公共事業依存型経済からの脱却への起爆剤になりうる可能性を秘めているからだ。既存の商工業者を含め、立地企業や起業家にも広く情報ハイウェイの利用を呼び掛け、新産業創出を支援していく。

 「公共事業はこれからも続くとは思うが、無限に道路を造り続けることはあり得ない。行政は世の中の流れをとらえ、いち早く対策を打ち出すことが必要。情報ネットワークの整備によって新たなビジネスチャンスを生み出し、公共事業に頼っている雇用をいくらかでも吸収していきたい」と増田知事。

「プロローグ」と知事

 同知事にとって、情報ハイウェイ二カ年計画は「プロローグみたいなもの」にすぎないという。七百キロの基幹回線網を整備した後は、県民一人ひとりが次世代携帯電話で基幹回線網に接続できるようにする。今年四月、増田知事は携帯電話普及率が七〇%と世界一のIT立国フィンランドを視察した。NTTドコモ東北との勉強会も始めた。過疎地で気候的には厳しいものの、高度情報化社会により豊かな生活を実現−。岩手県はこんな北欧型の「モバイル立県」に向けて走り出した。

=第5部終わり=


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