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    ~3000歩の旅~
    弘前市和徳町
  • 人の温かい歴史ある街

 かつて弘前市の玄関口の一つとして問屋が立ち並び、大いに栄えた和徳町。9月下旬、堅田1丁目との境の交差点から、羽州街道を南下した。(三浦康平)

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▼667歩
写真和徳町の精神的中心地といえる和徳稲荷神社=地図(1)

 和徳稲荷神社の鳥居をくぐると、街道の喧噪(けんそう)が不意に遠くなった。戦国時代、大浦(津軽)為信に滅ぼされた和徳城の防衛拠点があったとされる場所だ。山邊悠一社司(78)によると「江戸で大火が起こった際(同神社の)大神の化身が当時の藩主を助けたという伝説がある。参勤交代の際は藩主が立ち寄り参拝した」。周辺地域に多くの氏子を抱え、6月には宵宮祭でにぎわう。今も昔も、地域の精神的な中心地。本堂の前にたたずむと神妙な思いに包まれる。一礼し、街道に戻った。

▼1101歩
写真伝統の津軽そばと、店主の黒沼さん=地図(2)

 和徳町には、歴史を重ねた店が数多い。空腹を覚えて立ち寄った三忠食堂は、創業100年超の老舗。小説「津軽百年食堂」や映画のロケ地としても有名だ。代々守り伝えられてきた津軽そばを「いただきまーす」。スッと腹に入る、あっさりした味わい。これが100年変わらない味か。県内外から多くの客が訪れるが、店主の黒沼三千男さん(67)は「地元の人に愛される店でなければ」と強調する。「これからも味を変えず続けていく。変えちゃうと今までのお客さんが離れていっちゃうよ」

▼1445歩
写真羽州街道の一角にたたずむニシムラ模型の店舗=地図(3)

 親子2代で「ニシムラ模型」を守る西村安弘店長に話を聞く。「今の客層は、子どもよりも30歳代を過ぎた大人が多いですね」。確かに、プラモデルやモデルガン、ミニ四駆に囲まれて40代の記者の童心がうずく。気がつくと30年も前に初めて作ったのと同じ「シャア専用ザク」のプラモデルを購入していた。

▼2295歩
写真弘前読書人倶楽部の鳴海さん。蔵書のジャンルは広範囲だが、特に太宰治の評論関係が充実している=地図(4)

 和徳小学校の児童らの歓声を遠く聞きつつ、交差点を西へ。やがて交通量の激しい往来の中に「弘前読書人倶楽部」の建物が見えた。会員制図書館で、蔵書は6千冊。「読書しながらコーヒーやワインを味わったり、会員同士で交流ができる空間」と今泉昌一幹事(61)。田中久元幹事(59)は「サロンのように楽しむことで、新しいものが生まれてくれば」と話す。会計の鳴海美矢子さん(67)に特別にコーヒーをごちそうになり、本に囲まれて香りを楽しむ。

▼2828歩
写真「弘前一中は、みんなが『ジェントルマンシップ』を持っている」と話す三浦さん(右)と佐藤さん=地図(5)

 土淵川のせせらぎに耳を傾けつつ川沿いを散策し、弘前一中の北門に到着。そういえば地元の若者は、地元の未来をどう思っているのだろう。三浦明日香さん(3年)は「食べ物や神社を、ちゃんと伝統として受け継いでほしい」、佐藤鈴(すず)さん(同)は「けの汁などを、海外からの観光客などいろんな人に知ってほしい」と、ハキハキと話した。

 道程で出会った地元住民の中には「昔は栄えていたけど、今はすっかり…」と寂しげに言う人もいた。しかし、未来への希望にあふれる2人の声を聞き、下校途中の生徒たちの笑顔を見ていると、和徳町の将来に明るいものを感じずにはいられない。