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    ~4000歩の旅~
    風間浦村下風呂地区
  • 津軽海峡望む温泉郷

 文豪・井上靖が訪れたことでも知られる風間浦村の下風呂温泉郷では浜湯、新湯、大湯の三つの源泉が楽しめる。5月中旬のある日、青空の下、風呂道具を片手に下風呂地区を歩いた。(加藤彩美)

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▼509歩
写真「気持ちよく使ってほしいから」と足湯の掃除に精を出す角谷さん=地図(1)

 国道279号沿いに立つ温泉郷の看板から散策をスタート。硫黄のにおいを感じながら歩くこと10分ほどで鉄道アーチ橋の足湯(源泉・浜湯)が見えてくる。「下風呂温泉おかみの会」の6人が清掃奉仕中だった。かどや旅館のおかみ・角谷マサコさん(69)は「足湯ができた10年ほど前は私たちも若かったが、今では掃除は重労働。でも自慢の温泉だからね」と掃除に精を出す。浜湯は天気で湯の色が乳白色や透明、黒、グリーンと変わるそうで、この日は白色。足を入れると人肌のお湯が心地よくいつまでも漬かっていたい。

▼1173歩
写真海峡いさりび公園で見つけたさい銭筒=地図(2)

 足湯から見えた下風呂漁港隣の海峡いさりび公園へ歩を進めると、気になるものを発見。公園内にある恵比須神社の鳥居に人の顔が描かれた筒がくくり付けられている。さい銭箱ならぬさい銭筒の文字があるので、5円玉を入れ「ご縁がありますように」。

▼1713歩
写真下風呂漁港で出会った16歳の漁師・山本雄貴さん=地図(3)

 続いて下風呂漁港に立ち寄るとイカ釣り漁船にペンキを塗る若者の姿が。第21龍神丸(佐賀耕一船長)の乗組員・山本雄貴さん(16)は、兄の勝さん(20)の背中を追い、大間中学校卒業と同時に漁師になって2年目。数日後に新潟に出漁するといい、「大漁を狙ってきます」と意気込んだ。

▼3002歩
写真共同浴場「新湯」の番台を務める中島さん=地図(4)

 国道279号を歩き再び温泉郷へ向かう。共同浴場「新湯」で汗を流そう。地元の常連の世間話に耳を傾けつつ浴槽に静かに身を沈める。熱めだがやわらかいお湯にじんわりと疲れが抜けていく。風呂上がりに番台にいた中島真利子さん(64)に話し掛けると、「この風呂に入れば疲れがとれる。それが何とも言えない」と人気の秘密を語った。

▼3225歩
写真「名前の由来は調べているところ」と話す自由寺の住職・山口さん=地図(5)

 来た道を戻り、名前が気になる「自由寺」へ。住職の山口勇吾さん(41)に名前の由来を尋ねると、「住職が約16年不在だった寺に昨年1月に来たばかり。書物がほとんど残っておらず、調べているところ」だという。

▼3278歩
写真海の幸や山菜をふんだんに使ったお膳を手にするおかみの長谷さん=地図(6)

 風呂上がりのビールが飲みたくなったので、まるほん旅館(源泉・大湯)に泊まることに。津軽海峡を望む客室に通され、気分は井上靖だ。おかみの長谷雅恵さん(58)が「こんな大きなウニはなかなか見ないでしょ」と、お膳を運んで来る。海の幸や山菜をふんだんに使った料理と冷えたビールが体にしみる。

 食後、旅館に下宿中の京都大学大学院修士課程2年の島田有紗さん(23)が部屋を訪ねて来た。島田さんは「宗教人類学が専門で、下北に残るさまざまな信仰を調べています」と興味深い話を次々披露。楽しいおしゃべりで夜が更けていく。