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    ~6000歩の旅~
    八戸市南郷地区
  • 人の温かさしみる里

 今年、八戸市との合併10周年を迎えた旧南郷村地区。夏はジャズフェスティバルでにぎわったが、山々は今、すっかり紅葉に染まり、冬の気配すら感じさせる。平日の昼下がり、フェスティバル会場・カッコーの森エコーランド屋外ステージ隣の道の駅なんごうで歩数計のスイッチを入れた。(漆舘卓海)

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▼142歩
写真串餅を焼く市沢さん=地図(1)

 道の駅から徒歩2分。香ばしいみその匂いが漂ってきた。プレハブ小屋の店舗で、市沢ミコさん(75)が甘いみそを塗った串餅を炭火で焼いている。「小さいころ、きょうだい8人で串餅をよく分け合った。将来はこれで商売しようと思ったね」とミコさん。取材中もひっきりなしに客が訪れ、店を手伝う長男の幸夫さん(52)と長女・いつ子さんが笑顔で熱々の餅を手渡す。ミコさんは「いいお客さんばかり。命ある限り続けたい」と笑った。

▼648歩
写真大の仲良しである古舘さん(右)と岡沼さん=地図(2)

 焼きたての串餅を食べ、南郷事務所前の交差点を右折。国道340号沿いにスーパーや各種商店が並ぶ南郷の中心部・市野沢の商店街を歩く。間もなく、洋服店前で岡沼トメさん(82)と古舘フミさん(83)に出会った。20代のころ畑仕事で知り合った2人は「いつも一緒だから、よその人は双子に見えるって」(古舘さん)、「何があっても離れない」(岡沼さん)と話すほど大の仲良し。この日も同じ洋服を買ったそうで、11月の老人クラブの旅行を楽しみにしていた。

▼3440歩
写真乾燥させた葉タバコを選別する久保さん夫妻=地図(3)

 商店街が途切れたY字路を右へ。のどかに木漏れ日が差す市道は、歩けど歩けど人影が見えない。途中、十字路交差点を勘に頼って左折。日が傾き始めた狐久保集落で、ようやく人の声が聞こえた。作業小屋で葉タバコ農家の久保悦子さん(71)と夫の清四郎さん(73)が、乾燥させた葉タバコの色合いやカビの有無を見極め一枚一枚選別していた。清四郎さんは「人の口に入るもの。いい加減にはできないよ」。

▼5128歩
写真ガソリンスタンドの(右から)坂本さん、寺澤さん、川村さん=地図(4)

 悦子さんに市野沢への近道を教えてもらい、夕暮れの山道を足早に進む。Y字路に戻り、近くのガソリンスタンドを訪ねた。店員の川村洋二郎さん(60)と寺澤芙美佳さん(20)=南部町=が次々と来る車に給油する。八戸市の面積の約3分の1を占めながら南郷地区には現在、スタンドはわずか2店しかない。店員の坂本秀光さん(55)によると、最も近い店でも13キロ離れており、主に地元農家や国道を通る大型車が利用する。坂本さんは「決して経営は楽ではないが、大切な地域の店。つぶせない」と力を込めた。

▼5610歩
写真下校中だった大畑君(左)と袴田君=地図(5)

 最初の交差点まで戻ると、コンビニ前で八戸北高校南郷校舎の袴田康貴君(2年)と大畑紘基君(同)が迎えを待っていた。将来の夢を尋ねたら、袴田君は「公務員かな」、大畑君は「まだ探し中です」とはにかんだ。

 

 国道を流れる車のヘッドライトが明るさを増し、風は冷たい。その分、夏以上に人の温かさを感じた一日だった。