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    ~5000歩の旅~
    佐井村
  • 海と生きる漁師町

 鼻先をくすぐる潮風が心地いい。本州最北にも遅い春がやってきた。かつて北前船交易で栄え、津軽海峡の豊かな海の幸で知られる佐井村。4月下旬、海と生きる漁師町を訪ねた。(都築理)

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▼518歩
写真ウニの殻を割り身を取り出す福田さん=地図(1)

 村役場を出発。漁港に向かって坂を下ると、小さな漁師小屋が立ち並んでいる。小屋で福田博(ひろむ)さん(59)がウニむき作業に打ち込んでいた。

 早朝から船を出して水揚げしたウニの殻を一つずつ割り、丁寧に身を取り出す。「ひとつ食べてみて」。渡されたスプーンで黄色い身を口に運ぶと、口の中に濃厚な磯の味が広がった。「どうだい?コンブをたくさん食べてるから、佐井のウニは甘いんだ」と胸を張った。春を告げるウニ漁は4月1日に始まり、これから漁本番を迎える。

▼1563歩
写真仏ケ浦観光船の乗組員ら=地図(2)

 海沿いを東へ歩く。村の観光拠点「津軽海峡文化館アルサス」が見えてきた。とんがり屋根の向こうに、名勝・仏ケ浦への観光船が発着する岸壁がある。

 「サイライト号」を操る木下貴人さん(43)はガイド歴10年。「お客さんが多い夏に比べると春の仏ケ浦は静か。その分、絶景を独占できるんだ。今は山桜、これからは新緑がきれいだよ」とPR。

▼1911歩
写真新鳥居の設置作業を進めていた渋谷さん(右)と樋口さん=地図(3)

 創建320年を迎える「箭根森(やのねもり)八幡宮」の参道では、新たな大鳥居設置作業の真っ最中。「後世に残るものだから、まで(丁寧)にやらないと」。建設会社の渋谷三佐男さん(66)の言葉に力がこもる。

 総代長の樋口忠毅さん(78)が1966年の旧鳥居建立時の写真を見せてくれた。若き日の父忠義さんの姿が見える。当時に比べると村の人口が減り、建立費用の捻出も大変だったようだ。それでも「在京村人会の寄付もあり、立派な新鳥居を建てることができそう」と表情は明るい。

 9月には真新しい鳥居の下、例大祭が執り行われる。京都・祇園祭の流れをくむとされる山車祭りだ。

▼3084歩
写真夕日を受けながら、東出君(右)、福田さんの話は弾んだ=地図(4)

 海峡に日が傾く。海や街並みが、木々や草花が、黄金色に染まっていく。佐井中学校2年の東出港(こう)君(13)、1年の福田知子さん(12)が、定番の夕日スポットに案内してくれた。臨港大橋の近く。沈む太陽が、海面に鮮やかな光の帯を輝かせた。

 よいしょ、と堤防に腰をかけると、話が弾んだ。東出君は野球部、福田さんは陸上部に所属。「部活で疲れていても、きれいな夕日を見ると気持ちが和むんだよね」「わかるー」。

▼4823歩
写真海の幸づくしの料理を提供する宮野さん(中)らスタッフ=地図(5)

 夕食を予約していた「民宿みやの」へ。ヤリイカの刺し身、ソイの煮付け、生ウニ、岩ノリとワカメのあえ物など、地元食材をふんだんに使った郷土料理がテーブルにずらり。1泊2食で6千円とは思えないボリュームで、県内外からリピーター客が絶えない。

 「漁協も役場も、佐井のおいしい魚を売り込もうと頑張っているから、うちも張り切っちゃうのよ」とおかみの宮野蘭子さん(71)。佐井の「旬」を味わい尽くすと、おなかいっぱいで動けなくなった。