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    ~5000歩の旅~
    青森・油川
  • 海と老舗と人情と

 今月初旬。気温13度と春めく青森市油川。潮の香りを思い切り吸い込んで、JR油川駅を出発。かつて大浜と呼ばれ、外ケ浜一帯の最大の港として栄えた、由緒ある町を歩いた。(松田啓志)

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▼659歩
写真海辺で遊ぶ三浦さん(右)と大橋さん=地図(1)

 潮風に誘われ、国道280号を南へ。左に曲がると、目の前に海水浴場が開けてきた。風が冷たい。だが乙女は元気いっぱい。青森西中時代の友達同士、三浦夏女(なつめ)さん(16)と大橋美月(みづき)さん(16)がはしゃいでいた。「やっぱ海っていい」。2人とも現在彼氏募集中。「今度は一緒に来たいな」と笑った。

 少し離れた場所には、油川中時代の友人同士で現在高校3年生の工藤愛李(あいり)さん(17)と小向芽生(めい)さん(17)が、並んで座っておしゃべりに夢中だった。集まる場所はいつもこの海辺。「何か落ち着くんだよね」と顔を見合わせ、うなずいた。

 近くをぶらぶら。ランチをやっていた居酒屋「番屋」に入ってみた。渡辺史子さん(39)が6年前に開き、今や人気店に。「油川って皆人情深くて、一つの家族みたい。あったかいんだから」と実感を込めて話した。

▼2790歩
写真漁具の手入れを行う佐藤さん(右)と工藤さん=地図(2)

 細い路地を10分ほど南東へと歩く。ドッ、ドッ、ドッ…。漁船のエンジン音がハマにこだまする。ホタテの養殖に携わる佐藤利也さん(46)と工藤雄市さん(46)が、漁具の手入れを行っていた。

 5年前、陸奥湾の高水温による大量へい死が記憶に新しい。「漁獲量はあれから少しずつ上向き、回復の兆しを見せている」と佐藤さん。「今年こそ、期待しているんだ」。油川小中学校の同級生は息ぴったり、声をそろえた。

▼3280歩
写真自慢の焼き菓子を手にする北谷節子さん(左)と百合子さん=地図(3)

 再び国道に出てみた。400年余の歴史を誇る浄満寺の入り口で、創業100年の老舗菓子店「キタッコ」を見つけた。北谷節子さん(58)は15年前に亡くなった夫の遺志を継ぎ、4代目として経営に当たっている。「ここで会ったのも何かの縁。真心を込めた一品、食べてみて」と、ケーキとお茶を振る舞ってくれた。義母の百合子さん(80)と記念にパチリ。

▼3506歩
写真タンクで櫂棒を動かす安達さん=地図(4)

 国道をさらに北に進んで5分。創業137年、青森市唯一の蔵元として知られる西田酒造店を訪ねた。「田酒」や「喜久泉」といった銘柄は、全国の左党に根強い人気を誇る。

 工場で働く安達香さん(37)が新酒を仕込むタンクに櫂(かい)棒を差し、ゆっくり動かすと、甘い香りが立ち上った。醪(もろみ)が発酵してガスが湧き、プツ、プツと白い泡ができては消えた。「日本酒は自分の人生であり、命であり、わが子」と誇らしい。西田司社長(55)も「少しでも進化したものを造っていく」と力強い。職人たちのプライドが透けて見えた。

▼5000歩
写真下宿でおいしそうにご飯を食べる泉さん=地図(5)

 夕方。県道を歩き、運動部の活動が盛んな青森北高校へと向かってみた。下宿の一つ「前田下宿」では大間町出身の柔道部員、泉栞恋(かれん)さん(16)が食事中だった。

 厳しい練習、「柔道一直線」の日々。思ったように技がかけられず、悔しくて涙が出るときもあるけれど、目をつぶれば、下北の北端に住む母の顔が浮かぶ。「苦労を掛けているので、恩返ししたい。強くなるんだ」。元気が取りえの2年生。大好きなシチューをすすった。