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県民球団として
バスケで青森県全体のスポーツ振興に貢献

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下山 保則 氏
青森スポーツクリエイション株式会社
代表取締役社長
1955年、弘前市生まれ。日本大学卒業後、青森銀行入行。支店長などを歴任後退職。2012年7月、青森県初のプロバスケットボールチームを運営する青森スポーツクリエイション(株)の社長に就任。同年9月、チーム名を「青森ワッツ」に決定。2013-14シーズンよりbjリーグ参入。16年9月に開幕したプロバスケットボールリーグ「Bリーグ」2部に参加。
■県出身選手を育てる

----Bリーグで新たな船出を迎えた「青森ワッツ」は今季、メンバーもがらりと替わりましたが、新生ワッツはどのようなチームですか。また、今季は後半戦に突入しましたが、現時点の戦況をどうとらえ、強化に向けて何が必要と思われますか。

 今季の「青森ワッツ」は、チームの方針を大幅に変更し、青森県出身の選手を中心としたチームづくりを進めてきました。その結果、最年長が27歳のキャプテン下山大地で、19、20歳の選手もいますので、日本人だけで見るとBリーグ1~3部全体の中でも平均年齢が低いチームとなっています。現在、下山をはじめ、新たに獲得した若い選手を合わせて県出身者が6人いますが、全員がすでにゲームに出場し、徐々に中心選手へと育ちつつあります。これは、地元の先輩、近所のお兄ちゃんといった身近な人が活躍する姿を見せることで、バスケットボールに親しみを持っていただくのがねらいですが、選手の友達や先輩・後輩、近所の人など、試合を見に行ってみようという人が増え、これが観客動員につながっています。

 今シーズンの観客動員数は1試合平均1700人ほどで、Bリーグ2部の18チーム中2位となっています。1位の熊本は震災復興の関係で県を挙げて動員を図っていますから、実質1位といえると思います。東北の多くのチームが観客数を減らしている中で、うちはbjリーグ時代の過去3シーズンから現在までこの数字を維持しています。この点では会社としての目標を達成しつつありますが、いざゲームの勝敗ということになりますと、若いチームですので経験値の不足などもあり、ブースターの皆さんには歯がゆい思いをさせることもあるかと思います。プロですから、長い目で見てくれとは言えませんが、今年1年は、なんとか県内の選手に育ってもらいたいという方針、私の思い入れでやらせていただこうと思っています。ですから、負けるのは全て私が悪いのですと言っています。佐藤信長ヘッドコーチにも負担をかけることになっていますが、彼は7年間、能代工業高校で子どもたちを指導してきた人ですから、その経験を今の若いチームに生かしてほしいというのが私の気持ちです。

 地元の皆さんに目を向けてもらうために、地元の選手に活躍してもらう。それが地域スポーツを盛り上げるために重要なことだと信じています。高校サッカーの青森山田高校を見ても、今までにない盛り上がりを見せたのは、もちろん優勝したからではありますが、あれだけ地元の子どもたちがいると、やはり応援したくなります。そうした地元の子どもたちに目を向けたチームづくりを続けていこうと思っています。

■県全体がホームアリーナ

----御社は地域貢献と地域活性化を目標の一つに掲げ、2013年のbjリーグ参入以来、本県初のプロスポーツチームを運営してきました。スポンサー確保などの資金面や、ブースター・選手の確保、ホームの観客動員、知名度アップなどに向けて苦労も多かったと思われますが、これまでの成果と今後の課題も教えてください。

 スポーツビジネスという言葉がありますが、現状、ビジネスというにはほど遠い状態にあるのが実情です。バスケットを愛する人、スポーツを愛する人の志、思いがなければ、地方でプロチームを維持していくのはなかなか難しいです。経営面では、やはりスポンサーの充実が課題となっています。現在、150社以上のスポンサーさんに支えられていますが、年間の予算面ではまだまだ不足しています。都市部では1社で億単位のお金を出している企業もありますが、地方ではなかなかそうはいきません。1千万円出してもらえば大口です。うちの年間の運営費は、スポンサー収入、入場料収入、グッズ販売など全て合わせて2億円ぐらいですが、1部の大きいチームはプロリーグになる前から6億、7億円の規模でやっています。こうしたところに資金面ではなかなか対抗できませんが、もっと県全体の企業から協力していただきたいですし、今後は、県出身者が幹部にいる中央の企業にもアプローチしていくこととしています。スポンサーになることで企業の業績が上がるとか、製品が売れるということではないわけですが、ある種のふるさと納税のような考え方で、出身地のチームを応援することを考えていただければと思っています。新潟県では、アルビレックスという一つのブランドで、サッカーも野球もバスケットも展開しています。そうするとスポンサーもお金を出しやすいのではないでしょうか。企業はアルビレックスに対してお金を出す。その使いみちは、競技間で調整してうまくやってくださいという形ですね。青森では3市にサッカーチームがあり、ワッツも含めて、あっちからもこっちからも支援してくださいでは、企業としても困るというところがあるでしょう。地方にプロスポーツを根づかせるために、新潟のような形は参考になると思います。私たちのもう一つの大きな役目は、ワッツの活動を通じて、企業の皆さんにスポーツによる地域振興ということにもっと目を向けてもらうことですが、その中の一つの形として、社員の福利厚生としてワッツのゲームを活用してもらいたいと思っています。会場のあの一体感、立ち上がってタオルを振り回して大声で声援する時間は、従業員の方のストレス発散にもなると思います。

 観客動員数については、リーグ最上位となっていますので、基盤は固まりつつあるかなとは感じています。私としては平均で3000人は集めたいと思っていますが、これは会場の大きさの問題もあり難しいところです。リーグからは、ホームアリーナを決めて、そこで6~8割のゲームを開催しなさいと言われています。しかし、青森県の場合、青森市のマエダアリーナで8割開催して、全県から来てくださいと言ってもそれは無理です。観客数が減ることは間違いないでしょう。各地で分散開催してきたから、地域の子どもたちが見に来られるし、それがこれまでの動員数につながっているわけです。それをずっとリーグに訴え続けているのですが、なかなか受け入れてもらえないですね。青森県には青森、弘前、八戸と大きな経済圏が3つある。分散開催しなければ集客できない、そのへんの事情が理解してもらえないんですね。この点については、これからもリーグと議論していこうと思っていますし、今後は、三沢市やむつ市にも体育館が整備されるようですので、さらに開催地を増やしていきたいと考えています。新しい体育館は、ぜひ2000人以上収容できる大きさにしてもらいたいですね。

----ワッツがさらに強化され、県内のスポーツ環境も一層進展するための、今後の経営戦略を教えてください。また、地域のために、御社がさらに果たすべき役割をどのようにお考えか、お聞かせください。

 私たちの経営理念は、スポーツを通じた地域経済への貢献、スポーツを通じた地域の子どもたちの健全な育成、子どもたちに憧れと感動、夢と希望を与える県民球団を目指すーの3つを柱としています。経済への貢献については、ワッツのゲームの後は、各会場とも繁華街にワッツのトレーナーを着た人がけっこう見られますので、各都市の首長さんも、バスケットの試合を開催することで地元への波及効果が少なからずあることを理解してもらえるようになってきました。また試合会場に地元の飲食店さんなどに出店していただいていますが、出店料はいただいていません。基本的には地元にお金が落ちればという考えで行っています。

 子どもたちの育成については、特に、8年後には青森で国体があります。そこで活躍するような子どもたちを育てていくためにも、私たちの活動を理解し、支援企業がもっと増えてきてくれればと思います。私たちは、出張クリニックとして県内各地で選手やコーチが子どもたちにバスケットの指導を行っているほか、応援を盛り上げてくれるチアについても青森、八戸、弘前でチアスクールを開催しています。試合会場では、前座試合として地域の子どもたちのゲームを行いますし、ホームゲームでは地元のチアスクールの子どもたちにも応援に参加してもらっています。これが非常に微笑ましく、見ていて楽しいという声を多くいただいています。

 このほか、試合会場は、それぞれの地域の郷土芸能など地域で活動している方々の発表の場としても活用していただいています。2000人規模の会場で演じることはなかなかないですから、貴重な機会として最近は出演したいという団体が増えてきました。こうしたことも、私たちができる地域貢献の一つの形だろうと思いますので、今後も続けていくことにしています。

 今季のチームのスローガンは「RISE AS ONE」(一つになる、一丸となる)としました。これは、チームや会社だけでなく、地域全体で、との意味も含んでいます。ワッツが中心となって、青森県のスポーツを盛り上げていければと思います。私たちは「ホームはどこですか」と聞かれれば「青森県全部がホームです」と答えています。ですから、今後も分散開催を続けていくつもりです。県民の皆さんには、これからも県全体を挙げての応援をお願いしたいと思います。