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地元密着の専門業者として
地域の「葬送文化」を守る

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清藤 哲夫 氏
株式会社 弘前公益社
代表取締役
1949年、弘前市生まれ。73年より清藤造花店に勤務。81年、(株)弘前公益社を設立、代表取締役。99年、アップルウェーブ(株)代表取締役。2007年、(株)アップルコミュニケーションズ代表取締役。10年、(株)青森新生活互助会 代表取締役社長。11年、(株)アップルクリエイションズ代表取締役。16年11月より弘前商工会議所会頭。現在、弘前観光コンベンション協会顧問ほか公職多数。
■業界全体のレベルアップが生き残りの鍵

----御社は、長年にわたり地域住民の暮らしに密接に結びついた葬祭事業を続けてこられました。これまでの歩みと葬祭業界の現状について教えてください。

 当社は、1892(明治25)年に清藤造花店として創業しました。当時は、お弔いに必要な祭壇のお花などを扱うだけで、お棺やご遺体に関わることは別の専門業者が行っていました。長くその状況が続きましたが、私が3代目として会社を引き継いでから、葬祭全般を扱う葬祭サービス業への転換を進めました。といっても、私自身はご遺体を扱えませんので、看護士さんを雇用し、また霊柩車の免許を取るところから始め、1981(昭和56)年に「弘前公益社」として株式会社に組織変更しました。最初に手がけたのは24時間体制を作ることです。当時は、24時間対応とうたっていても、ポケットベルを持たせているだけの会社が多かった。私は労働基準監督署と交渉して、宿直システムを導入しました。いつでもすぐに動けるわけですから、徐々に病院との信頼関係もできていきました。

 自分でやってみて、「葬祭サービス業」という業界の問題点がさまざま見えてきました。例えば、この業界には標準価格というものがありません。各社が独自に決めている。一般的に、祭壇はボリュームで価格が決まりますが、果たして価値としてはどうなのか、それが非常に見えにくかった。造花店の時代は、材料費や技術料によって商品の価格を決めていました。ところがサービス業になると、価格の根拠が見えなくなるわけです。会社によっては、自社でできない仕事、司会や納棺などを外注するわけですが、それでも成り立つ価格になっている。この延長が、近年台頭してきたネット商法です。全国から受注して、提携した各地の専門業者に外注する。それで元請けも専門業者も利益が上がっているのですから、一番損をするのはお客さまです。標準価格がないから、それが成り立っているのです。

 ただ、この業界の難しいところは、高いとか安いとか一概に言えないという面があることです。例えば、故人がとても蘭の花が好きな人だったら、見事な蘭を用意すれば、原価に関わらず、遺族はいくらでも払う、ということもあります。遺族が納得して心から喜ぶとしても、それを逆手に取って儲けるというのはいかがなものかと思いますね。

 お客さまを守り、信頼関係を築いていくには、やはり悪質な業者は排除していかなければなりません。そのために、私は法制化が必要だと考えています。これは、経産省、消費者庁、厚労省にまたがる問題ですが、まずは「葬祭サービス業」とは何かという定義づけから始めなければならないと思っています。実は、この業界は、何の資格も要りません。必要なのは霊柩車の免許だけです。ですから、例えば厚労省が実施しているご遺体を管理するための講習会や、全国葬祭ディレクターの講習を受講した人が最低一人いることを条件とするなど、誰でも起業できる状況は変えていくべきだと思います。

----大手互助会の地方進出などで、地域の葬送業界にも変化が求められていると思います。

 業界の大きな変化として、昔は私たちが座布団、灰皿から祭壇までコミュニティーホールやお寺さんに持ち込んで葬儀を行っていましたが、ホールを造って呼び込むという形が出てきました。これが快適性、便利性からあっという間に主流となります。自前のホールを造るということはお金のかかる話ですから、地元の専門業者にはなかなか難しい。一方で、資金を持っている互助会系の会社には大変な追い風となりました。現在、6~7割の人がホールで葬儀を行っています。ホールが無いと仕事ができない状況といえますが、小さい会社は、どれだけ使われるかわからないホールを造るという決断ができない。やはり大きいところが残り、小さいところは生き残れないという状況となりました。これは今後も続くと思います。専門業者は資金だけでなく、後継者の問題などいろいろな課題も抱えています。ただ、いい仕事をしたとか、安いとか、それだけでは生き残れなくなっているんですね。

 現在、全世帯数の3割ほどが互助会に加入しています。また、年間で亡くなる人の数は130万人ほどですが、その4割が互助会系で葬儀を行っている。専門業者の団体である全葬連系で施行している人が3割、農協系が2割、その他1割、それが現状です。他の業種を見てもどんどんチェーン化が進み、地元の小さな店が消えていますが、まさしくこの業界も今そうした状況になっています。また、葬送の仕方にはそれぞれの土地で古くからの風習があり、だから「葬送文化」と呼ばれるわけですが、全国で商売をしている互助会系の中には、一律のやり方を地方に持ち込もうとするところもある。その方が売りやすいからです。

 葬送文化と、ビジネスとしての葬送サービス業の追い駆けっこという業界側の問題はありますが、一つ確実に言えるのは、もう皆さん、無駄なものにはお金を出さなくなっているということです。昔は、ただ祭壇が大きいとか、お寺さんが5人も来たとか、そういうことが葬儀の格のように思われていましたが、もう、そんな時代ではありません。そうなると、本当に必要なものは何なのか、ということを業者側が考えなければならない。お客さまの思いをいかに形にして差し上げるか、そこを一所懸命考える。そこで重要になるのは、やはり社員の質です。特にこの業界では、仕事上の場面だけでなく、普段の生活での評判も大きく影響します。「あいつは嘘もつくし、約束も守らない」と言われるような人に、誰が大切な儀式のことを相談しますか。普段から信頼されている人なら、「あの人に相談してみれば」となりますね。当社は、そういう人間の集合体でなければならない。そうしていれば、黙っていても仕事はいただけます。「経営戦略の部分は私が考えるから。皆さんは、お客さまの心を何より大切に思い、自分のお父さん、お母さんが亡くなった時どうしたいか、どうしてほしいか、そういうふうに考えなさい。そうすれば自ずと答えは出てくるから」。そういうことを、毎日、社員には話しています。

 また、もう一つ話しているのは、葬儀社の社員であることに誇りを持ちなさいということ。「葬儀屋」と蔑視を含んだ見方をする人もいます。特別な仕事というイメージを持たれることもあります。しかし、葬送サービス業というのは、送る、弔うという日本の大切な文化を担っている。一番崇高な職業だと思いなさいと言っています。そして重要なのは、うちだけレベルが上がっても駄目なのです。津軽地方、さらには青森県全体の葬送サービス業者の質が上がり、「青森はきっちりした葬送文化が定着し、専門業者がそれを守っている」ということになれば、他から入ってこられません。

■開かれた会議所へ

----弘前公益社の代表取締役としてのお立場に加え、弘前観光コンベンション協会会長、コミュニティーFM「アップルウェーブ」社長など、弘前市の魅力発掘と情報発信の牽引役を果たしてこられました。また、このたびは、弘前商工会議所の会頭に就任され、市経済界を代表する立場に就かれました。地域経済の維持・発展に向けた今後の抱負をお聞かせください。

 私は、青年会議所、観光協会、商工会議所に育ててもらいました。ですから、少しでも恩返ししなければならないと思っています。そのために、商工会議所会頭として目指すところは、大きく分ければ三つです。まずは会員のための会議所でなければならない。次に、開かれた会議所でなければならない。もう一つは地域のための会議所でなければならないということです。

 この目標に向かって具体的に何をするか。会議所会員は会費を払っています。それは、お金を出してでも異業種交流で情報が欲しいからです。会員が何を考え、何に困っているのか。これまでは、相談に来るのを待っていたわけですが、そうではなく、会員企業を回ってきなさいと職員には言っています。また、融資や助成制度についての情報は、やはり日本商工会議所が持っています。この情報をきめ細かく入手して、徹底的に情報開示する。また、各会員のニーズに合わせて提案していく。そういうことが必要と考えています。

 もう一つ、会議所主催のイベントがたくさんあるわけですが、これも会員の皆さんにお金を出していただいているのですから、本当に地域のために会議所がやるべきイベントなのか、ちょっと一回立ち止まって、やり方を検討してみようと考えています。

 それから重要なのは、若い人たちの育成です。弘前出身で各方面で活躍している先輩たちが大勢いらっしゃいます。出身者に限らず、さまざまな分野で第一線にいる人の話を聞く機会を増やしたい。そういう刺激が若い人には必要なのです。そうすると、こうしてはいられない、弘前で何ができるだろうか、と動きだす人が出てきます。私は「馬鹿っこが3人いれば世の中変わる」と思っているのですが、前例やしがらみにとらわれずまず動きだす、そういう人材を育てることが重要だと考えています。

 最後に、地場のものを売らなければなりません。シードル、ブナコ、津軽塗、こぎん刺、こうしたものを国内だけでなく外国にも販売していくために、会議所としてどんなお手伝いができるのか。ブランドセンターのようなものをつくるなどハード面は行政に任せるとして、ソフト面で何ができるか。そのために会議所の各委員会の活動をもっと活発化していきたいと思っています。さまざまな意見や提言を持った議員がいるのに、今は発言の場が少ないのです。約100人いる議員が、月一回は集い、さまざまな議論をし、お酒を飲みながらでも、どんどん意見を出し合う。そういういきいきした会議所にしていきたいですね。