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農家の所得向上と
雇用拡大に向けて

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成田 正義氏
上北農産加工農業協同組合
代表理事組合長
1949年、板柳町生まれ。農協、大手ベッド販売会社勤務を経て、77年、上北農産加工農業協同組合入り。同組合弘前支所長、常勤理事参事など歴任し、2004年、上北農産商事㈱を設立、代表取締役社長に就任。
15年より同組合代表理事組合長。
■ロングヒットの秘密

----焼き肉のたれ「スタミナ源たれ」は、今や全国的に知られる大ヒット商品となりました。上北農産加工農協(KNK)は、どのようにして生まれ、事業を展開してこられたのでしょうか。

 当組合は、1940年、「藤坂めん羊組合」の名で“申し合わせ組合”として発足しました。農家の防寒衣料の自給自足を目的に、茨城県と福島県から50頭ずつ、ニュージーランドから200頭、合計300頭のめん羊を購入して、農家に貸与して飼育させたのが始まりです。戦後、農協組織となり、1951年に「藤坂めん羊農業協同組合」として設立。その後、羊毛加工が事業として成り立たなくなり、「衣食住」の「衣」から「食」へと事業を転換し、53年に「上北農産加工農業協同組合」と改称しました。「食」の事業としては、地元で生産された大豆と小麦を100%使用してしょうゆを製造し、さらに付加価値を高めるため、地元産のリンゴとニンニク、国産のタマネギとショウガを生でふんだんに使った万能調味料「スタミナ源たれ」を開発しました。以後、「スタミナ源たれ」を中心とした「たれ類」と「しょうゆ類」の製造・販売を事業とする全国でも稀な加工専門農協として現在に至っています。

 また、近年は、商品の製造過程で出る野菜の廃棄物を再利用して、土壌改良材の製造も行っています。「みどりのスタミナ源」と名付け、生産者に還元していくことで、いわゆる循環型農業の推進を目指しています。

----「スタミナ源たれ」がこれほどの人気商品に成長した理由をどのようにお考えですか。また、現在の生産量とマーケットについても教えてください。

 「スタミナ源たれ」が生まれたのは1965年。2015年に50周年を迎えました。おかげさまで、消費者の皆さまに愛され、支持されて、超ロングヒット商品となりました。半世紀を超え、さらなる半世紀を目指していくわけですが、ロングセラーとなっている要因の一つは、食の「安全・安心」への意識が高まる中で、青森県産、国産の原料にこだわり、輸入原料を一切使用してこなかったことだと思います。国産原料使用率100%を実現しているということで、工場の視察も多く、一般消費者のほか法人関係、学校関係、農業団体など、年間4000人以上の方が訪れています。

 また、「このたれ1本あれば、どんな料理もできる」という汎用性の高さも魅力ではないでしょうか。なにより消費者の皆さんが、私たち以上にさまざまな使い方を見つけてくれる。消費者それぞれの好みで隠し味など新たな用途が生まれ、それが広がっていく。これが大きいと思います。 

 現在、年間の生産量は約700万本。青森県内では、卸売業者を通した流通と、農協ですから系統組織体での販路拡大に努めてきました。県内での販売シェアは75%以上にのぼります。全国にも販売拠点を設け販路の拡大を図っていますが、まだまだ中国・四国地区、九州地区では弱いので、これから徐々に拡大していきたいと考えています。また、海外でも、中国で商標登録したほか、台湾、上海、香港、シンガポールなどでの販路開拓に取り組んでいます。

 私は、これらの地域でも今後の販売拡大は期待できると思っています。というのは、生の野菜や果物を使い、素材本来のうま味を引き出した「生だれ」というのは他にありません。消費者の本物志向が強まるほど需要は拡大していくと思います。また大手の流通企業も地方に目を向けています。食の安全・安心への意識が高まる中、地方ほど安全な素材があるからです。

 一方、近年は業務用商品の販売が大幅に増加しています。現在、「たれ類」の売り上げのうち約27〜28%が業務用です。これは今後も増えていくと思いますし、私たちとしても力を入れています。「スタミナ源たれ」については、「何にでも使える」という汎用性の高さから、製菓、製麺、水産加工などさまざまなメーカーとのコラボレーション商品がどんどん開発され、現在、ポテトチップス、焼きそば・焼きうどん、イカ加工品など110アイテム以上となっています。コラボのきっかけは、先方から話をいただく場合と、こちらから提案する場合が半々ぐらいでしょうか。

 「スタミナ源たれ」の大きな特長として、油を一切使っていないこともあげられますが、ノンオイルのものは加工面でも汎用性が高いのです。油が入っているとどうしてもいろいろな制約が出てきますが、「スタミナ源たれ」は、多様な用途に使いやすく、アレンジしやすい。しかも、リンゴやニンニク、ショウガなど生の食材が入っていますから、このたれを加えるだけでさまざまな具材が入った商品ができる。こうしたものは他にないですから、各メーカーからも重宝がられています。また、たれのベースとなるしょうゆについても、うちでは自前のものをもっています。ここが強みであり大手との差別化を図ることができるポイントです。その意味では、大手の商品が伸びれば伸びるほど、うちの商品は対比を明確にできる。だから大手さんにもどんどん頑張ってほしい、そう考えています。

■生産者とともに歩む

----KNKの各商品は青森県産農産物の有効活用、付加価値づくりを目指して生まれたと伺っております。今後目指す商品づくり、販売戦略をお聞かせください。

 農業団体として、農家の所得向上と地域に雇用をつくり出していくこと、これが私たちの最終目標です。青森県人として、青森のものを発信することで、青森の生産者の所得を上げなければならない。商品づくりについては、これまで通り生産者とともに歩み、地域発の商品づくりにこだわっていきます。例えば2016年に、新たに浅漬けの素も出しました。農家の皆さんは漬け物の原材料となる野菜を持っています。しかし、それを漬け物にして付加価値を高めるためのたれがない。それをうちが作ることで、農家に新たな所得が生まれることになります。今後も「こういう素材があるが、それ生かされていない。それなら、それを生かすたれを開発しよう」、そうした姿勢で商品開発に取り組んでいきたいと思います。また、特に近年は、「大義名分」のある商品づくりということを重視しています。「できるだし」は、短命県返上という命題をもって開発した商品ですが、現在、実際にその一助を担っていると思います。まさに「大義名分」のある商品と言えると思います。

 雇用については、経営危機にあった1992年当時に比べて、KNKグループ全体の従業員数は4倍強に増えました。再建を進める中で、私自身、何よりも足を使ってコツコツと種をまいて歩く役割を果たしてきましたし、今後も続けていきます。いつも飛び込みで営業しますが、例えば、青森のリンゴのように、沖縄に行ったらゴーヤ、熊本に行ったらレンコン、鹿児島のサツマイモ、宮崎なら地鶏というように、各県の人が「これは私たちの県を代表する特産品だ」と思っているものを食べるときに、このたれをどう使うか、加工品ならどのようにまぶしていけばいいか、それを研究し提案することを徹底的にやってきました。そして消費者の反応を見て、改良が必要であれば社員一同で対応していく。社員には、みんなで実のある苦労をしようと話しています。

 消費者が求めているのは。「本物の味」「自然のおいしさ」「原材料へのこだわり」「品質へのこだわり」であることは言うまでもありません。それに対応しながら、他社にまねのできない商品をつくり続けること、これが私たちの生きる道だと考えています。