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「建設から暮らしまで」
生活を支える事業をトータルで展開

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小田桐 健藏氏
株式会社 角弘
代表取締役社長
1940年、平川市(旧尾上町)生まれ。63年、法政大学社会学部応用経済学科卒業、(株)角弘入社。仙台支店長、大館支店長、弘前支店長などを歴任し91年、取締役就任。代表取締役専務、代表取締役副社長を経て2006年、代表取締役社長就任。
■「ものづくり精神」が基本

----創業133年を迎える御社は県内でも有数の歴史を持つ企業で、総合商社として発展を続けていらっしゃいます。農機具販売に始まり、現在は多彩な事業を展開しておいでですが、現在の事業概要を教えてください。

 当社は、1883(明治16)年、「弘前農具会社」として創業しました。当時、中央で造られたあまり品質のよくない農機具が出回っている中で、地元農家の皆さんがもっと効率よく作業できるよう、よりよい農機具を届けたいとの思いから、鉄を調達して、地場の鍛冶屋さんに、使いやすく壊れにくい優れた鎌、くわなどを造ってもらい、安く販売したのが始まりです。この「ものづくり」の精神、そして「よい商品を、より安く」というモットーは、現在まで脈々と受け継がれています。農機具の製造を通して鉄が安定的に調達できる体制が整いましたので、その後、鉄鋼と、鉄を中心とした建設資材の販売に進出し、そこから時代のニーズに合った商品とサービスを提供できるよう多角化を進めてきました。現在の当社のキャッチフレーズは「建設から暮らしまで」ということで、当社のルーツである「ものづくりの会社」の精神を継承しながら、鉄鋼を中心とするさまざまな建設資材を扱う建設分野と、一般家庭向けの商品・サービスを提供する暮らしの分野を柱として事業を展開しています。建設分野では県外に販路を拡げ、暮らしの分野では地元の個々のお客さまにきめ細かなサービスを提供しており、県内外バランスのとれた事業展開ができていると思っています。

■青森発の機能性新素材

----近年は弘前大学と抽出法を共同研究した機能性新素材「プロテオグリカン(PG)」部門の躍進が顕著で、化粧品や健康食品など新商品開発が次々と進み、県内外から注目を集めています。

 プロテオグリカンは、よく耳にするコラーゲンやヒアルロン酸と並ぶ動物の軟骨の主成分で、保湿性に優れ、水分を保持したり、骨と骨の間の関節の滑りをよくしたり、衝撃をクッションのように和らげたりする働きをしています。その重要性は以前から知られていましたが、熱に弱く効率的に抽出できなかったため、かつての製造コストは1グラム当たり3千万円ともいわれ、しかも有害試薬でしか抽出できなかったこともあり、商業利用は不可能とされていました。しかし1990年代に入り、農林漁業資源から有効成分を探す研究を行っていた青森県産業技術センターが、サケの鼻軟骨に高濃度のプロテオグリカンが存在していることを発見しました。これを受けて当社は、98年から弘前大学医学部とプロテオグリカン抽出方法の量産化研究を開始し、サケ鼻軟骨から高純度、低コストで大量に精製する世界初の技術を開発しました。以来、20年近くにわたり、さまざまな応用開発に取り組んでいます。

----7月にはPGの認知度向上を目指して産学官が設立した「一般社団法人あおもりPG推進協議会」の副会長にも就任されました。

 「あおもりPG」の認知度向上と信頼性の獲得を目的に、2011年7月に産学官の連携の下、「青森県プロテオグリカンブランド推進協議会」が設立され、会員PG商品のPRと販路拡大など、これまで一定の成果を上げてきました。しかし、市場の急拡大や新機能性表示制度、不適切な広告や情報への対応、海外への展開など、その後の事業環境の変化を踏まえ組織強化が不可欠だとの判断から、旧協議会を発展的に改組して、今年7月1日に「一般社団法人あおもりPG推進協議会」が設立されました。新協議会は、「あおもりPG」について消費者に対して正しい情報を提供するとともに、「あおもりPG」を使用した安心・安全なPG商品の認証などを通じてプロテオグリカンの認知度の向上を図り、「あおもりPG」のブランド力の増進に寄与することを主な目的として活動しています。現在、同協議会の一般会員は、プロテオグリカンの製造または「あおもりPG」を使用した商品の製造および販売を行う個人または団体など約70社、また協議会が認証した「あおもりPG」関連商品は100アイテム以上にのぼります。

----PG事業の今後の目標、地域貢献の可能性について教えてください。

 当社の「プロテオグリカン研究所」では、素材としてのプロテオグリカンを抽出・精製するとともに、世界で初めてプロテオグリカンを食品に応用した「PG-in りんご酢」をはじめとして、食品、化粧品などの商品を開発・製造しています。プロテオグリカンを配合し、ねぶた面のデザインを施した「青森PG-inねぶた面フェイスパック」は、6月に青森市で開催された「東北六魂祭」の会場でもたいへん好評でした。

 このほか、プロテオグリカンの抽出過程で使用する食品用酢酸を主成分とする溶液を、農業資材「カルリン」として商品化しています。「奇跡のりんご」の木村秋則さんの監修で開発したものですが、酢酸が主成分で酢の持つ防虫効果や、肥料成分リンやカルシウムを含んでいますので、自然栽培への移行の過程で有効な資材として、現在、コメやリンゴなど多くの生産者の方にご利用いただいています。県内の農業高校などでも試験栽培を行っていますが、トマトの糖度が上がったとか、野菜が食べやすくなるといった声をいただいています。

 また、現在、青森県産業技術センターや21あおもり産業総合支援センターが中心となって、産学官連携でのプロテオグリカン研究や用途開発を行い、産業クラスターの形成を目指すプロジェクトが進んでいます。文部科学省産学官連携促進事業の認定を受け進められているもので、当社も、また、あおもりPG推進協議会も会員として参画しています。このプロジェクトは、プロテオグリカンにかかわる研究開発と人材育成を推進することで産業集積と雇用創出を実現し、地域の活性化につなげていこうというものですから、プロテオグリカンを使った商品開発や販売に取り組みたいという企業、個人は、認可を得ればどなたでも参加することができます。当社では、それらの方に確実に原料としてのプロテオグリカンを供給するとともに、新たに配合商品の製造を始める方に、当社のPG専門店である「アレッラ」を中心に販売協力も行っています。「アレッラ」は、当社の出先がある秋田、能代、大館でも展開しています。今後は、岩手県、さらに仙台から東北全体にという形で販売チャンネルを拡大し、地域の皆さんと一緒になって、この青森発の新素材を、青森を元気にする起爆剤に育てていきたいと考えています。

----最後に、今後の企業活動全体についてのお考えや抱負をお聞かせください。

 当社は、今年で創業133年目になりますが、企業の存続には、常に新商品、新事業開発が欠かせません。先ほども申しました通り、当社はものづくりの会社としてスタートしました。その精神を継承し、プロテオグリカンに続いて、市場性のある商品の開発、事業展開には今後も積極的に取り組んでいくこととしています。また、特に建設分野では県外の拠点拡大を図り、各出先を充実させ、さらに販路を広げていきたいと考えています。

 一方で、県内の皆さまには、より行き届いたサービスを提供するよう今後も努めて参ります。当社の守備範囲のものであれば、例えばコーヒー1本からでも配達しますという姿勢で事業に取り組んでいます。当社は津軽地域に16カ所のサービスステーション(ガソリンスタンド)を展開していますが、ここでは石油製品に限らず、米などの食品やプロテオグリカン関連商品も販売しています。いわばサービスステーションを角弘の小さな支店として、各地区における拠点機能を持たせ、地域の皆さまによりきめ細かなサービスを提供できるよう努めています。

 県内外でバランスのとれた経営戦略を展開し、皆さまの暮らしをトータルでお手伝いできる企業として、これからも努力していきたいと思います。