54
地域密着型書店として
お客さまとのリアルな接触を大切に

写真
成田 耕造氏
青森県書店商業組合
理事長
1953年、青森市生まれ。76年、成蹊大学経済学部卒業。横浜市の書店勤務の後、78年、成田本店入社。取締役文具部長、常務取締役、専務取締役を経て、93年、代表取締役社長。98年、青森県書店商業組合副理事長。2013年、同組合理事長就任。
■厳しい状況続く書店業界

----出版社から書店への書籍の流通を仲立ちする大手取次会社の再編、活字離れによる売上げ減少などで、書店を取り巻く環境は厳しさを増していると伝えられています。県内でも6月に、五所川原市の老舗書店が閉店を余儀なくされたばかりですが、県書店商業組合理事長のお立場で、地元書店の変化をどのようにご覧になっていらっしゃいますか。

 全国の書店数は、ピーク時は約2万2千軒あったのですが、2015年現在、約1万1千軒と、ちょうど半分に減少しています。こうした状況の中、ピーク時で1万2千軒あった日本書店商業組合の組合員数も、現在は4千軒と約3分の1に減っています。

 青森県内の組合員も同様で、私が理事長に就任した3年前は40軒ほどだったのですが、現在は30軒となっています。人口減少が進む中で売り上げがどんどん落ち、また、テナントとして店舗を構えている書店は、家賃との兼ね合いで撤退せざるを得ないということもありますが、特に、零細書店の閉店が多くなっています。小さな書店では、売り上げ構成の中で雑誌が一番大きく8~9割を占めています。しかし、現在、出版物の中でも雑誌の売り上げの低迷が著しく、昨年は対前年比で8%以上の減少となりました。コンビニでも返品率が50%を超えています。かつては写真スクープ誌がブームとなった時代もありましたが、今は、まずインターネットで情報を得て、その後テレビで確認して、雑誌では過去の記事を見ているような状況になっており、スピード感で雑誌は完全に負けています。ですから、雑誌を定期購読している近所の顧客に配達するという、昔ながらの商売をしているような店がどんどん減っているわけです。小さな書店の商売を支えていた雑誌の成績が振るわないところが書店数の減少の大きな要因となっています。

 書籍についても大きなヒット商品がなく、一方で、定額で読み放題といったサービスを提供している電子書籍が伸びていますし、ネット書店もじわじわシェアを伸ばしています。書店業界には独特の販売ルートがありますので、これらのサービスの「早く手に入る」という特徴は、我々には真似のできないところです。この点については、私自身、負けているなと感じています。いずれにしても、書店が本だけの商売で生き残っていくのは難しい時代になっています。

----サン・ジョルディの日に合わせた冊子配布活動など、青森県書店組合としての最近の取り組みについてご紹介ください。

 組合では、4月23日の「世界本の日」(別名サン・ジョルディの日)に、「県内の著名人がお薦めする一冊!」という冊子を作成し、各組合加盟店でお配りしています。昨年から始めた事業で、今年、2冊目を制作しました。「身近な人がこんな本を薦めている、じゃあ読んでみようか」と少しでも読書推進につながればという趣旨で行っているものです。ただ、「サン・ジョルディの日」という名称は全国的にも何度もPRされてきましたが、なかなか根付かないものですから、今年からは「世界本の日」という名称を前面に出して展開しました。

----7月7、8の両日、八戸市で書店東北ブロック大会が開催されました。市では「本のまち八戸」を掲げ、中心街で読書に親しむ環境づくりを進めているところでもあります。地域に根差した書店が、今後も文化の発信拠点として存続していくためには、どのような取り組みを進めるべきとお考えでしょうか。

 八戸の小林眞市長が非常に本好きで、公約にも掲げた「マイブッククーポン」の事業を3年続けています。この事業は、公立小学校と県立特別支援学校小学部に在籍する全ての児童に、市内書店で使用できる2千円分の「マイブッククーポン」を配付し、保護者とともに書店に出かけ、自ら本を選び購入する体験を通して、読書に親しむ環境をつくることを目的としたものですが、これで児童書が売れていて、書店としては非常にありがたく思っています。読書推進の後ろ支えとして、子どもたちが本を購入しやすい施策を展開され、「本のまち」づくりを進められている八戸市長に敬意を表して、6年に1度青森県に回って来る東北ブロック大会を八戸市で開催しました。当日は、小林市長にも講演いただき、市長自身の本に対する思い、考えを語っていただきました。

 人口減少や活字離れの中、生き残っていくためには、私たち書店だけの力では限りがありますので、八戸のような官の取り組みはたいへんありがたく感じています。八戸市では、市直営の「八戸ブックセンター」をつくる構想もあるようですが、何とか、民間の書店もその中に参加させていただき役割を果たせるような形になってほしいと思っています。

 近年は、全国的に図書館の指定管理者を書店が務めるという事例も出てきました。問題もあるようですが、個人的には、カフェを併設するなど新しい図書館のスタイルが生まれており、読書離れを抑制する意味でも非常に面白いと感じています。指定管理については、民間の図書館運営を専門とする企業が全国を席巻しつつあるのですが、それについても、個人的には蔵書を地元の書店から購入していただくというところさえ外さなければ、協力してやっていけるのではないかと思っています。利用者にとってメリットがあればいいわけですから、地元の発行物については私たちが詳しいという自信を持っていますので、うまく役割分担していけばいいのではないかと思っています。

■文化の発信地として

----「ナリホン」といえば、青森市中心街の顔、文化の発信地として長く県民に親しまれてきたブランドであり、書籍以外にも文具、教材、楽器などで幅広い年齢層の知的好奇心を満たしてきた歴史があります。ネット社会の進展など、顧客ニーズの変化をどのように感じておいででしょうか。

 主力である本が、雑誌の低迷、文芸書でもヒット商品に恵まれないという状況にあるのに加えて、音楽のネット配信などによりCDの売り上げも激減しました。当社では、かつてはCD部門の売り上げが非常に大きかったものですから、この減少には苦労しています。CDについては、アーティストのライブがあったときに会場に出店して、サインや景品を付けるなどして、何とかファンに財布のひもをほどいてもらっているという状況です。

 一方で、近年、文具は筆記用具を中心にヒット商品に恵まれています。例えば、少し前の商品になりますが、「消えるボールペン」や「芯の折れないシャープペン」など、メディアで取り上げられることも多くなり、文具の売り上げは比較的堅調に推移しています。このため、全国的に、文具を取り扱う書店が増えています。青森では当たり前の感覚ですが、全国的には書店が文具を扱うのは珍しかったのです。それが、近年は、本の売り場を縮小して文具との複合展開する書店が増えているようです。私も、当社のような、対面で商品の説明をして買っていただいている業態の店では、こうした新しい商品の特徴をしっかりとお客さまに説明して、付加価値の高いものを販売していくことが大切なのだと、あらためて感じています。

 文化の発信という意味では、創業から108年目に入った今年、新町店の4階を、当初この建物ができたときの原点に戻ってイベントホールとし、さまざまな催しを行うコミュニケーションのための場を復活させました。ここでは、例えば、地元で書籍を上梓された方をお招きし、その本がどういう経緯でできたのか、どういう思いで書かれたのかなど、作者の人となりにも触れていただけるイベントを開催しています。その場で本も販売するわけですが、こうしたお客さまとのリアルな接触の場から本が売れていくという形が、私たちのような地元に密着した書店、対面販売の書店ができる唯一最大のサービスだと考えていますので、これからも続けていきたいと思います。