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「青森の醤油屋」として
県民の健康と所得向上に貢献を

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中嶋 恭寛氏
代表取締役社長
1953年、青森市生まれ。76年、工学院大学工学部卒業、和田寛食料工業株式会社入社。生産部試験研究課勤務、食料部青森営業所所長、営業本部企画部長等を経て、2000年、ワダカン株式会社営業本部副本部長。04年、同本部長。07年5月、代表取締役社長就任。
■いち早く「減塩」に取り組む

----2007年5月の社長就任から10年目に入りました。全国有数の醤油メーカーでもある「ワダカン」の経営トップとして、どのような姿勢で臨んでこられましたか。

 基本は先輩の時代から変わらず、「安全・安心・おいしい」の追求を続けていますが、ここ数年、「健康」ということをしっかり考えなければ、という意識がだいぶ強くなってきました。県が短命県返上ということで食生活の改善を啓蒙していますが、「健康」を重視した商品開発で地域貢献していこうという意識は、会社も私個人も持っていました。安全で、安心、そして何よりおいしくなければ商品は長続きしませんので、そこは変わりませんが、特にこの10年、減塩、それから野菜を多く取るための商品、という観点で商品開発に取り組んでいます。

 当社は、減塩についてはだいぶ以前から取り組んでおり、もともとの和田寛食料工業の時代、昭和50年代の初めに薄塩醤油を全国で最も早く発売しています。詳しく言いますと、「減塩」と「薄塩」というのは違いまして、普通の醤油より塩分を50%以上減らしたものを「減塩」、20%以上減らしたものを「薄塩」といいます。当初は「低塩」という名前で発売したのですが、どちらなのか分かりにくいということで「薄塩」に変えました。その後、全国のメーカーから「薄塩」の製品が出て、現在はさまざまな「減塩」製品があふれていますが、薄塩の醤油は当社が全国初だったのです。

 こうした積み重ねの上に、現在も「おいしくて薄塩」「おいしくて減塩」という商品を追求しています。いくら身体に良くても、まずくてはだめです。最終的にはおいしさの追求になるわけですが、そこで重要になるのが、だしです。塩分を減らした分、だしでどう補って、おいしさを損なわないようにするか。そうした研究に長く取り組んできました。だしを上手に使うことで、塩分を落としてもしっかりした味が保たれ、もの足りなさを感じない。近年、県が「だし活」に力を入れていますが、こうした研究は当社ではずっと昔から続けています。

----1900(明治33)年創業の老舗企業として100年以上の歴史がありますが、この間、法人組織の変遷もありました。

 創業以来、長く「青森の醤油屋」として操業してきた当社では、「青森の家庭の味を作っている」と自負し、またそれを誇りに思っていますが、県民の皆さまからも、多くの方に「醤油はグローリィ」と言っていただき、また「八方汁」も40年以上のロングセラーとして親しんでいただいていること、たいへんありがたく感じています。もともとの「和田寛食料工業株式会社」が1986年に倒産し、その後「ワダカン食品工業株式会社」が99年に再び倒産。現在の「ワダカン株式会社」は2000年にスタートしました。最初の倒産の際、もちろん私たちも苦しい中でもしっかりしたものを作る努力を続けましたが、なにより青森のお客さまがうちの製品を買って使い続けてくださった。それは本当にありがたかったですね。県民の皆さんに感謝感謝です。それを裏切ることはできませんから、「おいしくて、健康に良い」商品を提供し続けなければならないですし、私の次の代にも引き継いでいかなければなりません。青森の皆さまに愛していただけるからこそ、今、全国に打って出られると思っています。

■新たな商品分野に進出

----現在の事業概要と主な商品ラインナップをお聞かせください。主力の醤油出荷量は、現在どの程度のシェアを確保しておいででしょうか。

 営業拠点は、札幌から東京まであります。全国を、北海道、青森県、青森以外の東北、首都圏と大きく4ブロックに分け、東京支店が関西までカバーする体制をとっています。製品は大きく分けて、醤油、味噌、つゆ、たれ、食酢の五つの商品群で構成されています。全売上に対する構成比では、醤油部門が56%、八方汁を含むつゆ部門が28%、味噌部門が11%、たれ・食酢部門が5%となっています。味噌については、もともとの「ワダカン」と、2004年に吸収した「マルサ味噌」のブランドを残し、二つのブランドで商品展開しています。全国シェアでいうと、醤油は3%ぐらいだと思います。醤油製造業としては全国7位か8位。県内では、市販・業務用合わせて約50%を占めています。

 また、これらの商品群に加え、今年から新たな柱として料理酒とみりんタイプ調味料を発売しました。東日本大震災以降、東北全体の消費が落ち込んだこともあり、当社でも減収減益が続いていましたが、2015年度、やっと増収増益に回復しました。ここでさらに勢いをつけるために新たな分野に挑戦して、会社としての体力を強化していこうということです。いずれも国産米100%使用、八甲田の伏流水で作っており、これらもまた「安全、安心、おいしい」の追求から生まれた商品です。

 好みもあると思いますが、当社の「料理酒」は、しっかりとお酒の味を残し、限りなく清酒のイメージに近づけているのが特徴です。一方、皆さんが「みりん」としてお使いになっているものには、本みりん、みりん風調味料、みりんタイプ調味料がありますが、当社の製品は、みりんタイプ調味料になります。みりん風というのはほとんどアルコールが入っていません。甘味を出し、照りを出すのに適しています。みりんタイプ調味料は、アルコール8.5%以上9.5%未満とアルコールがしっかり入っていますので、お酒の味をしっかり残し、本みりんが持つ、魚の臭みを消したり、肉を柔らかくしたりという役目も果たしながら、照りを出すための甘味もあります。色を見てもらえば分かりますが、もともとの原液である塩みりんをしっかり入れ込んだ製品です。

----青森県味噌醤油鑑評会みそ・しょうゆ両部門で、御社は2年連続で最高賞を獲得されました。県が掲げる「短命県返上」に注目した減塩製品の開発など、新たな味づくりにも取り組んでいらっしゃるそうですが、消費者ニーズの変化をどう受け止め、今後の製品開発の展望をどのように描いておいででしょうか。

 これまでも味噌、醤油どちらか単独で受賞したことはあったのですが、2年連続ダブル受賞というのはたいへん光栄なことで、うちの技術陣を誇りに思います。審査は、利き味検査官が目隠しで行うのですが、味、香りなどトータルで1等賞の評価をいただいたわけで、長く培ってきた技術力と、時代の変化に対応した商品開発が実を結んできていると感じます。2年連続で最高賞である県知事賞を受賞した「超特選特級ゴールデンしょうゆ」は、先ほど申し上げた塩分20%カットの薄塩タイプです。塩分を減らしても、うま味を加えることでおいしさは損なわれないということが、プロの舌で証明されたと受け取めています。繰り返しになりますが、減塩して、それで味がぼけてしまっては商品になりません。減塩して普通の醤油よりおいしいという評価をいただいたことは胸を張れると思います。

 減塩ということでは、今年8月から、主力製品である「上級グローリィしょうゆ」と「こんぶのおしょうゆ」の減塩タイプを、酸化を防ぐ密閉ボトル「鮮ボトル」入りで新たに発売します。これは、塩分が通常の醤油の約半分、48%カットしたもので、まさに短命県返上の応援商品といえます。うま味で補うことで、ふつうの醤油と同じ感覚でお使いいただけると思いますので、ぜひお試しいただきたいと思います。いくら減塩商品を使っても、薄いからとたくさん使ったら意味がないわけで、うちの製品は、しっかり味があるので普通の醤油と同じぐらいの量で満足いただけると思います。

 私たちは、全国の営業活動でも、あえて「青森の醤油屋です」ということを強調しています。それが、うちのアイデンティティーなんですね。親会社も本社は名古屋ですが、そうした考えで、ワダカンは青森の会社として地元登記のままにしています。これからも青森県発信で頑張っていきますが、うちだけでなく青森県に本社のある企業は全て、地方から発信し、全国で商売して地元に還元する、そして、短命県返上だけでなく、県民の所得向上にも貢献していくべきでしょう。微力ではありますが、今後もそうした考えで事業を展開していきます。