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医療・介護、生活支援
 包括的な高齢者サービスを提供

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石木 基夫氏
医療法人 蛍慈会
理事長
1957年、青森市生まれ。東京慈恵会医科大学卒業。同大付属青戸病院内科医局長などを経て2000年より石木医院院長。03年、NPO法人 活き粋あさむし設立、理事長に就任。
■NPOと一体で高齢者の生活支援

----医療法人としての事業内容、運営している施設の特徴などについて教えてください。

 浅虫地区で石木医院と40室のサービス付き高齢者向け住宅「メディケアハウス ストンキ」、横浜町で「菜の花クリニック」、青森市内で2カ所の認知症グループホームを運営しています。また、昨年1月からは深浦町の町立関診療所でも週一日お手伝いさせていただいています。

 石木医院は、父が戦後すぐにここで開業しましたので、親の代からだと70年ぐらいになります。2013年に医院に隣接する形で「メディケアハウス ストンキ」を整備しました。経営者としては、地域の人口が減って、普通に通いで来てくださる患者さんだけではやっていけないということもあります。また、地域を活性化するうえでは雇用の場の確保も重要な課題ですが、蛍慈会全体で100名以上は雇用しています。地元の人が3割だとしても、少しは雇用創出という面で役に立っているかなと思いますので、この雇用を維持しさらに増やしていくためにも、事業を広げていかなければならないと思っています。

 私どもの高齢者施設は、医療機関が運営する施設としては早いほうでしたので、あずけるご家族にしても、本人にしても、多少は安心感があるのかなと思います。また、すべての施設で看取りまでやらせていただいています。利用者の方も、最後の場面で施設からまた病院に行くのはいやだということが多いです。施設にいながら家族と最後のお別れができる、それもうちの施設の特徴かと思います。

---たいへんお忙しそうですが、NPO法人「活き粋あさむし」の理事長も務めていらっしゃいます。

 浅虫は、かつては人口が4000人ぐらいいたそうですが、私が帰ってきた時は1800人、今はもう1300人に減少しました。旅館も30~40軒あったのが今は10軒。かつては夜も浴衣で出歩く観光客でうるさいぐらい賑やかでしたが、今は7時ともなると真っ暗。全く変わってしまいました。少子化も著しく、私が帰ってきたころはまだ、浅虫小学校の児童が70~80人いましたが、そこからみるみる少なくなって、複式学級になり、校舎が耐震構造になっていなかったこともあり、とうとう廃校になりました。

 「活き粋あさむし」では、ちょうど学校の週休二日制が始まった時期に、親の負担も多くなるのではないかということで、土日に子どもたちをお預かりする「浅虫コミュニティスクール」という事業から取り組みを始めました。その後、青森市で「放課後子ども教室」がスタートし、私たちがやる必要がなくなりましたので、事業の中心を高齢者の生活支援に切り替えました。一日一食でも、きちんとバランスのとれた食事を摂ってもらうことで健康維持につなげていこうということで立ち上げたのが「浅めし食堂」です。オープンして今年で13年目になります。石木医院の裏手にある、閉店したスナック跡を改装して、10年ほどそこで営業しましたが、老朽化していることもあり、設備も不足してきましたので、ストンキに併設する形で現在の場所に移転しました。この場所も元は地域住民のためのスーパーがあった場所ですが、人口減少で経営が厳しくなったことから閉店してしまい、その土地を譲ってもらったものです。

 「浅めし食堂」は、ストンキの入居者のための食堂であり、また、外部の一般の方もいっしょに食事できる施設とすることで、世代間交流の場にもなり、おもしろいんじゃないかと考えました。

■高齢者に寄り添う事業

----医療法人、またNPOとしての今後の活動について、抱負をお話しください。

 現在、浅虫地区の高齢化率は50%を超えています。市内でも高いほうですね。それをなんとか食い止めようとNPOを立ち上げ、いろいろな活動をしてきました。ですが、なかなか力になれず、今は、蛍慈会と活き粋あさむしが連携して、現状の高齢化に対応しながら、医療・介護、生活支援など包括的な高齢者サービスを提供する事業に取り組んでいます。

 また、最近、地方創生の一貫として、首都圏の元気なお年寄り、いわゆるアクティブ・シニアを地方に移住させようという日本版CCRCの動きが出てきました。CCRCとは、Continuing Care Retirement Communityの略で、まだ健康なうちにある地域に移り住み、その地域で健康でアクティブな生活を送ること、医療介護が必要になった時も住み替えることなく継続してケアが受けられることなどが特徴の高齢者地域共同体です。青森県の中では、青森市と弘前市が手をあげていますが、行政の支援も得ながら、閉館した旅館を活用してそうしたアクティブ・シニアのための居住施設をつくることを構想しています。将来的には、そちらは自立した人、ストンキは要介護の人、という棲み分けもできればいいかなと考えています。

 また浅虫については、地域の貴重な資源である温泉をもっと活用することで地域活性化につなげていきたいと考えています。ストンキではパブリックスペースの暖房は温泉を使っています。浅虫の温泉は70℃以上ありますので、まず暖房に使って、さらに40℃ぐらいになった残り湯を駐車場の融雪に再利用することができます。また、「活き粋あさむし」では「スパベジハウス」という温泉熱を利用した植物工場も運営していて、そこでとれた野菜を浅めし食堂の食材として利用しています。また、この辺りでは、5mも掘れば地熱が20℃くらいはありますので、融雪などに十分に利用できます。普通のところですと100mぐらい掘って15℃とかですから、そういう意味で浅虫はたいへん恵まれています。融雪のほか、地熱発電、養殖漁業など、温泉の有効活用の仕方はいろいろ考えられます。

 海も山も温泉もある浅虫には、まだまだいろいろな活性化の可能性がありますが、私も本業がありますので一人ではできません。これまでの活動を通じて知り合った他のNPOと連携したり、医師としての人脈や、産学官の協力も得ながら、少しずつ取り組んでみたいです。先ほどのCCRCにしても、私が東京に行って営業することはとてもできませんので、東京にルートがある他のNPOと連携しながらやっていければと思っています。それぞれのNPOごとに得手不得手があるでしょうから、それぞれの得意分野を活かし、それを結集して、地域のために何かできればいいかなと思っています。

----最後に、短命県返上について、医師の立場からのお考えをお聞かせください。

 青森県は、喫煙率、大酒を飲む人の割合、肥満率、塩分摂取量、運動不足、こうした項目のどれをとっても全国ワーストクラス、ほとんど1位なわけです。これでは短命なのは当たり前。生活習慣を変えていかないと無理です。医療のレベルなど他にも問題はあるのかもしれませんが、まずは、そこの意識改革からでしょう。実は、浅虫地区は結構ご長寿なのです。100歳以上の方もいらっしゃいます。各家庭に温泉を引いているということが関係しているのかもしれません。私は温泉学会の会員でもありますが、医師ですから迂闊なことは言えませんが。

 あとは、やはり高齢者が生きがいをもっていないということが長寿県との違いなのかなと思います。最長寿の長野県では、お年寄りも皆さん仕事をしているみたいですね。例えば農業なら、繁忙期はもちろん、冬場も春になったら何を作ろうとか考える。次の収穫への夢を膨らませる。青森では、定年したら昼間から酒飲んじゃう人が多い。そこに差があるのかもしれませんね。