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独自の長期保存技術で
 リンゴの流通調整、価格維持に寄与

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藤崎 和夫氏
フジプラント株式会社
代表取締役
1946年生まれ。北海道余市町出身。北海道大学卒業。土木建築・農業用機械を扱う商社の東京営業本部等勤務、そこでCA冷蔵庫の設計施工業務にも従事。1984年、独立し千葉県で「フジプラント株式会社」設立。同年、弘前営業所開設。2000年、本社を弘前に移転。
■国内8割のシェアを築く

----御社は、リンゴをはじめとする青果物の鮮度維持に役立つ研究に取り組まれ、リンゴCA冷蔵庫の国内シェアが約8割という業績をあげられています。

 納入先はリンゴの産地に限られますので、8割といっても非常に小さい市場です。青森県が全生産量の半分ぐらいを占めていますし、その他の産地についても北国のもののほうがしっかりしているといいますか、貯蔵に適しており、長野や北海道に一部納入しているぐらいです。この他、リンゴ以外のもので、ジャガイモ用のものを北海道、青森、関東、九州、ニンニク用のものを青森と京都、タマネギ用を北海道と関東に納入しています。お客さんの件数でいうと全体で120〜130でしょうか。

---フジプラント式リンゴCA冷蔵庫について、あらためて簡単にご説明いただけますか。

 全ての生き物にはそれぞれ、保存性を高めるための適正温度というものがあります。当社では青果物を中心に扱っていますが、大きく分けて、温度が低すぎるとだめなものと、低ければ低いほどいいものがあります。低すぎるとだめというものは、私たちが風邪をひいてしまうのと同じですから適正な温度を保つ必要がありますし、低いほどいいものについても凍ってしまったら死んでしまうので、凍らないぎりぎりの温度を設定します。

 CAというのは「CONTROLLED ATMOSPHERE(空気調整)」の頭文字です。CA貯蔵とは、ある空間の空気中の酸素、窒素、二酸化炭素濃度を調整することにより、貯蔵される青果物の呼吸を最小限に抑制し、鮮度の低下を抑える貯蔵方法です。従来の温度・湿度の調整に、空気成分の調整を加え、さまざまな青果物を長期にかつ新鮮に保存することができます。

 もっと簡単に言いますと、私たちが暮らしている一般的な環境の大気は、大雑把に言って、酸素が2割、窒素が8割ですね。それを、酸素をうんと少なくしてほとんど窒素という状態にする。それで呼吸を抑えるわけです。青果物は収穫された後も呼吸しています。呼吸というのは、自分の身体を食べていくことなんです。人間は、食べたものの栄養を血液中に取り込んで、その血液を肺に送って、肺で呼吸によって取り込んだ酸素と栄養分化合物を化学反応させて燃やし、そこからエネルギーをつくっています。青果物も同じようなことをしているわけですが、植物は口から物を食べませんから、自分の身体から養分を取るわけです。ですからどんどん消耗して劣化していきます。呼吸の量を抑えることが劣化を抑制するわけで、これが貯蔵の技術ということになります。例えばリンゴの場合、30℃と0℃の環境下では、呼吸量に10対1ぐらいの差があります。ただ温度を下げ過ぎて凍ったら死んでしまう。その適正温度がそれぞれの植物によって、また同じリンゴでも品種によって異なります。適正な温度に下げて、さらに呼吸量を減らしたい。それができるのがこのCA貯蔵なのです。温度調整だけでなく、空気成分の調整も行うことでそれが可能になります。具体的には、凍らないぎりぎりの温度にした時、CA冷蔵庫は一般的な冷蔵庫と比べて、約半分にまで呼吸量を抑えることができます。CA冷蔵庫は鮮度維持だけでなく、発芽抑制・緑色保持においても大きな効果があります。ただ、呼吸しないということは死ぬということですから、最低限必要な量の呼吸量は確保しなければなりません。

---起業までの経緯について教えてください。

 もともと商社でサラリーマンをしていた時に、アメリカのメーカーのCA冷蔵庫の業務を担当していたのですが、私一人でやっていましたので、他の人に技術を伝えられませんでした。当時はCA冷蔵庫がそんなに普及せず伸び悩んだこともあり、そのうち商社のCA冷蔵庫部門自体が縮小になり、私も他の部署に移ることになりました。ただ、すでに納品したものの保守管理は私しかできませんでしたので、その後もサービスの必要があるたびに私がやっていました。その時期アメリカ製の製品を日本に合うように設計し直しました。その後、独立して今の会社を起こしました。

 初めて契約してくれたのが青森のお客さんでしたが、他のお客さんを紹介してくれたり、リンゴの見方を教えてくれたり、この方は、私の育ての親のような方です。自分が扱おうとするもののことをよく知らないと技術は作れない、リンゴと対話して何を言っているのか分からないといけないと、いろいろなことを教えていただきました。

 当初、千葉県で会社を立ち上げて、連日、青森と行き来していたのですが、仕事というのはお客さんのいるところでやらないと絶対成功しないと、妻が後押ししてくれたこともあり、こちらへ営業所をつくり、気がついたら初年度で6件の契約がとれました。CA冷蔵庫の分野では先行しているメーカーがあり、私は後発でしたので、どちらかというと既存の冷蔵庫をCAに改築しますというスタイルで営業しました。新築より手軽にできることもあり、翌年からも、順調に仕事がとれ、それを続けてきて、気がついたらシェア8割という感じです。

---御社の事業は、本県の基幹産業である農業、とりわけリンゴ産業と関わりが深いですが、一次産業の今後の動向など、御社を取り巻く事業環境をどのように見ていらっしゃいますか。

 グローバルな視点で見ると、確かに農業の先行きは厳しいかなという気もします。ただ、日本の農業というのは、手作業で作ってきた歴史の名残があり、ただ売るものを作るのではなく、自分たちで食べることを前提にしているといいますか、肥料にしても農薬にしても、できるだけ危険なものを遠ざけようという姿勢があり、これが世界的に評価されています。日本の農産物は安全だということですね。そういう意味で人気は高いです。東南アジアの経済成長の中で、生活水準も上がり、買い物をするならより高付加価値のものをという流れが続いてきているわけですから、このマーケットでは、多少価格が高くても十分勝負していけると思います。例えば青森のリンゴが最近ベトナムの市場に出ましたが、値段は他の3倍もしても、味よし、香りよしで、なおかつ安全だと、芸術品のように見られています。そういう点でまだまだ日本の農産物には競争力があります。また、そこで当社の技術、製品が役に立てるのではないかと思っています。東南アジアの消費地は保存施設が充分ではないでしょうから、今は、日本で保存して、持って行ってすぐ売るという形しかできません。そこにCA冷蔵庫の需要がありますし、いずれは海外の消費地に保存施設をつくる必要も生じてくるでしょう。そういう時期がくれば新たなビジネスチャンスとして取り組んでいきたいと思っています。

■他の青果物への応用により事業拡大を

----今後の事業展開への抱負などお聞かせください。

 私が懸念している一番の問題は、歯止めの利かない医療費の増大です。これをどうやって止めるか。これは私たち一人ひとりが具体的に取り組んでいかないと、国家の財政破綻につながる大きな問題だと思います。それを予防するためにどうするか。病気にならない身体をつくることです。好きなものを好きなだけ食べて暮らしていれば、いずれ病気になります。体中の細胞を健全に保つためには、やはり、いい食べ物を摂らなければなりません。ですから、食生活についてちゃんと勉強してください、ということをことあるごとに話しています。怪我や病気で一時的に病院にかかるのは構いません。慢性的な治療をしないことです。そして医療費の増大を抑制していく。これは日本人としての義務だと思います。

 現在、私は、弘前市の健康増進リーダーの認定を受けるための講習を受けています。やはり各企業の経営者が率先して意識改革し、社員を指導していかなければならないと思います。私も会社で社員によく話しています。事業とは直接関係ない活動ではありますが、同じく命を預かって、命をより長らえることを考えるという意味では、当社の事業ともつながっているのかなと思っています。