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適正な知識をもった人材を育て
 県民の不動産取引をサポート

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安田 勝位氏
公益社団法人 青森県宅地建物取引業協会
会長
1945年、福島県生まれ。商事会社勤務、電気会社経営の後、有限会社東北企画設立。97年、株式会社に改組し代表取締役に就任。この間、88年より社団法人青森県宅地建物取引業協会理事、常務理事、副会長を歴任し、2006年、同協会会長に就任。12年より公益社団法人青森県宅地建物取引業協会会長。現在、公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会理事、一般社団法人全国賃貸不動産管理業協会副会長など公職多数。
■全国的に続く地価下落

----本県は、住宅地や商業地などを合わせた全用途の平均価格が24年連続で下落しています。本県の不動産市況について、あらためてお話しいただけますか。

 2015年度の県地価調査によると、青森県の地価は全体で対前年比2.9%減と下がっています。用途別では、住宅地が2.8%減、商業地が3.2%減、工業地が2.5%減ぐらいです。ただ、下げ幅は縮小してきています。全国的にも、東京都心部の一部と仙台近郊が東日本大震災以前の水準にもどりつつあるという意味で上がっているほかは、軒並み下落傾向にあります。底打ちするまでには、まだ2~3年かかるのではないでしょうか。

 少しでも右肩上がりの傾向になれば、土地を買って先行投資する人も出てくるのですが、まだ将来のために土地を買うという人は少ないですね。また、戸建て、アパートを含めた賃貸物件は、青森県全体で約8万4千件、空いているのではないでしょうか。国では中古物件の販売を促進しようと講習会などを行っていますが、なかなか進んでいません。昔と比べれば、金融機関も中古物件の購入にも融資するようになりましたから、中古住宅を売りやすい時代にはなっていると思います。ただ買う人がいない。やはり、将来にわたって安定した収入が得られるかどうか不安があり、ローンを払い続けることができるという自信が持てないのでしょう。

■トラブル解決や人材育成、社会貢献にも取り組む

----貴協会の活動内容について教えてください。

 青森県宅地建物取引業協会の公益目的事業として常時行っているのが、不動産に関する無料相談業務です。万が一、不動産取引においてトラブルが生じた場合、協会が責任をもって解決に努力します。近年は、こうしたトラブルは少なくなっていますが、苦情解決業務でもトラブルが解決できず、弁済の対象となると判断された場合、会員業者に代わり保証協会が消費者に損害金をお支払いすることになっています。

 また、会員業者の人材育成のために講師を招いて講演会、研修会などを開催しており、私たち業界の人間だけでなく、興味のある一般の方にも参加いただける研修会も定期的に実施しています。このほか県内8つの支部ごとに、自治体のクリーン作戦に参加するなど社会貢献活動にも取り組んでいます。

 現在、全国の各宅建協会でも、会員に対して中古物件の販売促進に向けた指導や啓蒙を行っています。中古物件については、数年前、国が中古物件市場は20兆円産業になると謳ったこともありましたが、現実にはそこまでいっていないですね。近年は、中国や香港の富裕層が日本に永住するために東京のマンションを購入する事例が増えているそうです。

 インターネット取引関連では、大手IT企業が不動産業界に参入して、仲介手数料を買い手からだけいただき、売り主からはもらわないので所有している物件の情報をたくさんください、という手法が首都圏で広がっています。この手法で紹介物件の数を増やし、消費者に豊富な不動産物件情報を提供しております。

 インターネットは、いつでもだれでも簡単に情報を収集できるという点で非常に有益ですが、その情報が必ずしも現実と一致しないこともあります。不動産取引関係の法律もネットで調べられますが、法令の解釈はホームページによって異なる場合があります。また、ネットで得た法律情報を消費者が自分なりに解釈して苦情を申し出ることもありますが、法律を正確に理解されていない場合も少なくありません。私たちは、宅地建物取引士の資格を有し、日々最新の法令を勉強し適正な知識をもってそれらを消費者に提供しているわけですが、それよりネット情報を優先して苦情を申し出る消費者もいらっしゃいます。そうした場合にもきちんと対応できるよう、全ての会員業者が適正な知識を習得できる環境づくりをすることも協会の重要な役割です。

----最後に、株式会社東北企画の経営者としての今後の抱負や、地元三沢市の事業環境についてどのように感じていらっしゃるかお話しください。

 当社の物件では、中古物件のほうが新築よりも売れていると思います。やはり、土地を購入して新築住宅を建てるとなると3000万円近くかかります。そうなると自己資金が500万円以上ないとなかなか難しいでしょう。当社で売れている中古住宅は1400万円前後の物件。これだとローンも組みやすいですから。銀行によっては、中古でも最長で40年ローンも組めるようになりましたので、アパートの家賃を払うくらいの額でマイホームが持てるわけです。

 三沢市の特徴としては、やはり米軍基地との共存共栄ということがありますが、中古住宅でいえば、三沢には米軍外国人やその家族のために建てられた一戸建て住宅、いわゆる「アメリカンハウス」が多くあります。アメリカンハウスは広いですから、購入した方が自分たちに合わせてリフォームして使っています。築年数も比較的浅いので、実際に住まれた方の声を聞くと、おおむね好評ですね。当社では、ピーク時は600棟ほどのアメリカンハウスを管理していました。しかし、米軍も縮小していて、現在、管理している物件は激減しています。

 ただ、縮小しているとはいえ三沢市は基地交付金の恩恵を受けていますし、国が新たな住宅地を整備して移転が続いていることもあり、青森県全体の中ではまだ不動産業や建設業界の市況は活発なほうだと思います。商業地の取引に関しても、ここ数年、全国規模の大型店の立地が進んできたように感じています。以前は八戸止まりだったものが、近年は家電量販店などの進出もありました。

 とはいえ全体的には、まだ今は我慢の時期といった感じでしょうか。かつて、昭和40年代、むつ小川原開発の時代は、青森県全体が右肩上がりでしたが、中でも三沢市では、中央町の地価が坪60万円という話も出回ったほどでした。今は、10~13万円。商業地のほうが下落幅は大きいですね。住宅地はやや下がり気味といった感じです。

 投資があり土地が動いて建物が建つわけですから、私たちの業界の動向は、日本経済全体のバロメーターとも言えると思います。現在は日本経済が後押ししてくれる状況ではありませんので、不動産業も建設業も、また他の産業も先行きに対する不透明感は拭えないです。これ以上悪くならずにこのままいければ、なんとか生き残ってはいけるといった見方をしている企業がほとんどで、なんとか現状を維持していくのが精一杯、無理して先行投資するような気運はないですね。金融機関も融資したいのでしょうが借りる人がいない。これで景気が好転するといった要素も今のところ見えませんので、みなさん、今は我慢の時期と考えているのではないでしょうか。しばらくは我慢を続け、この状況をのりきりたいですね。