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観光航路、生活航路として
大間と下北一円の振興に努める

■滞在型観光の振興に向けて
写真
松田 光伸生氏
津軽海峡フェリー株式会社
大間支店長
1965年、函館市生まれ。1989年、東日本フェリー(株)に入社。2009年11月、津軽海峡フェリー(株)に社名変更。道内各地、東京に勤務、2014年6月、津軽海峡フェリー(株)大間支店支店長に就任。

----大間と函館を結ぶ大函丸の利用者が増えているとうかがっています。利用層の傾向や、地域への経済効果についてどのように見ていらっしゃいますか。

 大間航路の需要は、昨年に比べて全体的に増えており、遠くは四国や九州方面のナンバーでお越しのお客様もよく見かけます。地元の皆様のPR活動や弊社営業プロモーションが浸透してきていると思いますが、実感として、それ以上の効果が出ていると肌で感じておりまして、現在その詳細な分析を進めているところです。大間~函館航路の特徴は、北海道と本州の最短航路で運賃が安いですし、90分という時間がお年寄りやお子様、ペットにも優しいということがあると思います。長い航路ですとやはり心配されるお客様が多く、ちょうど良い時間だという声を多くのお客様からいただいています。また、最近、特に目立つのが、キャンピングカーの増加です。乗船されるお客様に声をおかけしてみますと、テレビやパンフレットを見て、ふと思い立って出かけてきたと話されるお客様が多いのが印象的です。特に夏季は、マイカーやバイクで北海道へ行く途中に、大間にも立ち寄られるというお客様が多いです。また、定年された年齢層のお客様も多く、2泊や3泊ではなく、ご夫婦で何週間もかけてというお客様が多いようです。そのようなお客様が年々増えてきているのを感じます。

 下北半島の観光は宿泊しない通過型のツアーが多く、地元への経済効果が高い滞在型観光のあり方が課題となっています。観光地として近年多くの外国人も訪れている函館と最短で結んでいる津軽海峡フェリーは、地元の観光振興という意味で重要な役割を担っていると思います。漁り火や函館を望む横夜景など大間の夜の見どころを満喫してから翌朝、大函丸始発便での出発をPRするなど、宿泊されるお客様が増えるよう努めています。函館百万ドルの夜景を横夜景として堪能できるのは大間ならではですね。また、本州最北端というロケーション、良質の温泉、大間マグロ、おもてなしなどを満喫できる魅力的な宿泊施設もありますので、まずは、より多くの人々にその魅力を知ってもらうことが大切だと考えています。

 また、弊社では、大間ターミナルを新築するにあたり、フェリー利用者以外のお客様にも24時間利用可能なトイレを整備しました。キャンピングカーなどで来られて近郊の駐車場や施設で車内泊されるお客様に好評を得ております。大間の夜の魅力や、こうした施設があることを知ってもらうことで、今回は宿泊されなくても、次に来るときは泊まってみたいと思っていただく、そのきっかけになればと考えています。

■今後の需要はより多彩に

----北海道新幹線の開業により、青函を一つの観光圏としてとらえる機運が高まっています。

 北海道新幹線の開業は、首都圏や新幹線沿線から津軽海峡エリアを訪れる観光客が増える大きな市場機会になると考えられ、旅行代理店の方々も興味をもたれています。弊社としては、新たな需要が生まれる可能性があるこの機会に、津軽海峡エリアの観光振興に向けて、多彩な交流・周遊のプランを提案、展開していきたいと考えています。

 その際、重要なことは、大間だけではなく、やはり下北全体で誘客を図ることだと思います。大間だけでは宿泊のキャパシティーが限られるということもありますが、なにより、近隣には佐井村の仏ヶ浦、風間浦村の下風呂温泉郷、むつ市の恐山や薬研温泉郷などなど、下北には素晴らしい観光資源がたくさんあります。こうした下北の魅力を一体的に売り出し、より多くの方に知っていただくことが、函館に来られるお客様に青森側にも立ち寄ってもらうために重要だと思います。

 現在、関東から飛行機で函館に入り、翌日9:10発の大函丸で大間に渡り、マグロを食べて下北に宿泊。翌日は大間から函館へ戻り飛行機で帰るという旅行商品があります。北海道新幹線開業後は、新幹線で函館に来て、大函丸で大間に渡った後、「ぐるりんしもきた観光ルートバス」やJRの「リゾートあすなろ」を利用して下北〜青森を満喫していただき、新青森駅や七戸十和田駅から帰るというルートも考えられます。

 北海道新幹線開業は、循環型ルートの選択肢が増えるという意味で、下北地域にとって良い機会であるととらえておりますし、新しい観光商品の造成という意味でも大きな可能性を秘めていると思います。先日、東京よりお越しいただいた女性グループのお客様が、2泊3日のプランで函館旅行に来られて、2日間函館観光を満喫した後、最終日に偶然「90分で大間に行ける」ということを知り、函館発09:10の便で大間に入り、本州最北端を訪れ、マグロを食べて、大間発14:10の便で函館に戻り、余裕をもって予定のフライトで東京に帰れることができ、ちょっとしたクルージングも楽しめて得した気分ですと嬉しそうに語っていたことが印象的でした。このように大間~函館航路がもっと認知されれば、そうしたさまざまな新しい需要も出てくるのではないかと期待しています。

----今後の抱負や展望をお聞かせください。

 大間航路には、大間近郊にお住まいの皆さんが函館へ買い物や通院、習い事など、生活航路として函館と縁があり、運航便数が多かった頃は、夕食を函館でということもあったとうかがっています。その点でも私たちは歴史ある航路としてたいへん重要な役割を担っていますが、やはり観光航路として利用客を増やしていくことが、大間町や下北一円により多くのメリットをもたらし、また、この航路の維持につながると考えています。

 昭和39年に開設された大間〜函館航路は、昨年、半世紀の節目を迎えましたが、大函丸の就航に合わせて新設したターミナルは、ボーディングブリッジを整備し、より利用しやすくなったほか、食事や買い物ができる施設も充実させました。大間を代表する400キロ級マグロのモニュメントも設置し、このターミナル自体が大間の観光資源のひとつになればと考えています。また、私ごとですが、この航路開設の翌年に生まれた私が昨年6月より大間支店へ配属となったことに感慨深い思いがあり、大函丸が出港する際に、ご乗船いただいたお客様へ従業員が一礼や手を振ることを始めました。お客様への感謝の気持ちを現場としてどう表せば良いのか、現在の私の思いを込めた取り組みですが、お客様から手を振り返していただいた時には大変嬉しく感じております。

 90分という短い航路のメリットや、新しい船とターミナルがもつハード面の強みを活かしながら、お客様により快適な旅をご提供できるようソフトを回していくのが私たちの使命です。地域の皆様にも支えられていることへの感謝を胸に、従業員一同、「あの航路にまた乗ってみたい」と思っていただけるような旅を演出できる「現場力」を追求し続けていきたいと思っています。