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独自の商品開発と攻めの姿勢で
ナンバーワン道の駅を目指す

■他の先を行く商品を
写真
一戸 明彦氏
道の駅つるた「鶴の里 あるじゃ」
駅長
1953年、浪岡町(現青森市浪岡)生まれ。県内の商社、スーパー、卸問屋などに勤務の後、道の駅なみおか「アップルヒル」の立ち上げに携わり同道の駅に勤務。道の駅浅虫温泉「ゆ~さ浅虫」勤務を経て、2001年より道の駅つるた「鶴の里 あるじゃ」駅長に就任。農林水産省選定「地産地消の仕事人」、6次産業化「ボランタリー・プランナー」。

----道の駅つるた「鶴の里 あるじゃ」は、来年、開業15周年を迎えます。立ち上げから駅長を務めてこられたわけですが、どのような方針で運営されてきたのでしょう。

 まず、鶴田という土地で商売をするにあたり何を扱えば一番成功するかということを考えました。リンゴは津軽一円が産地なわけですから、どの道の駅でも置いています。同じことをやっていてはお客さんが付きませんし、うちの特徴を出せません。鶴田にはリンゴのほかに、生産量、作付面積日本一のスチューベンがあります。このスチューベンを柱とした道の駅にしよう、というのが基本となりました。それから14年やってきましたが、ここ数年、町もスチューベンのブランド化に力を入れるようになりましたので、協力して「スチューベン日本一の町」の知名度アップに取り組んでいるところです。

 スチューベンについては、生食のほかに加工品づくりにも力を入れてきました。加工品をつくる素材としては果物が一番いいのです。糖度があり、みんなに好かれる素材です。これはブドウに限らず、リンゴでもモモでもそうですが、商品化がしやすい。中でもブドウは、ここにしかない素材ですから、独自のものが出しやすかったということがあります。

----とはいえ、ものすごい種類の加工品がそろっていますね。

 私は、道の駅に携わる以前、スーパーなど小売店に勤務してきましたが、ある大手企業の会長さんから、「人がやっていることをしてもだめだ。人のやらないことをやれ」と言われたことがありまして、その言葉が今も頭に残っています。それがものづくりにあたって全ての基本になっています。それからもう一つ、地元の食材を使うこと。基本的なことですが、それがこの土地で商売をするうえで一番の差別化の武器になります。地元にたくさんあるものを活かしながら、ここの道の駅に来なければ買えない、そういう商品をつくることが大事なのです。それが道の駅全体の特徴となり、他店との差別化につながっていきます。私は、ここに来る以前から、浪岡でも浅虫でも、そういう考えでやってきました。

 例えば果物を使って、ジュースをつくる、ジャムをつくる。ここまではどこでもやります。大事なのは、その先をやること。私たちは、スチューベンを使って、同じ飲料でもサイダーをつくり、ワインをつくりました。さまざまな菓子類もつくりました。他が真似できないところまでやる。そのためには、その商品を完成させるまで、どんな材料が必要で、どんな加工が必要か、そして、どこに何を頼めばそれが可能になるのかを把握していなければなりません。私は、40年以上、サービス業の世界にいましたので、そのノウハウやネットワークをもっています。その経験をもとに、自社でつくる部分、委託加工する部分を判断し、完成までのもっとも効率的な方法を決めていくわけです。

----新商品のアイデアはどこから湧いてくるのでしょうか。

 商品開発については、特に、これからどういうものを開発しようかと考えるのではなく、日々、勝負だと考えています。といいますのは、商品の売れるスパンというのはどんどん短くなっています。今、よくても必ず徐々にじり貧になっていきます。ですから、常に売れ行きに目を光らせて、次々新しいものを出していかなければなりません。そのためには、テレビ、新聞など、さまざまな情報にアンテナを張り、いいものがあれば、自分たちのもつ食材、自分たちのできるやり方に応用してみる。ヒントは意外なところにありますから、私も従業員も、日々、情報に敏感でいるよう心がけています。開発専門の部署というものはなく、誰でも自由に提案できますし、新商品の試作に当たっては、会社の設備、材料を自由に使っていいことにしています。やって失敗するのは構わない。なにも提案しないほうが評価は低くなります。それで、試作品ができたら、みんなで食べてみる。6割がよいと言えば、すぐGOです。待った無し。そういう商品づくりをしています。

 情報収集という意味では、冬期の比較的暇な時期に、日本全国の道の駅を回る視察や販売イベントに出かけていますが、それには必ず女性の従業員を交替で連れていくことにしています。自分の目で、他の道の駅の商品構成や陳列方法、そして、どんな商品が売れているのか、目新しい商品はないか、そういうことを見るだけで、従業員にとってはたいへん勉強になるのです。

■攻めの姿勢で、まずは収益を

----道の駅の責任者として、経営理念、信念のようなものがありましたらお聞かせください。

 道の駅を運営している「鶴の里振興公社」は、公社ですから、収益事業と公益事業、2つの事業に取り組んでいるわけですが、私の方針としては、「収益9」対「公益1」というのが基本です。通常、第三セクターなどが経営する道の駅というのは、市町村から管理委託料をもらい、それに自前で稼いだ分を合わせて運営しています。うちは、2年目から町のお金は一切もらっていません。全て自分たちが稼いだお金で事業を回し、従業員の給料を払っています。さらにその中で、町に還元できるものを還元していく。うちでは、野菜、果物、米、麦、大豆など、鶴田産の農産物については、通常の農協などでの入札価格より高く買い上げています。また、施設の運営にかかるメンテナンス、それから燃料、これらはすべて地元の業者さんに委託しています。こうした管理運営経費や産直の会員の売り上げをトータルすると、年間約2億5千万円ぐらいを町に落としています。これが公益性ということです。

 それから、もう一点、商売をするうえで基本としてきたのは、「物がある」ということ。集めるにしろ、作るにしろ、販売する商品が常にあること。当たり前のようですが、私たちは、棚を売っているわけでも、冷蔵庫を売っているわけでもありません。そこに入る商品を売っているのです。それがただ埋まっていればいいというわけではなく、そこに並べるべき商品を集める目、商売の勘、それが重要なのです。ですから、私としては、「在庫を抑えなさい、それで売り上げ、収益をあげなさい」というのは考えられない。反対に、社員に対しては、他は何も言いませんが、棚に欠品をつくらないこと、それだけは徹底させています。物がなければ商売にならないわけですから。いかなる場合でも、いかなる商品であっても、売り場にきちんとあること。それができていない店が他では結構あります。

 全国のいろいろな道の駅などを視察すると、売り上げのいい店と悪い店は一目で分かります。整然と陳列されていて売り場がきれいなところは、さほど売っていません。昔ながらの市場のような、地域に馴染んだ商品構成、売り場づくりをしているところが売り上げがいい。私たちは、品揃えという点では、大手のスーパーには勝てないわけです。じゃあ、どうするかといえば、例えばトマトを売るとしたら、5箱10箱置くよりは、100箱並べたほうがお客さんの目につきます。今の人は、なかなかそれができないですね。最初に「残ったらどうしよう」と考えてしまう。私は、そうではなくて、「これを売り切るためにどうすればいいかを考えよう」という姿勢でやっています。今日はスイカを売っていますが、今日1日の仕入れが250箱です。2個入りですから500玉。売る側が最初からマイナスの思考でいては、売れるものも売れないですよ。いつも攻め、攻めの姿勢でやっています。

----15周年となる来年、またそれ以降の展開に向けた抱負などお聞かせください。

 来年、当道の駅は15周年を迎えます。これまでは公社中心にイベントなどを実施してきましたが、節目の年ということで、できれば、鶴田の主役である町民の皆さんを直にまきこんだイベントをこの道の駅で開催したいと思っています。農家、商業者含め、いろいろな所に声をかけて、鶴田町を集約したような催しとして、町全体で15周年をお祝いしたい、そんなことを考えています。

 今後については、おかげさまで順調にお客さんの数が増えてきましたので、売り場面積も駐車場も、手狭になってきました。さらなる拡販のためにも、なんとか施設を拡大していきたいですね。レストランも現状では、お昼は15分~20分待ち、下手をすると30分待ちという状態です。これを解消するため、別棟を建てて飲食機能をそちらに移す。それで広がった売り場を活用して、現在は置いていない海産物の加工品を扱ったり、どこかの市場と契約して売り場貸しすることも考えられます。さらに、近所にブドウ畑がありますから、将来的には自社でスチューベンを栽培し、収穫体験などもできる体制をつくっていきたいと考えています。自前の観光農園があれば、オーナー制度など、事業展開の幅も大きく広がります。

 まずは県内一の売り上げを目指し、次は東北一と段階を踏んで、いずれは全国一の道の駅を目指したいと思います。そのためにも、施設を拡充して、複合的な機能をもった道の駅に進化していきたいですね。