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ガイドを通して
自然と共生するまちづくりを考える

■階上の魅力を売り込む
写真
有谷 升氏
階上売り込み隊
会長
1935年、階上町生まれ。1960年より階上町役場に勤務。退職後、2010年に町民有志と「階上売り込み隊」を設立、会長に就任。階上町歴史研究会会員。階上町文化財審議会委員。

----「階上売り込み隊」設立の経緯と活動内容、また、どのような思いで結成されたのか、お話しください。

 「階上売り込み隊」は、豊かな自然など階上町の魅力を町外にPRし、町の活性化につなげようと発足した町民有志によるボランティアガイドのグループです。2010年6月に20人ほどでスタートしました。当初は、階上海岸散策のガイドから活動を始めましたが、当時、階上町では、いちご煮祭りや臥牛山まつりなど春と夏は町のイベントがありましたが、秋から冬にかけては集客につながる催しがなく、特に海岸部は、冬場、にぎわう機会がないことが課題となっていました。それで、昔からこの地方で冬の風物詩として食べられている「どんこ」を使って何かできないか、という話が持ち上がったのです。

 「どんこ」というのは、正式にはエゾイソアイナメという淡白な白身の魚です。カワハギに似た肝がありまして、肝を入れた汁物や鍋にして食べます。また、いわゆる肝焼きですが、味噌と一緒に叩いた肝をまわりに塗って焼く「どんこの逆さ焼き」も、この辺ではよく食べられています。三陸では親しまれた魚ですが、津軽地方などでは馴染みがないということで、当地の名物として売り込めるのではないかと考えました。町や漁協女性部にご協力いただいて、同年の11月に「はしかみどんこ祭り」を開催することができました。「どんこ汁」を100円で提供するお祭りですが、以後、私たち「階上売り込み隊」の主催という形で、毎年開催しています。

 2012年には、JR東日本が展開している「駅からハイキング」という日帰りの企画のガイドを務めました。全国で行われている企画ですが、階上町では、いちご煮まつりに合わせて、階上駅を起点として海岸線を歩いて、いちご煮まつりの会場まで行ってお昼を食べる。午後は、車で階上岳まで移動して、みちのく潮風トレイルのルートを歩くというコースを設定しました。30〜40人の定員を全国から募集しましたが、54名に参加いただき、たいへん盛況でした。

■自然への尊敬の心も伝えたい

----階上町は「巨木の郷」としてのPRにも力を入れています。

 以前、環境省が全国で実施した自然環境の調査の中で、巨木について調べたものがありまして、その中に階上町の巨木についても記されていました。その資料がベースになっていますが、八戸市の「東北巨木調査研究会」という組織から「もっとあるんだよ」というお話をいただき、協力もしていただけるということでしたので、もっときちんと独自に調査してみようかということになりました。

 環境省や東北巨木調査研究会のデータに基づいて、現地を巡って調査し、その中から、地権者の了解を得られたものについて、見学コースを設定し、「巨木の郷はしかみ」というパンフレットにまとめました。「巨木の郷はしかみ」で紹介した木は23本。巨木・古木の明確な定義はありませんが、ここでは、地上から1.3メートル部分の幹周りが3メートル以上のものを「巨木」、樹齢がおおむね100年以上のものを「古木」として取り上げました。いくつか紹介しますと、県最大級の「茨島のトチノキ」と国内最大級の「蛭子家のウツギ」は県の天然記念物に指定されていますし、「銀杏木窪の大銀杏」と「平野家のサイカチ」は町天然記念物です。すべて現地調査しましたが、いちばん遠いのは、階上岳の中腹の「天狗の松」です。資料を頼りに探しながら訪ねましたので、みつけるのにはなかなか苦労しました。

 ただ、階上町の巨木・古木は、コンパクトな範囲にまとまってありまして、訪ねやすいのが特徴です。民家の庭先など行きやすい場所にあり、車から降りて、遠いものでも5分も歩けば見ることができます。例えば役場を起点に歩いて回っても午前中で3本から5本は見られますし、20キロを覚悟すれば10本ぐらいは見られます。階上町の自然がそれだけ豊かだともいえますし、人々が古くから木とうまくつきあって暮らしてきたからではないのでしょうか。巨木のそばには必ずといっていいほど、小さくても祠が祀ってあり、自然に対する尊敬の気持ちがあったことが伝わってきます。自分たちよりずっと長く生きている巨木を敬う気持ちが、身近な場所の木を残すことにつながっているのだと思います。

 先人たちが何百年と守ってきた木なわけですから、これからも守り続けていかなければなりません。同時に、身近にあるという特徴を活かして多くの人に訪れて見てもらいたい。「巨木の郷はしかみ」では、東北巨木研究会が設定していた巨木めぐりのコースを、了解いただいてそのまま紹介させてもらっていますが、関心のある人が多いようで、春と秋に開催しているガイドツアーはすぐに定員いっぱいになります。

 今後は、私たちが知らない木もまだまだあると思いますので、23本に加えて新しい情報を盛り込んだ改訂版も制作したいと思っています。

----町を知り尽くした有谷さんから、改めて階上町のPRをしてください。

 階上岳に限っても、この山は人との関わりで維持されてきた山です。手つかずの原始的な大自然ではなく、人の手が入りながら、里山的な役割を果たしてきました。ですから人の手が入らなくなると、この山はかえって荒れてしまいます。一方、海も人々の生活とともにありました。江戸時代は塩作りが盛んで、明治になって専売制になるまでは、小舟渡などで盛んに行われていたようですし、古くは平安期にも行われていたという史料もあります。山からとってきた薪を使って海水を煮詰めて塩を生産していたわけで、階上町は古くから海、山と共生し、それを守るとともにうまく利用しながら暮らしてきた町です。海岸散策や巨木めぐり、特産品をふるまうイベントを通して、季節によって表情を変える海や山の美しさとともに、ここで暮らす人々の文化や、自然を敬う心のようなものも伝えていければ、と思っています。

 隊としては、これまで自分たちのもっている知識でできる範囲でガイドをしてきましたが、研修などでガイドの質をより向上させていくことも必要だと思います。ただ、メンバーの高齢化が進んでいますので、もっと若い人を取り入れていかなければならないというのが喫緊の課題です。若い人に、ふるさとにも、隊の活動にも、もっと関心をもっていただけたらうれしいですね。