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田んぼアートの波及効果を
地元商工業者に広げるために

■村のPRキャラクターを手掛ける
写真
菊地 洋三氏
田舎館村商工会
会長
1944年、田舎館村生まれ。五所川原農林高校卒業後、大手ぬいぐるみ縫製企業に勤務、弘前営業所長を務める。80年、独立し「ルビー縫製」(現・瑠緋商事有限会社)を設立。ぬいぐるみの製造と販売を行う。現在、同社取締役。2009年、田舎館村商工会会長に就任。

----御社の沿革とぬいぐるみ業界の状況を教えてください。

 当社では、生地の裁断、縫製、綿入れ、検針、梱包、ラベル付けまで、ぬいぐるみの一貫生産を行っています。創業当初の取り引き先は、国内の大手おもちゃメーカー各社で、女の子向けの有名な着せ替え人形やキャラクターグッズもうちで製造していました。家庭内職の縫子さんに業務用のミシンを貸し出す外注生産を基本に、ピーク時は月産5万個、八戸市、函館市、秋田の鹿角市にも営業所を構えていました。縫子さんは各地で確保できるのですが、生地などの原料や裁断のための金型などは東京から買い付けなければならず、注文に合わせて大ロットで仕入れますので、キャンセルが出ると大変でした。ただ、たまにそんなロスがあってもやっていけるだけ当時は受注がありましたね。

 しかし、ちょうど私が独立した頃から、人件費の安い海外生産への移行が始まります。韓国、それから中国です。取引メーカーも大半が中国の巨大工場に生産拠点を移しました。当時は、とにかく中国に行かなければ時代遅れだとまで言われ、私の会社にも大手メーカーと組んで中国に合弁会社をつくる話が来ましたが、どうも地元を離れる気になれなくてお断りしました。実際、大きなメーカーでも、海外で良い工場を使ったところは今も業績をあげていますが、悪い工場を使ったところはたいへん苦労したようです。

 さらにその後、クレーンゲーム機、いわゆる「UFOキャッチャー」が流行し、100円で大きなぬいぐるみを手に入れられるようになると、ぬいぐるみ自体の値崩れが始まります。それで安い海外生産に拍車がかかりました。今は原料の生地も海外のほうが安いですから、航空運賃をかけても生産コストは抑えられる。近年は、海外の技術も上がって、たとえば新規にキャラクターをつくる場合でも、デザインしたものを東京の企業に発注すれば1週間もしないで中国の工場で作られた試作品が届く、そんな時代です。とても国内生産では太刀打ちできません。そこで海外の工場との差別化は、やはり品質と納期の正確さということになりますが、現在は、小ロットのものや納期の短いものなど、国内で生産される限定された商品を中心に受注しています。

----ご当地キャラのブームもありますが、県内ではどんなものを手掛けられましたか。

 浅虫にあった遊園地のキャラクターなどもうちでやりましたね。近年では、商工会の会合で風間浦村商工会からお話をいただき、「風間浦鮟鱇」のぬいぐるみ、帽子を製作させてもらいました。キャラクターですから、こちらはある程度かわいいデザインを提案したのですが、村としては、もっと本物らしくということで、何回かデザイン案を出し直して、結構苦労しましたね。最終的に喜んでいただけたようで、よかったです。

 また、田舎館村では、田んぼアートと村のマスコットキャラクター「米こめくん」を開発しました。田んぼアートの好評を受けて、県民局からご助言をいただき、「米」をテーマとした村のイメージづくりをさらに進めようということで取り組んだものです。これも何度か作り直しましたが、最終的に完成したものは、鈴木村長も「かわいい」と言ってくれました。

■村一丸でヒット商品づくりを

-----「米こめくん」をはじめとして、田舎館村では田んぼアートを核とした村おこしが進められています。商工会長として、商工業振興への波及効果という面では田んぼアートをどのように見ていらっしゃいますか。

 展望台の入場料が有料となり、昨年は、第一・第二会場合わせて5千万円超の収入がありました。これが村の財政に活かされるわけですから、これは大きな効果だと思っています。ただ、一般の商工業では、ごく一部のおみやげ品や食料品の売り上げがある程度で、大きな波及効果は実感できないというのが実情です。30万人が訪れていることの効果をいかに村全体に波及させていくか、これが現在の大きな課題となっています。

 数年前から、商工会女性部が役場4階に売店を出店しています。以前、このスペースにあった喫茶店が閉店となり、せっかく人が集まる場所なのに空けておくのはもったいないということで始めたのですが、展望台を訪れた人にたいへん喜ばれました。青年部もオリジナルのTシャツなどを開発してここで販売を行いました。ただ、田んぼアートのお土産品として、大きなヒットといえる商品はまだ生まれていません。また、例年、展望台の駐車場近くに売店を出していますが、村でこのスペースを整備していく計画もあるようですので、商工会として参画し、出店者全体の売り上げ向上につながるような注目される仕掛けを提案していければと思っています。

 難しいのは、田んぼアートの見頃は、7月から10月まで、4カ月と限定されています。この期間内で、どう商売を展開するか。たとえば4カ月間、展望台や会場周辺に店を出すとしたら、スタッフをつけなければなりませんし、光熱費もかかる。それで採算がとれる商品があるかということが問題になります。ですから、今後は田んぼアート関連の商品開発に力を入れ、安定した販売量を見込めるしっかりした商品アイテムを数多くそろえていく必要があります。「米こめくん」もさまざまな場面で活躍して知名度も上がってきましたので、これにもっと肉付けした商品展開も今後考えていきたいと思っています。今年は、昨年の天皇皇后両陛下ご来訪を記念した新バージョンの「米こめくん」を製作しました。これも、村のPRに大いに活用していきたいですね。

 また、田んぼアートは世界にも知られるようになり、写真も多く撮られていますが、お城をモチーフにした特徴的な役場は、訪れた人以外にはあまり認知されていないように感じます。これをもっとPRして、たとえばポップコーンでもなんでもいいですが、お城をモチーフとした容器やパッケージを開発して、首からさげて田んぼアートを見ながら食べられるような工夫をするのもいいかもしれません。

-----最後に、商工業に限らず、村経済活性化に向けた思いを何でもお聞かせください。

 現在、商工会の会員は、140数名です。村には大きな商店街というものはないのですが、「稲刈り体験ツアー」など村のイベント時に商工会として売店を出しており、商工業者のまとまりはあります。商工会として、こうした機会を活かしてやれることはまだまだいろいろあると思います。村とも協議しながら田んぼアート効果を拡大する策を考えていきたいと思います。

 また、村活性化や新たなヒット商品を生み出すには、村、商工会、JAなど、関係団体が一丸となって取り組む必要があります。村には、田んぼアートという大きな資源ができましたし、これを推進してきた「田舎館村むらおこし推進協議会」という組織があります。協議会の活動を通して各団体の連携をより強めていくことが重要だと思います。財源の問題もありますが、展望台入場料の活用方法も考えてみる必要があるかと思います。