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白神の恵みと文化を資源に
村活性化を図る

■白神頼みからの脱却を
写真
角田 克彦氏
一般財団法人 ブナの里白神公社
支配人
1975年、弘前市生まれ。2000年、ブナの里白神公社入社、Beech(ビーチ)にしめやに勤務。06年、結婚を機に西目屋村に転居。07年より同公社管理部に異動。12年、支配人に就任。

----はじめに、白神公社のお仕事の内容を教えてください。

 ブナの里白神公社は、西目屋村の5つのサービス施設「ホテルと温泉リゾート ブナの里 白神館」、「滞在型温泉宿泊施設 グリーンパーク もりのいずみ」、「アクアグリーンビレッジ ANMON」、「物産センター Beechにしめや」、「食品加工センター 味な工房」の運営と、山菜など西目屋村の特産品の加工製造、県内外への販売を業務としています。私が入社したのは、ちょうど白神山地が世界遺産に登録され、これらの施設の整備が進んでいた頃で、入込客数も売り上げも右肩上がりの時期でした。

 その頃は、だまっていてもお客さんが来てくれるという状態でしたし、観光は白神山地頼り、中でも暗門の滝が最大の観光資源で、たとえば、お客様へのサービスや提供する特産品、土産品の質的なレベル向上への努力、さらにリピーター獲得に向けたPRという点で努力が欠けていたのかなと、ピークが過ぎた今は、そう感じています。

----近年は、特産品や独自のメニュー開発に取り組まれています。

 白神山地頼りから脱却しなければ、ということで、近年は、新たな特産品や独自の飲食メニューの開発に力を入れてきました。2012年の冬から始まった「目屋豆腐」の復活プロジェクトは、農家に大豆の栽培をお願いすることから始まり、作り方を知っている砂子瀬地区の人を訪ね指導していただき、13年2月にお披露目できるまでにこぎ着けました。多くのお客様に知っていただこうとPRにも努めましたが、テレビや新聞に取り上げていただいたこともあり、こちらの予想を何倍も上回るペースで売り上げが伸び、3月いっぱいで原料の大豆がなくなってしまいました。昔ながらの味を知っている人も、初めての人も含めて、村民自身がリピーターとなってくれましたし、津軽地方の各所からわざわざ買いに来てくださる方もいらっしゃいました。今年は、少しでも長い期間食べていただけるよう、販売日を限定しながら、ゴールデンウィークごろまでは販売できる原料を確保しています。目屋豆腐というのは、木綿豆腐で硬めで味が濃いということまでは共通していますが、それ以上は各家庭の味があり、いろいろな意見があります。ですから、現在は、「白神公社の目屋豆腐」を確立して提供していこうという姿勢でやっています。

 「白神雪ん子りんご」は、もともと、雹害に遭ったリンゴに少しでも付加価値を付ける目的で村が始めたものです。さまざまな意見交換や試行錯誤を経て、現在は、一級品のリンゴだけを雪室に貯蔵しています。また、村と共同で山菜の販売業務も行っていますが、取引業者の拡大や、少しでも高く買い取ってくれる業者を探して、採集してくれる地元の人に多く還元できるように努めています。

 公社ですから、ただうちが儲けて、うちだけが元気になっても意味がないわけです。地元の人の雇用の場となるとともに、地元の活性化につながる事業を展開していかなければなりません。私たちの役割は、地元の人から、地元のものを仕入れ、それで作った商品で村外から来た人たちに喜んでもらうことです。地産地消を推進し、食育のため学校給食にも特産品を取り入れていくということで村と公社の方針は合致していますので、今後もこの姿勢で運営を続けていきたいと思います。

----「Beechにしめや」や「白神館」では独自の個性的なメニューも提供されています。

 同じく、地元のものを使って、地元にちなんだメニューを開発してもらうことを料理長にお願いしています。「乳穂ヶ滝そば」はナガイモのとろろと白髪ネギを乳穂ヶ滝の結氷に見立てたもので冬期限定のメニューです。本物の滝が結氷した年は、その期間、割引などの特典をつけるなどの企画も検討しています。「津軽ダムカレー」はダム工事事務所の発案で開発したものですが、今年から、冬期限定のホワイトカレーも登場しました。目屋豆腐も雪ん子りんごも、乳穂ヶ滝そば、ダムカレーの冬バージョンも、どうしても客足の減る冬期対策として開発に力を入れてきました。いずれも、役場や各事業所の皆様の協力で誕生させることができたもので、皆さんに助けられながら運営を続けていると感じています。

■山とともに生きる村の文化を伝える

----さまざまな取り組みが進められていますが、今後、新たに展開するプラン、商品開発の予定などあれば教えてください。

 現在、目屋豆腐の原料として、農家に大豆の生産をお願いしていますが、同じく大豆から湯葉をつくり、これをそばにのせたメニューを試作中です。一度、イベントで提供したところ好評でしたので、修正を加えながら商品化を目指していきたいと思っています。西目屋には白神そばがありますので、いっしょに特産品として知名度を上げていければと思います。

 また、先ほど冬期の誘客対策ということを申し上げましたが、その意味で、食事と村内の温泉をセットにしたプランも展開していきたいと考えています。白神公社では、ブナの里白神館と、グリーンパークもりのいずみに天然温泉がありますが、このほか、白沢地区の大白温泉の管理も担当しています。各温泉ごとに泉質が異なり、白神館はグリーンがかったお湯、もりのいずみは無色透明、大白温泉は茶褐色のお湯です。これらを巡って好みの温泉をみつけてもらう湯巡りに、村自慢の独自メニューをセットにしたプランの商品化を検討しています。実は、Beechにしめやの味噌ラーメンがおいしいと評判なのですが、昨年、温泉と味噌ラーメンのセットプランを販売したところ村外の人を中心にたいへん好評でした。冬期観光のメニューの一つとしてこうしたプランを強化していければと思います。

----最後に、今後の抱負や西目屋村の魅力について改めてお話しください。

 最大の資源である白神山地については、単に来て歩いてもらうだけでなく、西目屋の人たちが、どのように山と関わって生きてきたか、そうした村の文化までを知っていただけるようなガイドツアーの体制をつくっていきたいと考えています。

 私は、入り込みのピークの頃から、観光客が山にどんどん入ることについても、また山菜など山の恵みを制限なく採ることについても、公社の売り上げ向上や経営との間でジレンマのようなものを感じてきました。山に人が制限なく入って自然が汚されるのはもちろん問題ですし、かといって全く人が入らない山もまた荒れていきます。この自然と人が共存共栄できる調和のポイントをなんとかみつけることが大事なのだと思います。その意味で、歴史的に村が白神山地とどのように関わってきたのか、私たち自身も学ぶことが大切です。現在、村からの委託で、「白神学」という冊子を発行していますが、ここに書かれているマタギの文化、精神には学ぶべきことがたくさんあると感じています。これを伝えていくのも、私たち公社の役目だと思っています。

 見渡す限り広大で美しい自然に囲まれ、果物、山菜、野菜、全てが本当においしい。それらをふんだんに使った料理も楽しめる。そして、村を元気にしようとがんばっている人たちがたくさんいる。西目屋村はそういうところです。もともとは縁もなく親戚も一人もいない私を仲間に入れてくれて、私は、何の不自由もなくこの村で暮らさせてもらっています。ですから、私にできることで村に貢献していきたい、そう思いますし、ぜひ多くの人にこの村を訪れてほしいと思います。自然を満喫し温泉でゆっくりして、Beechにしめやでお昼を食べて、晩ご飯の食材を買って帰っていただく。そういう流れができれば、最高にうれしいですね。