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「青森ヒバのある生活」
 を全国に提案

■青森ヒバの全てを商品に
写真
村口 要太郎氏
有限会社 村口産業
代表取締役
1947年、風間浦村易国間生まれ。光星学院高校卒業後、村口産業養豚部に勤務。92年、養豚を廃業。94年、代表取締役となる。97年、風間浦中学校非常勤講師(技術家庭)に就任。アメリカ・シカゴ建築デザイン博物館「グッドデザイン賞2008」(「青森ヒバ御箸」。日本航空の国際線ファーストクラスで採用)など受賞多数。

----御社の事業内容と設立の経緯について教えてください。

 もともと父が製材業を営み、下駄の製作なども行っていたのですが、私はその会社の養豚部門を担当していました。製材で出る青森ヒバの「おが粉」を豚舎のクッションとして敷いたところ、これを親豚がよく食べるのです。それで、青森ヒバを食べた豚は、特に薬剤を投与しなくても排泄物などの臭いがなくなる。その時、青森ヒバの効能を実感しました。

 その後、養豚部門は廃止して私が父の跡を継ぎ、一般建築材の製材と木工品の販売にも取り組みました。初めは、まな板などを作っていたのですが、製材工場から出る、建築には向かない端材や枝など、商品にならない材をできるだけ廃棄せずに有効活用できないかと考え、平成4年に「手づくり木工館 わいどの木」をオープンしました。「木の温もりと遊び心」をキーワードに、さまざまな木工品を製作していますが、商品として形あるものにすると、必ず、追随するところが出てきて競争になります。単価の上げ下げになって、結局苦しくなる。だからうちは、形にする前の素材をできるだけそのまま使う商品に力を入れることにしたのです。形がなければ真似もされない。例えば、おが粉はマットにする、かんなくずはシートにして、その使い途を考える。無駄なく使えば歩留まりも上がる。加工の工程が少なければコストもかからないので低価格で販売できます。また、たとえば、和紙にヒバ材を埋め込んだ壁材など、他に真似のできない技術をもった企業や職人さんとコラボした商品開発も進めています。

----中央の大手企業からの引き合いもあるそうですが、村口さんは、バイヤーの要望を聞くだけでなく、主体的に商品を開発し提案もされているそうですね。

 こんな田舎にいて、中央の大きな企業の注文を受けるというのは確かにうれしいですが、ただ注文された商品を納めるだけでは、下北の素材のよさが活かされない。声をかけられたと喜んでいるのでなく、こっちから向こうを動かすほうがおもしろい。ですからいろいろ提案はしています。

 商品開発は、ほとんど私とスタッフで行いますが、使ってもらった人との会話が、次の開発にたいへん役立っています。「どんな使い方をして、どんな効果がありましたか」ということを聞いたり、これだったら「こんなところにも使えるのでは」と思いがけないアイデアをいただくこともあります。自然素材の効能を生かせる使い方を探して、使う人に喜ばれる製品を考えるのは楽しいです。楽しいから、次のアイデアも湧いてきます。ですからメールで感想をいただいたら、きちんとお返事する。友達や親戚のような付き合いを築くことで、信頼もされ、次の商品開発のヒントももらう。田舎だからこそできる商売じゃないですかね。

 昨年、「ヒバ爆弾」という商品が関西のテレビ番組で取り上げられて、そのあとものすごい数の注文が来ました。おが粉を円筒状に固めたもので、押し入れや下駄箱などに入れておくと、臭いや湿気がとれる。私は製品の効能には自信をもっていますから、あとはネーミングが重要だと思い、あえて、インパクトのあるものにしました。リラックス効果のあるものだからと、癒し系のやさしい名前ばかりだと多くの商品に埋もれてしまいます。はじめは反対もあったのですが、結果的に良かったと思っています。これが売れて、全国を相手にやっていけるという自信になりました。現在も一般建築材と木工の両方を販売していますが、青森ヒバのよさを全国の多くの人に知ってもらいたいのでインターネットでの販売に力を入れていて、これが売り上げのベースになっています。 

■発想力を伸ばす木工体験

----青森ヒバは抗菌作用など機能性素材として注目されています。改めてその効能について教えてください。

 ヒバの効能については、抗菌・抗カビ、除湿など、自分たちで実験をして、ホームページに掲載しています。簡単にヒバの効能を実感していただけるのは冷蔵庫ですね。棚板をヒバの板に換えるだけで全く臭いが無くなります。香りが良くてリラックス効果があり、抗菌・抗カビ作用があって消臭もできる。虫も寄せ付けない。こんな素晴らしい素材は世界中に他にないと自負しています。また保湿効果もあるので、ヒバ精油入りのクリームは、アトピーのお子さんにとても効果があったとの声もいただいています。その方は、お子さんのために家をリフォームして、お風呂もヒバ材のものにされたのですが、やはりとても効果があったとおっしゃっています。

----木のぬくもりは、子どもたちの人格形成にも大きな影響を与えると言われています。

 多くの教育施設で青森ヒバが活用されています。東京都内の「はぁもにぃ保育園」さんとはおつきあいがありますが、ヒバの椅子・テーブル・壁材・下駄箱など、あえて塗装しないことで部屋はヒバの香りに満ち、子どもたちはたいへんリラックスし、昼寝の時間もぐっすり眠れるそうです。地元でも、子どもたちの木工体験を実施してきましたが、木に触れてものづくりに取り組むうちに、子どもたちの顔が生き生きしてくるのを感じます。

 一方、学校で講師として話をする機会もありますが、今、勉強道具でも、遊び道具でも、「自分で作ったものをもってきている人はいますか」と聞いても、まずいません。この環境にいながら、山で、海で、自分たちで遊びをつくり出すことができない。これは先生も同じで、例えば、「1と1で2」ということを教えるのに、全部、既成品のマグネットを使っています。そのへんに落ちている石ころだって、木切れだって、磁石を付ければ教材になる。たった5~6人のクラスなのですから、そのほうがずっとあたたかくて楽しい授業になると思うのですが。「わいどの木」に来て授業をしてもいい。教材になるものはいくらでもあるのですから。でも、規則でそうはいかないようです。

 そんなことへの反発もあって、うちでは、完成形の決まっていないブロックというものを作りました。どれを組み合わせて、どんな形をつくるかは自由。見ていると低学年の子どものほうが、自由に発想しています。こうした自由な感性や発想力を伸ばすような教育ができないものかと思いますね。今の人たちは、皆、買ったもの、与えられたものの中で生きているような気がします。自分で考えて、自分で作ったものなら、もっとものを大切にする心も育つのではないでしょうか。そうした教育の場としても、「わいどの木」を活用してほしいと思います。

----最後に、青森県の貴重な資源である青森ヒバの今後、その活用へのご意見などお聞かせください。

 下北の青森ヒバは全部国有林で、森林管理署から計画的に供給されています。木材として使えるようになるまで200年から300年かかりますが、樹齢200年を越えたような大木は、ほとんど中央の大手に買われてしまう。それで、神社仏閣の建材として使われることが多い。それは、ヒバの美しさや効能を知っているからで、いいことですが、一方で、一般住宅用の建材として使われている青森ヒバは、ごくわずかです。「あのお寺で使われた」「あの神社で使われている」では、高価で一般の人には手の届かないものというイメージを強くするだけ。もっと身近な使い方をPRすればいいと思います。青森県の木であるわけですから、地元でももっとたくさん使うべきですし、長期的な視野で植林も進めるべきでしょう。

 神社仏閣に使うのは、幹が太く、まっすぐに伸びた一級のもの。同じ200年を経た木でも、それ以外の曲がったようなものは使われない。うちでは区別なく使っています。加工しにくい部分は、チップにするなど別のかたちにすればいい。材だけでなく、今まで誰も目もくれなかったような、おが粉、かんなくずも消臭効果は変わらない。それをどう活かすかを考えて商品開発を続けていきます。木材に関わるプロほど気づかないですが、青森を離れれば、青森ヒバならおが粉だってものすごい貴重品なのです。全部使ってあげれば、曲がったヒバもきっと喜ぶでしょう。