31
新駅開業効果を地元企業、
地域経済の発展につなげる

■町内事業者への波及効果に期待
写真
本郷 鉄男氏
今別町商工会
会長
1948年、今別町生まれ。日本大学卒業後、大阪の農機具メーカーで研修の後、家業の(有)本郷農機を継ぐ。社長業を務めながら、米、ぶどうなどの農業も営む。現在、同社代表取締役。2009年より今別町商工会会長。

----2015年度、今別町に北海道新幹線の駅が開業します。観光、産業の振興などに期待が集まりますが、商工会長としてどのように期待されていますか。

 今別町では、人口減少や少子高齢化が著しく、町の経済基盤自体が疲弊している中で、北海道新幹線「奥津軽いまべつ駅」の開業は地域経済活性化の大きなチャンスであると捉えています。現在、新駅舎を中心とした町内の環境整備や、津軽半島全体と連携した広域観光による交流人口の拡大など、活性化に向けた施策が話し合われています。その中で、今別町内においては、域内観光の活性化に向け、景勝地と町中心部での街歩き観光も結びつけ、町内を巡ってもらえるような観光ルートをつくることが重要と考えています。この地域ならでは自然や文化をPRすることで観光振興を図り、関連事業者の維持拡大につなげていきたいと思っています。

 町内の観光資源の代表は、やはり高野崎です。津軽半島と下北半島、北海道の渡島半島と、3半島を一望でき、夕景も見事ですし、夏場は、海一面にイカ釣り船の漁り火が灯ります。全国に誇れる景勝地です。同じく全国に誇る観光資源として、伝統行事の荒馬があります。今別荒馬と大川平荒馬がありますが、それぞれ長い伝統をもち、踊りも囃子も異なります。以前から、県外から多くの人が参加しており、今年も全国から150人ほどが訪れました。「大川平荒馬」には大分県アジア太平洋大学や名古屋大学、立命館大学の学生さんなど50人ほど、「今別荒馬」には東京の和光小学校の児童父兄や他大学の学生さんを中心に約100人ほどの皆さんが参加し、「いまべつ荒馬まつり」を盛り上げてくれています。また、各荒馬保存会において、公共施設に寝具を用意して宿泊場所を提供するほか、個人でも、長年の交流で親しくなった人を自宅に泊めている方々もいらっしゃり、宿泊施設が足りなくてご迷惑をかけている状況です。この荒馬を通した交流も、新幹線の開業によって、よりしやすくなりますので、一層活発になることを期待しています。

 一方、産業振興面では、地域の資源を活かした産業づくりの必要性を感じています。鮮魚、もずく、ウニ、エゴノリなどの海産物に代表される自然豊かな今別ならではの素材を活用した特産品開発など、関連事業者の活動が活発化することを期待しています。商工会としては、補助金を活用した地域特産品開発、ブラッシュアップのための事業者への支援を継続的に行っています。また、開発した特産品については、ミニイベントで紹介するなどPRにも力を入れ、ブランド化につなげていきたいと思います。

 現在、開発を進めているものとして、「うばたま」があります。昔から作られているお菓子で、この辺では「はなつかみ」ともいいますが、薄皮の餅の中に餡が入ったものです。三厩の菓子店で販売していますが、今別では、この皮に今別特産の「一球入魂かぼちゃ」や「寒〆めほうれんそう」を乾燥した粉末を練り込んでカラフルなセットとして売り出すことを構想しています。昔から、お祝い事や行事の際にふるまうもので、現在はその都度、加工グループが受注生産しています。これを商品化し、地場産品等販売所「なもわーも」などで常時販売できるようにしたいと考えています。

 また、今別牛を特産品に育てていこうという動きも出てきました。まずは、町内で常時食べられるまで生産を増やし、特産品として安定供給できるようになれば、ふるさと納税のお返しの品に使うなど域外にもアピールすることで、ブランド力を高めていけるのではないでしょうか。

----今別町では、新幹線開業対策としてアクションプランを策定しています。町商工会としての新幹線開業に向けた取り組みを具体的に紹介してください。

 現在、地域事業者や町民の開業意識高揚のためのポスターやのぼり、会員の商用車や公用車などに貼る開業マグネットシールの制作、商工会独自の開業PR看板の作成などに取り組んでいます。看板は、外ケ浜から今別に入る峠、新駅舎前、青函トンネル入口広場の3カ所に設置する予定となっています。

 また、地場産品PRのためのミニイベントも開催しています。6月に実施した「津軽海峡今別産ウニまつり」は、商工会と漁協の共催で、今年初めて開催したものです。予想以上に多くの人に参加していただき、50人分用意したウニ丼が完売して追加する盛況ぶりでした。こうしたミニイベントは、地場産品のPR効果だけでなく、開業の機運盛り上げにもつながるものですから、今後も「なもわーも」や漁協などと連携し、継続して開催していくこととしています。このほか、今別産のもずくまつり、春の山菜まつりなども計画しており、開催時期などを検討しているところです。今別の3大まつりである「海峡いまべつ春まつり」「荒馬まつり」「いまべつ秋まつり」の間の時期を埋めるようにミニイベントを仕掛け、開業に向けた意識高揚につなげていきたいと考えています。

■意識高揚の牽引役を担う

----観光客の受け入れ体制づくりという面では、どのような取り組みをされていますか。

 6月に、観光関連事業者、役場職員、観光応援隊の人などを対象に、おもてなし講習会を実施しました。当初30人ぐらいを予定していましたが、駅名の正式決定の直後だったこともあり、2倍近くの人が参加してくれました。開業への関心が高まっているのかなと感じています。この講習会は開業まで継続して実施していくこととしています。

 さらに、新幹線を利用して訪れる観光客に、不便を感じず、安心して観光していただくために重要なのが二次交通の整備です。先頃、商工会で申請していた国の「地域内資金循環等新事業開発検討事業」が採択され、「奥津軽いまべつ駅」を起点とする二次交通に関する調査、事業化の検討が実施できることになりました。現在、タクシーやレンタル電動自転車の配備などについて検討を進めているところです。二次交通の整備については、これまでもさまざま論議されてきましたが、今回調査に着手できることとなり、その方向性が見いだせるものと期待しています。商工会としては、この点でも、地域経済活性化に向け、地元事業者が参入できるようなビジネスプランづくりに努めていきたいと考えています。

----最後に、新幹線開業対策について、今後の課題をお話ください。

 開業が近づき、各団体の活動も出てきましたので、商工会もうかうかしていられないと気を引き締めていますが、一方で、一般の町民の間では、新幹線開業に対する盛り上がりが今ひとつ足りないと感じています。開業効果をどう活かしていくか、PRしながら、意識高揚を図っていくことが必要と考えています。率直なところ、私自身、開業効果がどれほどのものになるのか不安もあります。開業時には町の人口が3000人を割り込むと予想されています。しかし、地域経済を維持していくためには前に進むしかありません。商工会が果たすべき役割は大きいと、商工会役員などにいつも話していますが、会員だけでなく、やはり町一丸となって盛り上げていかなければならないと思っています。アクションプランには、開業後の事業も含まれていますので、商工会が独自にできること、すべきことは何か、今後も検討していきます。そして、いろいろなイベントを仕掛けながら、盛り上がりを一過性で終わらせることなく継続させていくことが、商工会の務めであると考えています。

 また、駅は当町に設置されますが、津軽半島の玄関としての機能も活かす必要があり、その面では、半島全体の連携が最も重要と考えています。先般設立された「北海道新幹線奥津軽いまべつ駅開業対策連絡協議会」を中心として、西北地域と情報を共有しながら、民間レベルでも連携を積極的に推進していきたいと考えています。