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要望をきめ細かく聞き取り
実現を積み重ねる

■商店街の賑わいを取り戻すために
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宮本 純一氏
つがる市商工会
会長
1963年、木造町(現つがる市)生まれ。県立木造高校卒業。82年、有限会社光陽印刷入社。2005年より同社代表取締役。02年、木造町商工会青年部長に就任。08年、つがる市商工会会長就任。現在、つがる市都市計画審議会会長、つがる市フィルムコミッション副会長、つがる市ブランド推進会議監事等を務める。

----朝市の開催をはじめ、商店街活性化に向けた活動を活発に展開されています。その成果や課題、その他の取り組みなどについて教えて下さい。

 朝市は、もともとは中心市街地活性化法の適用に向けた基本計画の素案づくりを進める中で出てきたアイデアです。結果的に基本計画の提出は見送られましたが、朝市については、商店街になんとか人を呼び戻したいとの思いで、平成20(2008)年にむつ小川原地域・産業振興財団の助成を受けてスタートし、21年度からは市の支援事業として実施しています。毎年6月から10月に月2回、商品券等が当たるスタンプラリーや、商工会女性部による名産品のふるまいなども行っています。

 またこれと並行して、毎年7月に夜店まつりも開催しています。商店街の各店が夜も店を開けて、露天商が出たり、商工会はビアガーデンを開いたりと賑やかな行事で、昭和40年代から続いてきたものですが、売上げの落ち込みなどにより平成18年で中断していました。私が商工会会長になって、なんとか一晩でも復活させたいと思い、平成22年から毎年開催しています。さまざまなストリートパフォーマーやよさこいダンスチームなどにも参加してもらいイベント中心に実施してきましたが、今年は2日間にして、原点である商店街の夜間営業のほうに力を入れて開催します。朝市も夜店まつりも、遠のいたお客さんの足を商店街に向けるという目的で行っているもので、一定の効果はあがっていると考えています。

----朝市は、高齢者や障害者の生活支援を目指す「福祉の街づくり」の顔も持っているそうですね。

 朝市は「街の駅あるびょん」を中心に開催していますが、ここはもともと「福祉でまちづくり」をコンセプトとした中心市街地活性化施設で、バリアフリー化のほか、高齢者や障害者の方が買い物しやすいよう、休憩スペースを広くとったり、コインロッカーも充実していますし、商品の無料配送も行っています。また買い物をしてもしなくても、お年寄りなどが気軽に集える交流の場の役割も果たしています。賑わいを取り戻すためには、そういう場所が必要だとの商店街の若い商店主さんからの声で整備されたもので、彼らが中心となって設立されたNPO法人「元気おたすけ隊」が運営母体となっています。ここを核として、いわゆる買い物弱者といわれている方々にもどんどん商店街に足を運んでいただきたいと思っています。

 人口が減ってマーケットが縮小している中、郊外店の進出などもあり、なかなか厳しい状況ではありますが、私がいろいろな会合などでよく話しているのは、郊外型の大手スーパーは、出店するときも無慈悲に進出してきますが、いざ採算が合わないと判断すれば、撤退するときも決断は早いということです。もしそうなったとき、地元の商店街がなくなっていたら、買い物する場所がなくなってしまいます。ですから、なんとかして商店街を残していくために商工会として努力していますし、行政からも予算面などでいろいろ協力をいただいています。要望に真摯に対応してくださる市長にはたいへん感謝しています。

■とにかく多くの意見を汲み上げる

----県内最年少で商工会の会長になられました。若さを活かしたフットワークで「移動商工会」を開いているようですね。

 つがる市には、合併前、5つの商工会があったわけですが、合併後、総会、理事会などで役員の方とお会いすることはあっても、各地区の一般の会員の皆さんの声を聞く機会は少なかったのです。そこで、できるだけ商工会のほうから各地区に足を運んで、会員の声を聞くよう「移動商工会」を始めました。

 私自身、出かけてみて、学ぶことも多いです。例えば、郊外型のショッピングセンターについても、木造町単独の商工会の時代は、単に競合相手という意識で見ていましたが、今、柏地区の方に聞いてみると、重要な買い物の場であり、また貴重な雇用の場でもあり、皆さん、なんとか共存していきたいと考えています。これは発見でした。また、中心商店街ということで、どうしても木造地区の事業が多くなりますが、私は木造生まれですので、他地区からは「自分のところばかり一生懸命で」というご批判を受けると思っていました。ところが実際は、「やっぱりつがる市の中心は木造なんだから、木造の商店街が元気にならないと、うちのほうも活性化していかない」という声をいただきます。これには励まされましたし、とても動きやすくなりました。やはり直接お話することは大事です。「移動商工会」では、前段はこちらからの説明や質疑応答ですが、後段ではお酒を飲みながら話すようにしています。飲まないとなかなか本音を言えないという方もいらっしゃいますから。

 「移動商工会」に限らず、職員には、通常業務のあらゆる場面で、会員の方に「何か困っていることはないですか」と声がけするよう指導しています。みんながみんな、自分から要望を言い出せる人ばかりではありません。言えずにいる方も多いと思いますので、とにかくこちらからの声がけが大事だと思っています。

 一方で、商工会から会員の方へ要望していることもあります。例えば、木造地区のアーケード(コモヒ)について、現在、なくしたほうがいい、直して存続したほうがいいという議論があります。商工会としては、「○○商店街の意見はこうです」「□□商店街の意見はこうです」という話をもってこられても対応のしようがありません。木造地区で商店をしている人たちの総意としての意見を持ってきてほしい、そういう意見を集約する場を設けてほしい、ということをいつも申し上げています。そうした合意の上で行政に予算を付けてほしいということになれば、私たちは必要に応じて、市長にでも、県にでも、東北経済産業省にでも足を運びますから、という話をしています。

 ただ、こうした問題については、後継者がいる店と自分の代で終わりと思っている店では、どうしても温度差はあります。私は高校時代、ラグビーをやっていたのですが、スクラムから出てきたボールをハーフが拾い、バックスへつなぐ、これがラグビーの基本です。商売も同じで、自分の役割は、親が守ってきた店を、次の世代へとつなぐハーフの仕事だと思っています。私自身、そういう気持ちで商売していますが、中にはつなぐべきバックス(後継者)がいない、という店も多いわけです。そういう立場の異なる人たちがひとつのテーブルについても、なかなか意見はまとまりません。そこをどうしていくかが、これからの大きな課題です。まだ答えは見つかりませんが、今はとにかくできるだけ、意見、要望を汲み上げ、実現していくことに努めています。

■商工会の役割を広くとらえる

----「つがる市フィルムコミッション」副会長でもあります。どのような効果を期待されていますか。

 県内各地のフィルムコミッション設立を手掛けてきた川嶋大史さんから、「自分のふるさとであるつがる市にもフィルムコミッションをつくりたいので、ついては事務局を商工会で担当できないか」というお話をいただいたのが始まりです。私としては願ってもないお話でしたので、事務局として市長はじめ担当課への予算付けのお願いなどを行いました。

 当時、新青森駅開業を控え、新幹線効果をなんとかつがる市にももたらしたいという時期でしたので、設立後ただちに、馬市まつりや田園風景、ネブタなど、つがる市内の風物、名所が随所に盛り込まれた短編映画「けの汁」をつがる市フィルムコミッション自ら制作することとなりました。そしてこの短編が関係者の目にふれたことから、映画「明日に架ける愛」のロケ協力へとつながっていきました。

 フィルムコミッションの目的は、もちろん、映画などを観てつがる市に興味をもった方に訪れてもらうことによる経済効果ということが第一ですが、それ以外にも、自分たちのふるさとの街並が映像になる、まして隅のほうに自分たちが写っていたりしたら、それはうれしい感動で、まちへの誇りにもつながっていくのではないかと思っています。

 つがる市フィルムコミッション設立は、私が会長になって最初の大きな仕事でしたが、私自身もやりたくて取り組んだものです。さまざまな効果をもたらしてくれる組織ですから、設立してよかったなと思っていますが、現在は、私自身が「あれをやりたい、これをやりたい」というのではなく、皆さんがやりたいことを汲み上げて、商工会という組織を使って一つひとつ実現していく、という考え方がいいのかなと思っています。商工会の役割の根幹は、小規模事業者の経営改善にあるわけですが、そこには、まちなかを活性化する、地域を活性化するということが大きく関わるわけですから、それにつながるものであれば、何をやっても、何にお手伝いしてもいいと考えています。