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生産者、加工業者一体で
ホタテ産業のさらなる発展を

■万全の衛生管理体制
写真
横浜 眞六氏
マルイチ横浜
代表取締役社長
1953年、野辺地町生まれ。県立野辺地高校卒業。75年より先代が創業した横浜商店(現・マルイチ横浜)に勤務。91年、同社代表取締役社長に就任。

----ホタテの加工販売で県内トップクラスの業績を誇る御社の営業内容について、あらためてご説明ください。

 当社では、冷凍、チルド、惣菜用加工品などのホタテ製品を製造し、これらを国内のスーパーなど量販店の水産・惣菜部門、ファミレスや回転寿司などの外食産業、生協など共同購入組合、コンビニエンスストアなど、さらに海外へも販売しています。このほか一般消費者向けに、スープなどの二次加工品、乾物などの完成品の製造販売も行っています。

 原料のホタテは、現在、7~8割が陸奥湾産で、あとは北海道産です。1日で10トン積みのトラック10台分ほどを使っていますので、年間の使用量は、だいたい15000~16000トンになります。

 またクボタフーズという関連会社で、煮魚や焼き魚など、ホタテ以外の加工品の製造販売も行っています。

----量販店やコンビニエンスストアとの取り引きでは、衛生管理面でかなり厳しい要求があると思います。鮮度や安全性を保つためのチェック体制や設備、加工技術について、簡単にご説明ください。

 原料ホタテの加工場までの搬送段階では、ホタテの上下を氷で挟む形で積載するなど、鮮度を保つための万全の体制をとっています。加工段階では、当社工場は、1997(平成9)年にHACCP認定工場の指定を受けており、HACCPシステムにのっとって、毎日、商品ごとに品質衛生管理部検査担当による自主検査を行っています。また、自主検査の精度照合をするため、月1回、公的検査機関に検査依頼もしています。

 設備としては、98年に冷却殺菌海水設備を導入し、陸奥湾の海水を使いながら安全に加工できる体制を整えました。ホタテの加工では、海水を使用することでホタテに含まれているアミノ酸の流出を防ぎ、また余分な水分を吸収させず、ホタテ本来の旨味を保つことができます。しかし生の海水では、特に夏場は細菌の発生など安全性が懸念されます。そこで当社では、4重の工程で海水の安全性を確保する方法をとっています。まずは、海水をろ過し、紫外線殺菌、次亜塩素酸による殺菌を行い、さらに冷却することで菌が発生しない状態を保ちます。4つの関門で多重にリスクを取り除いているわけです。またこの冷却殺菌海水を使うことで、衛生面だけでなく、ホタテの味自体、まろやかになるという効果もあります。この設備は、小さいものは他にもありましたが、1000トン単位で殺菌できる規模のものを導入したのは当社が全国で最初でした。

 また冷凍品については、ホタテ本来の風味を損なわず、かつ安全な商品を提供するため、ノーグレーズ加工という方法をとっています。一般的なグレーズ加工というのは、表面に氷の薄膜を施すことで冷凍乾燥や品質劣化を防ぐ加工法ですが、この方法では解凍時に水分が出て、せっかく急速凍結で閉じ込めた旨味が流れ出てしまいます。グレーズ加工をしないと劣化しやすいわけですが、当社では、出荷時に酸素透過率の少ない資材を使用し、また窒素ガスを充填することで冷凍乾燥や品質劣化を防いでいます。 

 このような設備、技術、チェックシステムがありますので、衛生管理面で取引先の要求をクリアすることは、さほど難しくありません。今や、安心安全は当たり前、基本中の基本です。重要なのは、他社よりおいしいものを作ることです。同じものを作っていたのでは、価格競争になってしまいます。

 また、量販店では、売りやすい価格帯というものがあります。こういう製品は、これくらいの小売価格でないと売れないというラインです。私たちはそこから逆算してきて、製造コストを抑える努力をしています。原価を積み上げていって売値を決めるというやり方では、量販店と取引することはできません。

 さらに相手にとって使いやすい製品であることも重要です。現在、コンビニなどの惣菜向けに、安全でおいしいまま日持ちさせられる加工技術の開発に取り組んでいます。当社の商品ラインナップは50品目以上にのぼりますが、常に取引先のニーズ、時代に合わせた商品を作り出していくことが必要だと考えています。

----一方、海外も大きな販路となっていますが、売上げに占める輸出の割合はどれくらいでしょうか。

 これは、為替の相場によって大きく変動します。かつては国内向けと海外向けが半々という時代もありましたが、昨年は円高で大変厳しい状況でした。現在、円安となり輸出に力を入れていますが、いずれにしても、国内向け、海外向け、どちらかにかたよりすぎて、片方がおろそかになるといったことがないよう、バランスを維持していくことが重要と考えています。

■大量へい死から学んだこと

----2010(平成22)年の高水温による陸奥湾ホタテの大量死の影響は、今もあるのでしょうか。

 一番大きい影響は、消費者に「高い」というイメージを持たれてしまったことです。2010年に大量へい死が発生し、2011年は実際に原料が足りなくて大変だったわけですが、この時、原料高になったために、スーパーなどで一時的にホタテ製品の売り場が縮小されました。これで消費者にホタテは高くなったというイメージが植え付けられてしまいました。2012年は、原料不足は回復していたのですが、いったん離れてしまった消費者を取り戻すのが大変でした。

----その間も、雇用を維持してこられました。

 回復したときのことを考えると簡単に人材を手放すことはできません。工場ですから、ただ人がいればいいというわけではなく、社員は皆、技術を教えて育ててきた技術者です。この人たちを手放したら、回復したときにまた集めるのは大変です。それに、社員には皆、家族があります。この地域では、他の働き口を探すのも難しい。かなり厳しい思いもしてもらいましたが、いつかは良くなるからみんなでがんばろうという感じで、なんとか乗り切りました。

 当社は、陸奥湾のホタテ養殖が確立して、生産量が安定するのとともに成長してきた会社です。私は40数年、ホタテに関わってきました。何度か多少の原料不足というのは経験してきましたが、さすがに7割死なれたら無理です。どうにもなりません。この教訓が、クボタフーズを起こして、ホタテ以外の加工にも取り組むきっかけとなりました。万が一、2010年のようなことが再び起きても、なんとかできるように、ホタテだけに頼った経営ではいけないという思いがありました。

----最後に、青森のホタテ産業全体について、提言などありましたらお聞かせください。

 2010年の経験を今後に活かしていかなければならないと思います。年々、海水温の変動は極端になってきていますので、いつまた大量へい死という事態が起こるかもしれません。ですから、公的機関を含めて、水温の変化に対応できる新しい養殖技術を研究し、確立することは緊急の課題だと感じています。

 ホタテは、青森県の重要な特産品です。高級感があり、どんな料理にも使える優れた食材で、マーケットは世界中です。魚と違って骨がないので加工もしやすく、付加価値も付けられます。食べ方のバリエーションも幅広い。当社製品は、北海道から沖縄まで、また海外にも流通していますが、本当に多くの消費者に喜ばれています。この優れた食材を、適正な価格で全国や世界に届けていくために、まずは安定的に生産できる体制がなければならないと思います。

 私たち加工業者は、小売店や消費者に喜ばれる商品を作ります。より喜ばれる製品を作るために新規事業を展開したり、設備を充実させるにも、まずは原料の安定確保が前提となるわけです。私たちがよい製品を作り、ホタテの消費量が増えれば、生産者の皆さんもまた安心してホタテをつくることができる。お互いに努力して、青森のホタテ産業をさらに発展させていきたいと考えています。