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四季ごとの
感動のある街へ

■「弘前ブランド」の確立に力
写真
永澤 弘夫氏
弘前商工会議所
会頭
1946年、弘前市生まれ。66年、日本大学文理学部中退、永澤興業創設。75年より有限会社永澤興業代表取締役。86年、株式会社永澤興業代表取締役に就任。88年、同社代表取締役会長に就任。2001年、弘前商工会議所議員に就任。常議員を経て07年より副会頭。10年、会頭に就任。12年より株式会社永澤興業代表取締役。現在、(社)全国道路標識・表示業協議会副会長、同会東北支部相談役、同会青森県協会顧問、弘前地区安全運転管理事業主会会長、東北地方更正保護協会理事などを務める。

----商工会議所会頭として、地場産品を広く国内外にアピールする「弘前ブランド」の確立に取り組まれています。これまでの成果や今後の課題についてお聞かせください。

 弘前商工会議所では、新戸部満男前会頭の時代から「全ての地場産業と伝統的工芸品産業は地域の資源である」との考えで、その振興と販路拡大に特に力を入れてきました。日本商工会議所の「JAPANブランド育成支援事業」などを活用しながら、2005年度からは、「津軽塗」「津軽打ち刃物」「津軽こぎん刺し」「津軽木工」「弘前りんご」など年度ごとに一つの産業を取り上げ、重点的に新商品開発と販路開拓に取り組んできました。展示会、見本市には、とにかく「行けるところはどこへでも行く」という姿勢で積極的に参加していますが、おかげさまで、それぞれの商品が国内外で高い評価を受けるようになってきました。「津軽打ち刃物」などは、フランスで非常に高く評価され、持っていったものがすぐに完売という状況です。新潟の燕三条や大阪の堺のように知られてはいませんが、それらにも劣らないという評価をいただいていますので、国内でのPRにもっと力を入れ、強く売り出していく必要があると思っています。

 また「ブランド化」に当たっては、特に昨今は「知的財産」の管理の重要性が高まっています。現在、こうした知的財産管理のほか、融資、見本市への出展、販路開拓など、商品開発から販売まで、ブランド化に必要な支援の一元的な窓口となる「弘前ブランドセンター」構想を進めています。後継者の育成や人材確保への支援も含め、生産者と、ブランド化に必要な各分野の専門家を結ぶ重要なソフト機能ですので、市の協力を得ながら、ぜひ早期に実現したいと思っています。

■東北新幹線開業の効果と今後

----観光振興の面でも、弘前の魅力を全国に発信する取り組みを進められています。弘前の観光の現状について、特に東北新幹線全線開業がもたらした影響などについてお聞かせください。

 新幹線新青森駅の開業に当たっては、当会議所が提案した「弘前感交劇場」をキーワードとして、開業半年前から月に一回イベントを開催するなど、さまざまな取り組みを行ってきました。「弘前感交劇場」とは、津軽地域全体を、白神山地を舞台背景とする一つの劇場に見立て、観光客も地域住民もともに共感できる「感動」と「交流」の新しい旅のスタイルを展開していこうという、まちづくりのコンセプトで、現在、弘前市をはじめ関係者が一丸となって取り組んでいます。

 この取り組みの成果もあり、開業直後から予想を上回る観光客の入り込み数の増加がみられるなど、新幹線効果は顕著に表れました。東日本大震災後は、風評被害など二次的、三次的な影響が出て開業効果は測定しにくい状況となりましたが、従来の団体旅行から個人やグループの体験型旅行へ、という観光形態の変化に「弘前感交劇場」のコンセプトがマッチしたこともあり、その後、入り込み数は概ね堅調に推移しています。

 こうした状況を経て、当初は「新幹線は青森に来るのであって弘前には来ない」と、効果に懐疑的だった人たちの意識も変わってきたようです。当会議所では、新青森駅開業に当たり全ダイヤでの新青森駅と弘前駅間の接続列車の実現を要望し、これは開業と同時に実現しました。ただ、現在、一部が特急などではなく普通列車との接続となっています。また、新青森駅の奥羽本線ホームの待合い環境の整備や風雪対策などについては、引き続き働きかけを行っていくこととしています。

----弘前市では、北海道新幹線の開業を見据え函館市との交流にも積極的に取り組んでいます。商工会議所がその推進役を担っているようですが。

 2010年度から函館商工会議所との交流を活発化し、両会議所で設置した「津軽海峡観光クラスター会議」を軸とする地域間連携、経済交流の推進を図っているところです。両市が関係するイベントや祭りの開催時期に合わせた旅行商品の企画・販売、関係者の視察研修やイベントへの相互参加など、昨年度だけで15の事業を実施し、ヒト・モノ・カネの交流を進めています。この経済界の動きをきっかけに、函館・弘前両市長が官民あげての交流推進で合意し、現在、各分野での交流が活発化しています。今後も函館・弘前両商工会議所が連携の中核となって、さらに交流を深め、共存共栄を図っていきたいと思います。

■街の魅力を結び通年観光を振興

----観光が堅調に推移する中でも、冬季の集客力の弱さが指摘されています。これに対する現在の取り組みや今後の構想などについてお聞かせください。

 毎年200万人を集める「弘前さくらまつり」や、夏の「弘前ねぷたまつり」と比較すると、ご指摘のような印象をもたれるかも知れません。それだけに、通年観光の確立という観点からも「弘前感交劇場」を推進していかなければならないと思っていますし、その取り組みの中で、すでにいくつかの新しい観光資源が生まれています。

 まずは、春のさくらまつりに続いて、りんごの樹の下で花見を楽しむ「りんごの花見」。一昨年は震災の影響が残る中での開催となりましたが、JR、JTBのツアーにも組み込まれ、会場の弘前市りんご公園は、開園以来最大の賑わいを見せました。また、春、夏、秋、冬それぞれの弘前オリジナルカクテルを市内の飲食店で楽しんでもらう「カクテルの街推進事業」のほか、日本の庶民で初めてコーヒーを飲んだのは、江戸時代に北方警備に当たった弘前藩士や会津藩士であるとの伝承にちなんだ「コーヒーの街推進事業」、市内に数多く残る明治・大正期の洋館と、地方都市としては店舗数の多いフランス料理店とのコラボによる街づくり事業などを展開しています。

 会議所が中心となって進めている事業では、毎年12月に開催している「The津軽三味線」や、市内にアップルパイを販売しているお店が45店もあることから、味比べガイドマップや巨大アップルパイによりPRを展開している「りんごの街のアップルパイ事業」などは、観光客だけでなく、市民からもたいへん好評を得ています。また昨年市内で開催された「りんご博覧会」では、「ひろさきりんごハロウィン事業」を実施しましたが、2日間で約4万人の集客がありました。来年度以降も、グレードアップさせながら継続していきたいと思っています。さらに、県から引き継ぎ今年13回目を迎える「ファッション甲子園」も、開催目的の一つに「ファッションによるまちづくり」を掲げ、市内でのPR展示やファッションショーの開催などで集客効果をあげています。優勝者は、副賞としてフランスの服飾専門学校エスモードパリ校の視察ができるのですが、同校の校長先生から、「地方都市として素晴らしい取り組みをされている。世界に誇っていいイベントだ」との評価をいただいているそうです。弘前、青森県が誇る文化的イベントとして、継続していきたいと思っています。

 また、こうした観光資源を、点から線に、そして面へとつなげていく仕組みづくりが重要と考え、特に「街歩き観光」の振興に力を入れています。「青春のデートコース」ゃ「りんごスイーツちょい食べコース」など、さまざまなテーマごとに弘前の街を巡る30のコースを整備し、ボランティア団体によるガイドも行っています。季節ごとにユニークな街歩きを楽しんでいただくことで、一年を通した観光振興につなげていきたいと考えています。

----最後に、会議所やご本業でのお仕事を通じて得たビジネスの哲学など、業種の枠を超えて生かせるアドバイスがありましたらお聞かせ下さい。

 リーダーに求められる資質として、組織内外の人の話を聞く耳をもっているかどうかが大切だと思っています。言い換えると若い人や、他団体の人がトップに向かって意見を言える環境をつくることが大事。そのさまざまな意見を踏まえて結論を出すのはリーダー。そして結論を出した以上、責任は自分がとる。本業でも、会頭としてもそれを心掛けています。

 当会議所は、市や他団体と連携しながら、今お話ししたようなさまざまな事業を展開していますが、昨年10月、「弘前感交劇場」の取り組みが評価され、「全国商工会議所きらり輝き観光振興大賞」の準大賞にあたる特別賞を受賞することができました。これも、「弘前感交劇場」の推進に地域一体となって取り組んできた成果であると、市はじめ関係団体、そして地域住民の皆さまに深く感謝しております。市も会議所も、また観光コンベンション協会、物産協会、その他の経済団体も、めざすところは、市民の幸せ、市政の発展、中小企業の繁栄ということで一致しているわけですから、これからもさまざまな意見を出し合い、お互いの意見に耳を傾けながら、協力して取り組んでいきたいと思います。

 また、どんな事業も、何カ年かを経たら、どこかの時点でそれを検証することを忘れてはいけないと思います。成果を検証してみて、いいもの、可能性のあるものは継続する。反対に、うまくいっていないものはやめるという判断力。「山を下りる勇気」もまた、リーダーには必要だと思っています。